ホント、不憫で堪らない
そんなこんなで、鎖野郎を捕獲した俺達は、
「それでは、作戦開始です」
何故かソレっぽく組んでいる手の上に顎を乗せているウP主の指揮の下、ハコの眷属補完計画が開始された。
と言っても、俺達がやる事は、ただ待つだけ。
鎖野郎が持っていたスマホから、鎖野郎の仲間にメッセージを送って、仲間が助けに来るのを此処で待つ。
モッチ:
{コイツ雑魚すぎワロタwww 多分、どうせお前らも雑魚いだろうから、纏めてかかってきてどうぞヨロシク♪ 今日の21時に場所は ”https://────” で、ビール飲みながら適当に待ってま~す♡ 因みに、来なくても探し出して狩るつもりなんでヨっロ~♡(パンイチ鎖野郎の写真)}
誰も何も言わないけど、鎖野郎はモッチって名前?らしい。
ってか、メッセージを書いた雫の追い込み具合が怖すぎた。
一緒に送った、鎖野郎の猿轡で正座させられている写真によって、更に恐怖が煽られていて、
「こんなの、マジで怖すぎ……」
「追い込みのプロかよ……」
俺とクリリンは絶句した。
………………
…………
……
…
──1時間前──
時間は少しだけ遡る。
俺達はアキバの地下駐車場から晴海埠頭に移動した。
鎖野郎は凍らせて、暗い夜空を桜田が飛んで運んだ。
俺は一人で地道にゆっくりと電車で晴海埠頭まで行きたかったけど、
『みんなで纏まって行動した方が安全でござる!』
って、言われて、みんなで桜田の魔法のお世話になる事に。
「フぁあッ!! マジ無理!! 高すぎて無理ぃぃぃいいい!!」
案の定、俺は桜田の魔法による空中散歩に恐怖の連続。
フワフワ感で背筋がゾクゾクするのが嫌なのと、
「オマエ!! 絶対に落とすんじゃねぇぞ!!」
桜田を100%信用できないから、俺の恐怖が秒を追う毎に増えていて発狂死しそう。
ってか、飛ぶ前に、
『やってみるでござるよ』
って言われてみ?
やってみた→できた = 成功
ってな具合では安心できないくらいには、俺の中で桜田自身の評価は低いから、マジで恐怖しかないのである。
「凄い!! 葵ちゃん!! 東京タワーが下にあるよ!」
「なかなかの絶景よのぉ」
イカれツートップは余裕たっぷりにごきげんで、楽しそうに空中散歩を堪能していたけど、俺のキン◯マは恐怖で凍えまくっていて、付いている筈なのに付いてない感覚に襲われていた。
………………
…………
……
…
──現在──
そんで、冒頭に戻って現在。
俺以外の元気な奴らは、ウP主の指揮の下、凍った鎖野郎を埠頭の目立つところに放置して、離れたところで鎖野郎の仲間を待つ。
浮遊感恐怖症な俺は、ベンチに倒れて死に体なう。
キ◯タマの感覚は徐々に戻ってきたけど、身体に纏わりつくフワフワ感は未だに健在。
フワフワ怖い……
フワフワ無理……
ってか、俺的には、雫が送ったメッセージを見てホントに助けに来るかどうか、鎖野郎とその仲間の絆とか信頼関係具合に疑問がありまくるけど、
「ジュークボックスで勝利して得られる能力のパワーアップを考えれば、来るのは間違い無いですよ」
と、ウP主が自信満々に豪語していた。
「いや、俺みたいに懐疑的で消極的だったらどうするし?」
って聞いてみたら、
「大丈夫です! 雫ちゃんが送ったあのメッセージで上手くいきます!」
「………………」
の一点張り。
いや、あんなん送られてきたら、助けに行く以前に急いで海外に逃亡するわ……
もう、聞くのも言い争うのも面倒臭いから、取り敢えずと言うか一応と言うか、
「ちょっと、アイツ見てからおしっこ行ってくる」
今の俺にできる事をやっておく。
「あ、僕もトイレ行く」
って事で、先ずはクリリンと一緒に鎖野郎の凍り具合を見に行く。
パンイチで猿轡をされて、いろいろな意味で絶望で表情を歪めている顔が氷の中にハッキリと見えて、
「「………………」」
俺とクリリンは無言になる。
ってか、氷が分厚すぎてまだまだ持つかな?
そして、軽く周りをウロウロした後に、トイレに行ってみんなが集まっている場所に戻った。
それから30分程経ったところで、
「来おったぞ」
『………………』
マジで誰かが来やがった。
数は4人。
ハコの管理者を抜かせば、残ったハコの眷属と同じ人数。
しかも、前情報が正しければ、向こうにはヒーラーがいる筈だ。
まぁ、俺達みたいに能力取得時に間違えてバグってなければだけど。
それに、玉藻も新たな異能を手に入れたらしい。
しかも、アキバのカラオケ内で。
俺達が鎖野郎と戦っている最中、事もあろうに、コイツらは玉藻の異能獲得を片手間で片付け、カラオケを満喫していたらしい。
俗世にドップリなウP主。
ジェネレーションギャップに目を輝かせる玉藻。
何も考えてない酒乱な馬鹿。
こんな奴らがカラオケなんぞに行ってしまえば、ノンアルコールでいられる筈が無い。
そりゃぁ、地下駐車場に来た時も変にテンションが上がっていた訳だ。
そんな馬鹿たちにおびき出された鎖野郎の仲間たち。
ホント、不憫で堪らない。
それに、こちとら、相手の顔も素性も何もかも知らないから、本当にアイツらが異能を持った鎖野郎の仲間かどうかも分からない。
だから、
「行け。 ゾンビ!」
「………………」
雫の絶対命令によって、クリリンが様子見の為にパシられた。
完全に肉壁扱いである……




