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魔力を使いたいんだろ!

たった数回の昇龍◯で大量のカロリーを消費したのか、ハァハァ言いながらフロアに力無くしゃがみこむ豚。


たった数回跳んだだけ、いや、実際は足は地面に着いたままだったから、片腕を上げながら身体を伸ばしてクルクルしてただけでハァハァ言っている目の前の豚が不憫でたまらない。


しかも、



「お腹がすいて力が出ない〜」



と、助ける側と助けられる側がゴチャ混ぜになった台詞を良い歳して恥ずかしげもなく吐き散らし、いきなり自分の弱さをアピールし始めた。


そして、ピッタリのタイミングで盛大に鳴り響いたアニ豚の腹時計のアラーム。


自身の内臓まで一緒に溶かしてるのでは?と錯覚させる様な腹の音。



「………………」


「紅葉氏……  学食に行くでござる……  続きは学食でするでござる……  僕はダメでござる……」


「色々とダメなヤツに今更急に自分のダメ具合をカミングアウトされても、『うん。知ってた』ってしか言いようがないんだが」


「いや、このタイミングで何で僕がそんなカミングアウトしなければならないでござるか?  そもそもカミングアウトじゃないでござるから。  空腹具合を訴えているだけでござるから。  ちゃんと状況的に考えてほしいでござる」


「んだよ。  だったらそう言えよ」


「言ったでござるよ!  お腹がすいたとも、学食に行こうとも言ったでござるよ!  空腹のせいで余計イライラするでござるよ!」



って事で、桜田の生理現象?食欲?と言う絶対に無視する事ができない永遠の呪縛によって、続きは場所を移動して図書館から食堂でやる事に。



………………


…………


……








そんなこんなで食堂到着っと。


夏休みにもかかわらず、なかなかの人数が普通に利用している。


部活やらサークルやら、色々なアレでアレな人達なんだろうな。


まぁ、強いて言うなら──


リア充なヤツ等は須くモゲてしまえ!!



そんなザワザワと賑わう中、食券を買って列に並ぶ。


俺は、さっき思いついた中華じゃなくて、唐揚げメインな日替わり定食を頼んだんだけど、桜田はチャーハン大盛りとかつ丼と言う、ご飯モノにご飯モノを被せてきやがった。


せめて一つはオカズ系か汁系のモノにしとけよって思うけど、桜田と言う男は、2、3日前に冷凍保存した白米をおかずにして炊き立ての白米を食べる様なヤツだ。


こんなイカれた食べ方をする桜田は、お金が無くて食費が厳しいとかって訳ではない。


ただ単に米好きな豚だ。



偏食するブランド家畜か?



桜田はとある財閥の御曹司で、好き放題魔法少女モノのオモチャとかをアホみたいに買い漁っていて、いつもお金に困っている様子はない。


って言うか、住んでいるマンションがマジでヤバい。


俺と桜田は幼馴染で、大学に入ったのを期に共に親元を離れて1人暮らししている。


まぁ、ぶっちゃけ実家もすぐそこなんだけどな。


桜田は、俺が住んでいる古びたマンションの横にある新築タワーマンションの最上階に住んでいる。


最上階は1つのフロアに2戸しかなくて、そんな1戸に住んでいる桜田の部屋はアホみたいに広い。


俺が住んでいるボロマンションの部屋の100倍以上はあるんじゃねぇかってくらい無駄に広い。


まぁ、100倍は言い過ぎだが。


しかも、賃貸じゃなくて購入済み物件で、週に数回お手伝いさんが来て掃除とか洗濯とかやっている。


そんな物凄い裕福な豚はと言うと、今、俺の目の前で脇目もくれずにチャーハンとカツ丼を交互にガツガツ貪っている。



「………………」



どうやら今回はチャーハンがオカズだった様だ。



大盛りにした意味よ……



そんな桜田が箸を止めずに声をかけてきた。



「紅葉氏。  どうせなら、この後、僕ん家でやると言うのは、どうでござる、か?  今日の、僕の卒論への創作意欲は、完全に断たれたで、ござる、よ」


「人目もあるからそれでも良いかもだけど、俺の時のみたいに何が起こるかマジで分からないからなぁ〜。  マジで死ぬかと思ったし……  俺としては何が起きても良い様に、外の方がいいと思うけど」


「え?  死ぬってなんでござるか……?  何が起きてもってなんでござるか……?  何かが起こるんでござるか……?  なんだか急に怖くなってきたでござる……」



俺の言葉に何かを感じたのか、桜田はキュゥって眉間に皺を寄せながら表情を青ざめさせた。



普通、そこまで思い悩むなら、箸を止めて食うのを止めるよな?


さっきの変顔眼鏡と言い今と言い、コイツは感情と行動が噛み合わなさ過ぎ。



険しい表情をしつつも食べるのをやめない桜田に、思わずため息を吐きながら肩を窄める。



「そんじゃ無難にオアシスにでも行くか?  あそこなら色々な自販機と野外テーブルもあるし、多分誰も居ないと思うからそこで良いだろ?」



学生の間でオアシスと呼ばれている、大学内にある自販機ゾーン。



「ウムムムムムム……  誰も居ないと言うか、この猛暑の真昼間に屋外と言うのは流石に暑すぎて誰も行かないでござるよ……  どうせ屋外なら、この近くにある自然公園内のカフェはどうでござるか?  あそこなら外のテラス席も広いし冷風器もあるから、屋根があって自販機が立ち並ぶだけのオアシスよりはまだマシでござるよ」



コノっ──!?


──豚のクセに無駄に洒落やがって!


お前なんて炎天下の中で自販機の缶コーヒーでも飲んでろ!



無駄にお洒落な発想をする豚に、鎮火した筈の殺意が湧く。



「んじゃ、お前の奢りな」


「何故でござるか!?」


「じゃぁいいや。  お前に魔力を教えると言う話は無かった事──」


「──奢るでござる!  是非とも僕に奢らせてくださいませでござる!」


「………………」



ご飯を食べながら興奮気味に大声を出したせいで、俺の顔は豚の口から飛んで来たチャーハン塗れだ。


怒りのメーターが何周したのか分からない程、勢いよく殺意の波が寄せては返す。



って言うか初めて知ったわ。


短い時間で何回も怒りが天元突破を繰り返すと、逆に冷静になるのな。



取り敢えずテーブルにあるティッシュで顔を拭う。



「…………そんじゃ、お言葉に甘えて際限なく奢ってもらおうか」


「はうあ!?」



桜田の口の中にあったモノを顔に浴びせられ、何度も怒りを振り切っている俺の笑顔を見た豚は、やっとの事で箸を止めた。



………………


…………


……








お昼ご飯を食べ終えた俺と桜田は、大学の近くにある公園に到着しましたよっと。



「………………」



俺の横にいる桜田は、此処に来る途中のコンビニで買った氷菓で有名なガリガリなアイスをアムアム貪っている。



あんだけ食べたクセに、マジでどんな胃袋してんだよ。


しかもこれからカフェで何か頼むんだろ?


もう、呆れを通り越して驚愕に値する。



そんなこんなで桜田の奢りで抹茶ラテを購入し、俺達は自然公園内のテラス席に向かい合って座っているなう。



「………………」



一応テラスには、日差しを遮る屋根があり、冷たい霧みたいな何かを飛ばしている複数の冷風器が全力で稼働していているけれど、真夏日が降り注ぐ真昼間と言う事もあり、俺達以外には誰1人として外のテラス席に座って居ない。


誰だってエアコンの効いた涼しい室内の方が良いわな。


しかも、何が楽しくてこんな所で男同士で向き合って座らにゃならんのだ……


って言うか、ここのカフェってマジで意識高いんだよなぁ〜。


と、チラチラ周りを見る。



此処では、公園内の自然保護や環境維持って名目で、プラスチックや紙のカップは一切使わずに、基本は店内飲食。


テイクアウトしたいなら持参したタンブラーじゃないと販売しないって言う徹底っぷり。


そのせいか、お洒落で意識高い系の人に人気があって、ここのコーヒーをタンブラーに入れて持ち帰り、木々に囲まれた公園の木陰で寛ぐってのがカッコイイみたいな感じになっている。


そりゃぁ、デートでも使われる訳で、店内はカップルかインテリ系のお洒落さんばかり。



あ〜。


マジで彼女欲しくなってきたわ〜。



「………………」



そんな中、俺たちはと言うと、男同士でテラス席で向かいあって座り、目の前に座っている桜田は飲み物と言うよりもパっフェみたいな食べ物寄りのヤっバイヤツを貪っている。


朝起きてから今迄で、コイツは一体どれ程のカロリーを接種したのだろうか?


かなり気になるけど、聞いたところでコイツの健康状態なんてどうでも良いから聞くのはやめる。


どうせ俺の2、3日分の大量のカロリーを1日で摂取しているんだろうなって事で自己完結。


はい、おしまい。



「……そんじゃやるか」


「待ってましたでござる!」



俺の開始の合図と共に豚のテンションが爆上がり。


太っいストローで『ズゴゴゴゴゴゴゴ〜』って詰まった掃除機みたいな音をたてながら凄い勢いでバキューム。



オイそこの豚?


普通、始めるって言ったらストローからは口を離すもんなんだぜ?



まるで店から出る前に残り物を一気に飲み干す様な勢いでバキュームを始めている豚を尻目に、カバンからタブレットを取り出して、ブクマしていたリンク先をチャットアプリで桜田に送る。



「ん?  なんでござるかコレ?  魔法は?  魔力は?」



魔力の使い方を教えると言われ、何処ぞのサイトのURLをスマホに送られて来た桜田は、意味が分からないと言った表情をしながらも、俺からの着信音を立てた自分のスマホを覗く。



「魔力を使いたいんだろ?」


「そうでござるが、紅葉氏が僕に使い方を教えてくれるのでは?  アニメや漫画みたいに魔法の術式を教えたり?  魔力のコントロール方法みたいな特訓的な事をしたり?  それか、力を分け与える的な事をしたり?」



自身のスマホと俺の顔を交互に見る桜田。



「いいから取り敢えずそのリンク開いてみ」


「………………」



俺の言葉に頭の上にハテナマークを撒き散らしている桜田が、指を動かして俺が送ったリンクを確認する。



「なんで、ござるか、コレ……  って……  コレまた……」



リンク先を開いたのか、桜田の顔が痛いモノを見る様な呆れ顔となり、忘れたくても忘れられない、巫山戯たサイト名を呟いた。





──魔法使いになろう!──




お読みいただきありがとうございます。


モチベになるので、☆とか、ブクマとかお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで図書館からほとんど動いてなかったのに、凄まじいテンポ感で進んだように思えました! これだけ簡単に魔法が使えたらいいけど、ちょっと怖いですね笑 [気になる点] ここから紅葉と桜田が…
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