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俺の直感がそれに違いないと大声で囁いている

俺的にはマジで興味ないし、マジで聞きたくないけど、ストーカーが勝手に話し始めた。



「先ずは、妾が封印された理由からかのぉ」



そんで、ストーカーの口が開くと同時に場が静まり返る。


ってか、帰っても良いかどうかを聞くタイミングを逃してしまった。


俺の帰宅時間がまたしても伸びていく。


みんな、それなりに真剣な顔で静かに耳を傾けているけど、ソレを見て俺の頬が勝手に吊り上がってくる。


今みたいに笑ってはいけない状況で、シーンって場が一気に静まり返ってしまうと、何故か笑いが込みあがってきてしまう病の俺。


ニヤニヤが止まらなさすぎるから、取り敢えず下を向いておく。



「端的に言うと……  妾は慕っていた殿方の手によって封印された」


『………………』



出だしからクッソ重苦しくなった空気。


しかも、なんかラブロマンスな感じな出だし。


そして、



「なんでだよ?」



勇気ある乙女な馬鹿が興味を持ってしまったのか、即座に相槌を打ちやがった。


ってか、コイツは単なるラブロマンスものが大好物なだけで、



「こんなチカラを持った妾に対し、恐怖した彼の者の気が触れたのだ……」


「マジ、かよ……?」



秒でストーカーの話に飲み込まれた。


逆にオマエに『マジ、かよ……?』だわ。


嘘に決まってるだろこんなの。




「ある日、妾は箱を手に入れた。  先ずは妾が箱によってチカラを手にし、妾の勧めによって彼の者も続けてチカラを手にした。  この瞬間、妾はこの者と一生共に生きてゆく事を心に誓った」


「熱ぃな……」



目をキラキラと輝かせながら話を聞く雫。



何が『熱ぃな……』だ。


照りつける夕日の方が暑くて死ねるわ。


こんなんどうでも良いから、マジでさっさと帰って涼みたい。



「チカラを手に入れてからは、互いが離れて遠くにおっても、妾は彼の者を常に身近に感じておった。  妾の心はいつも彼の者と一緒にあった。  妾は彼の者の為を思い、彼の者の手足となって尽くし続けた」


「分かるぜソレ……」


「──!?」



雫の同意に豚の身体が震えた。



「しかし、いつしか、彼の者は妾に恐怖し始めた。  思うに、妾が虚無を屠ったり、虚無に取り憑かれた者を容赦なく屠っていったからに違いない……  妾が得たチカラは、それ程までに彼の者とチカラの差があり、その差が妾たちの愛へと深い溝を穿ったのだ」


「なんてキン◯マの小せぇ奴だ……」


「………………」



いや、今、キ◯タマの話はしてないし、キン◯マってワードは一切出てきてないからな……?



「そして、妾は、妾が愛する者の手によって封印された」


「グス──  ヒデーな……」


「グス──  悲しいですね……」



何故か泣き始めた雫。


しかもウP主も落ちた。



「封印される直前に言われた、彼の者のあの言葉が、今でも妾の耳に残っておる……」


「グス──  もう、そんな昔の事なんて忘れちまえ」


「そうですよ。  グス──  忘れて新たな人生を楽しみましょう」



ってか、女性陣がストーカーに同調し始めやがった。



「彼の者は言った。  彼の者に尽くす妾が息苦しいと……  彼の者を思い続ける妾が重たいと……  そして、妾が恐ろしいと……  妾は彼の者に拒絶され……  封印された……」



おい待て……


コレって……



「グス──  オマエ、今まで一人でよく頑張ったな。  ズズズ──  出てこれてよかったな」


「グス──  私達は家族です!  ズズズ──  一緒に、新たな愛を見つけましょう!」



感極まったのか、目尻に涙を溜めるストーカーに抱きつく雫とウP主。


そして、愛おしげに俺を見るストーカー。



このタイミングでこっち見んなし!?


マジで怖ぇよ!!



それを見た男性陣は即座に何かを悟り、ご臨終と言った様な顔で俺を見る。


そう。


コイツはアレだ……


度を超えたストーキングのせいで封印されたに違いない。


俺の直感がそれに違いないと大声で囁いている。



ってか、封印される程のストーキングってどんだけだよ!?



しかも、封印された後にあること無いこと言われて祀り上げられて利用されて、文字通り人柱にされたんだろう、多分。


話しを聞く限りだと、その男は封印後の抜け殻までをも利用し尽くす程の、歌舞伎町No.1ホストも吃驚で真っ青な手腕の持ち主。


そもそも、こんなチョロっチョロでヤンでデレな馬鹿に、組織や秘密結社の運営とかできる訳がない。


組織を創った犯人も、コイツを封印したその男なんだろうと、容易に俺の中で脳内再生(狡猾に笑う謎の男Aみたいな全身真っ黒な感じで)されている。


けど、話を聞くだけでは情報が不足しまくっていて、マジでどうとも言い切れずに、白黒の判断が下せない。



パパさんも俺と同じ事を思ったのか、眉間を指で摘んで溜息を吐いている。



「まぁ、その話が本当だとしても、今となっては真偽の確認ができないな……  因みに、貴女を封印した者の名前を聞いても?」



まぁ、話が怪しすぎて、追加で色々と聞きたくもなるわな。



「うむ……」



ストーカーはそんなパパさんの質問に一瞬だけ苦い顔になり、



「安倍晴明、だ……」  


『………………』



答えながら軽く殺気を撒き散らしやがった。



ってか、ハイ出ましたぁ〜。


またしても伝説的な物語のヤツ〜。


ジジイの浦島太郎と同レベルなヤツ~。



「あぁ……  この名を口にするだけでも忌々しい……  もし再び会える機会があるのであれば、妾が味わった苦しみを、100倍返しで与えてやる」



そして、『裏切ったら分かるよな?』的な視線を俺に向けるストーカー。


そんなストーカーと目があった瞬間、俺のキ◯タマがヒュンってなって、背中が寒くなって、鳥肌が立ちまくった。



やべぇ~……


マジでやべぇぞコイツ……


ってか、なんで俺見てんだよ~……



これを見て、俺に向かって黙祷しながら合掌する豚とイケメン。



「確かに、貴女の封印に関しての記録の発端は、安倍晴明の手記から始まっている。  今となっては、真実の真偽は確認できないから、一度、貴女には我々の組織に同行願う形になるけど」


「それで疑いが晴れるのであれば、妾は構わん」


「それと、もう一つ」



ここでパパさんの雰囲気が重たい感じに変わった。



「この前の東京タワーの地下で、僕の義父が襲われて、今も意識不明だ。  それは貴女の仕業なのか?」



ってか、若干、殺気を放っている。


パパさんのこの質問に、雫と桜田もジジイの事を思い出したのか、ストーカーを軽く睨む。



「あの時、目覚めてすぐの妾は、虚無に侵された者に襲われた。  妾はソレを返り討ちにしただけにすぎぬ」


「義父が虚無に侵されていたと?」


「お主が言う義父が虚無に侵されていたのであれば、妾が屠ったと言う事になるが……  妾を襲って来た者は赤い服装の者で、その横には黒い服装の者が既に倒れていたな確か?」


「そうですか……  まぁ、義父が目覚めれば、貴女が言う真偽も確認できるでしょう」


「お主が言う真偽の証拠となるかどうかは知らぬが、妾を襲ってきた者の記憶は覗いたぞ?」


「ほう?  記憶を覗いたと?」



瞬間、パパさんの目が鋭くなって、射殺す様な目つきになった。



「それに、お主らも妾が記憶を覗いている所を見ておったではないか?」



そう言うストーカーは雫と桜田を見ながら顎をしゃくる。



「そうなのか……?  雫、葵ちゃん……?」


「もしかして……  あの時の、グロいアレでござるか……?」


「マジか……  あの脳みそヤローがそうなのか……?」



そして、グロいとか脳みそヤローとか、なんか嫌なフレーズを呟き出した雫と桜田。


俺はこいつらに何があったのかなんてさっぱり分からないし、ぶっちゃけ知りたくもないけど、



「確かに、アレはジジイじゃなかった」


「で、ござるな……」



その場に居た雫と桜田にはなんの事かが分かったっぽい。



「まぁ、その者が目を覚まし次第、聞いてみるが良い」


「分かりました……  取り敢えず、これから我々の組織へと向かいますが宜しいですか?」


「あぁ、構わんよ」


「それと、貴女もご一緒に」



と、パパさんがウP主に顔を向ける。



「へ?  私?」



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