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ナニ、コレ──?

ソレは当に一瞬の出来事。


俺の足元で、色々とボッキボキで血だらけで、ピクピクと痙攣している虫の息なクリリン。


警察の特殊課?に入った、桜田や雫がいつかこうなるだろうって思っていたけど、



「クリリン……」



その “いつか” が今来やがった。


しかも、桜田でも雫でもなく、クリリン。


俺が何も考えていなかったせいで──


俺がチカラを与えたせいで──


俺が止めなかったせいで──



俺が、俺が、と頭の中で己の過ちとか愚かさが駆け巡る。



「──っㇰ!」



行き場のない怒りが、自然と固く握られた拳へと行き先を向ける。


ひ弱でモブな俺が、力の限りにどれだけ強く拳を握ったとしても、アニメや漫画の様に、ちょっとだけカッコ良く思ってしまう様な、手から血が出て地面に滴り落ちる、例のアレなんて事は全く無いし起こらない。



それが逆に悔しくて──


己の弱さが悔しくて──



気づいたら、左手から黒い剣を発現させて、





──ブッコロシテヤル──





黒いヤツに向かって走っていた。




殺意剥き出しで向かって来る俺に気づいたのか、黒いヤツが芸もなく右腕を横に薙いできた。


咄嗟に、この前プラモで造ったガントレットみたいな外装パーツを左腕へと発現させ、



「邪魔ぁあ!!」



──ッゴ!



蝿を払う感じに漆黒の拳でもってビンタを弾く。



続けて同じ様に黒いヤツの左腕が右から迫ってきたけど、



「右が駄目なら左とか、テンプレかよ!!」



少しは捻れよと言わんばかりに、怒りに任せて右手にある剣で切り落とす。


ストレスなのか、緊張なのか、怒りなのか知らんけど、行き場のない感情によって徐々に視界が狭くなり、




──ィィィン




ついでに、耳鳴りがマジで煩くてすこぶる堪らん。



俺の視界に写るのは黒いヤツだけ。


今の俺には、アレを破壊し、蹂躙し、抹殺し、駆逐する事だけしか考えられない。


小さい子供のお遊びチャンバラみたいに、我武者羅に、無茶苦茶に、滅茶苦茶に、出鱈目に剣を振るう。


黒い奴を、斬り裂き、切断し、両断し、細切れになるまで斬りまくる。



「ハァハァハァハァ──!」



足元に散らばっているソレの慣れの果を見ても怒りは全く収まらず、



「死ね!  死ね!  死ね──!」


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね──!!



バラバラになって散らばっている欠片めがけて、何度も何度も剣を振り下ろす。



何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も──





しかし、繰り返し振り下ろしていた腕が急に止まる。



「紅葉氏ぃぃぃい!!」


「モヤシぃぃぃい!!」


「はぁハァハァはぁはぁはぁ──!?」



気づいたら桜田に羽交い締めにされ、振り下ろそうとしていた腕を止められていて、



「ハァはぁハァはぁ──  豚?  オマっ、なに、してん、だ?」



同時に視界が一気に広がって、煩かった耳鳴りが遠くにゆっくり消えていった。



「もう十分でござる!!  このままでは妹氏も巻き込んでしまうでござるよ!!」


「──!?」



桜田の声にゆっくりと視界が動く。


その先にある光景は、



「──っ!?」



公園のグラウンドに沢山の切り込みが入って荒れていて、沢山の黒い欠片が無造作に散らばっていた。



「ナニ、コレ──?」



まるで、軽く耕されたみたいに、凄い事になっているグラウンド。


それを見て、



「──っ!?」



止まっていた俺の思考が動き出して、



「──クリリン!!」



死にかけのクリリンの事を思い出す。


そんな俺の悲痛な言葉に答える様に、魔法少女な桜田が顔を動かし、



「あっち、で、ござる……」



指を差す。


そして、そこには、



「ははははは──  紅葉……」



服が血まみれでボロボロだけど、



「君……  凄い、ね……」



数分前?に俺が見た様な、元気そうな爽やかイケメンなクリリンが、顔を引き攣らせてドン引きしていた。



「え?  な、なんで──!?」



さっきまで手足が曲がって血を吐いて死にかけていた筈なのに、



「いやぁ~……  何て言うか……  僕も何がなんだか……」



まるで何もなかったかの様に、しっかりと両脚で立っている。



マジで意味が分からん……







その後──


雫が穂花ちゃんを近くのベンチに寝かせて介抱し、



「──で、ござる」



その間、豚が何処かに電話している。


多分、パパさんか誰かに応援とかを頼んだんだろう。


知らんけど。




それよりも──



「クリリン……  なんで……?」



俺は確かに、死にかけて虫の息だったクリリンの姿をこの目で見た。




筈なのに──




未だに本人も要領を得てないのか、



「ははははは──」



何かを考えながら空笑いをするクリリン。


そんなボロボロの格好のクリリンは、



「僕にも何がなんだかイマイチ分からないけど──」



ベンチの背もたれに背中を預けながら、



「──どうやら、コレが僕の能力?チカラ?みたい……?」


「は?」



首を傾げて疑問系でそう言った。



いや……?


え……?




どんな能力だよ!?



………………


…………


……








死にかけだった状態から蘇ったクリリン。


そんなクリリンは、何事もなく元気そうに俺の横でリンゴジュースを飲んでいる。



いくらマジモノの魔法とか、異能を得られたからって言っても、何がどうなってんだか全く意味が分からん……



そんな摩訶不思議なクリリンが、自分が得た魔法を説明してくれた。


クリリンが最初に使った光魔法は、PDFを読んですぐに分かった魔法らしい。


しかし、もう一つ?の自分を修復する云々のヤツは、死にかけた瞬間に分かってしまったらしい。


ソレは──



「脳を完全に破壊されない限り、自分の身体が元通りになる……  っぽい……」


「………………」



ゾンビかよ……



って事で、此処に光属性を使えるゾンビ勇者が爆誕した。


魔法少女になる桜田も色々と盛り盛りで大概だけど、クリリンのゾンビ勇者にはマジで勝てない。



「って言うか、血とかドバドバ出てたんだけど、それってどうなの?」



出血しまくったら、脳が潰される以前に、脳に血も酸素も行かねぇだろ?


って事は、脳が破壊されたのと同じなんじゃね?



「ん〜……  魔素?を取り込んで、血とか欠損した部分に変える?っぽい……」


「そ、そうなんだ……」



いや、もう、なんて言うか……


完全に現代医学に喧嘩売ってんな……


ってか、ほぼ不死身じゃん……



「必要な魔素は、この、腕の『勇者』……  の、文字?で取り込んでるっぽい……  ハァ〜……」


「うわ〜」



なんて言うか、俺の左手と似た感じ。


って言うか、光魔法とかゾンビとかあるから、話を聞く限りだと、俺の上位互換。


少しだけ羨ましいけど、



「勇者……」



あのキラっキラの文字が腕に残るのだけはマジで頂けない。


この先、一生半袖やタンクトップが着れないどころか、プールにも海にも温泉や銭湯にも行けない。


下手したら、妹に嫌われるレベルで自己主張しまくっている腕の2文字。



酷すぎるwwww



無難を選んだ俺は、バグも無難だった事に胸を撫で下ろす。



って事で、



頑張れよ、『勇者』!!wwww



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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