スタイルが良くて、紐なエロいパンツを履いている可愛い子とか
店員と一緒に手に巻かれたガムテープを剥がし合い、店員が警察に通報して強盗のお迎えを待つ。
俺的にはさっさと家に帰ってゲームがしたいんだけど、店員に必死にお願いされて、仕方なく一緒に警察を待つ事に。
そんな、少し前までちょっとした騒ぎがあったコンビニに、
ピポピポピポ~ン
客が来た。
「………………」
どこぞのビジュアル系バンドマンかホストか?
と思ってしまう程の、ゴチャゴチャしたナルシストな感じの格好の男。
ってか、この人の格好よりも、
ナニアレ……
この人の後ろに見える、2つの人間と等身大くらいの、一反もめんみたいな、紙みたいな、ペラッペラな人の形をした真っ白なナニカ。
俺の目は腐ってるのか?
そう思って目をゴシゴシしてみるけど、
ペラッペラが歩いている……
人の行動のソレっぽく足を動かして優雅に歩くペラッペラは、俺の視界から消えてくれない。
しかも、
『何かあったんですか?』
と、ペラッペラは喋りながら、フロアで貼り付けにされている強盗と、レジの外に出ている店員に向かって、顔の部分を交互に捻りながら動かしている。
どうやら俺は、目だけじゃなく、耳も腐っている様だ。
「ご不便をおかけし! も、申し訳ございません! 先程、強盗に入られまして、今、こうして警察の到着を待っている最中でして……」
『うわ~、そうなんですね~』
『それじゃ、買い物しない方が良いですよね?』
「重ね重ねご不便をおかけし申し訳ございませんが、そうして頂けると助かります……」
ペラッペラ1号だけでなく、ペラッペラ2号とも普通に会話している店員。
この会話を聞いたナルシスト君は、
「チっ── マジかよ」
露骨に舌打ちをしながら回れ右して、
「他んトコ行くぞ」
ダルそうにコンビニから出て行った。
「またのお越しをお待ちしております!!」
店を出たナルシスト君を慌てて追いかけて出ていく、謎のペラッペラ1号と2号。
ソレを見届けた店員は、
「今の人達、メチャクチャ可愛かったですね!」
と、鼻の下を伸ばしながら俺の理解が追いつかない事を言いだした。
「え? あの、ホストっぽいナルシストっぽい男?」
「いや、あの人じゃなくて、一緒に入ってきた2人ですよ! あんなにスタイルが良くて可愛いとか、アイドルかなにかですかね!」
「………………」
ますます意味が分からん。
ってか、
「フハっ──!! あいつら、紐みたいなスッゲーエロいパンツ履いてたぞ! 地面に転がされてるのは屈辱だけど、コレはコレで少しラッキー!!」
「「………………」」
地面にいる強盗が酷く興奮していて、
「オイ、あんた!? 強盗だけじゃなく、ワイセツ罪も一緒に警察に報告するからな!」
それを恨めしそうな顔で店員が強盗を睨みつけ、
「ちょっ── 待てっ!? わざと見た訳じゃねぇし!! これは不可抗力だろうが!!」
強盗が狼狽えて言い訳を始めた。
いやいやいや……
あのペラッペラは、一体全体、あんたらにはどんな姿で見えてたんだよ?
ってか、スタイルが良くて、紐なエロいパンツを履いている可愛い子とか──
俺だけ味わえてなかった、さっきの最高だったんだろう状況をもどかしく思いつつ、
──マジで気になりすぎるんですけど……
DでTな俺の想像力さんが、自動生成AIの如く、わさわさと急速に脳内で画像作成を始めだした。
………………
…………
……
…
俺にだけ不可視なペラッペラがコンビニから出て行って程なくして、
「ご協力感謝します!」
お巡りさんがコンビニにやっと現れて、コンビニ強盗をドナドナして行った。
お周りさんが来たタイミングで、俺は発現させていたプッシュアップバーをコンビニ強盗からささっと取り除く。
そんな、拘束されていたプッシュアップバーが余程重たかったのか、両手両足を拘束していた、4つのプッシュアップバーを軽々と指にかけてブラブラさせながら持っている俺に、
「まじかよ……」
コンビニ強盗が驚愕を表情に浮かべてガン見していた。
それに、
「申し訳ございません…… 今はレジを動かすのを警察の人に止められていまして……」
「マジっすか……」
俺のお目当ての買い物も状況的にできなくなった。
待たされた挙げ句買い物もできないなんて、
「ハァ~……」
マジで溜息しかでねぇ。
でも、
「これは感謝のお気持ちです!!」
と、俺が籠に詰め込んだ商品を、遅れてやって来た店長からまるごとタダで貰った。
しかも籠ごと。
「あ、ありがとうございます……?」
「いえいえ! こちらこそ、店員や店舗に被害なく強盗を捕まえて頂き、本当にありがとうございました!!」
「ありがとうございました!」
ごきげんな店長と店員にお礼を言われ、俺はコンビニの籠に入っている食材を持ってお家に帰った。
アイス入れてなくてマジでよかったわ……




