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言いたい事は分かってるから!

俺は自分のスマホを取り出して、クリリンのチャットアプリに件のサイトのリンクを送った。



「!?」


「今、俺が送ったヤツ、ちょっと、急いで開いてみて」



俺のいきなりな言葉と同時に、自分のポケットの中で振動したスマホに驚くクリリン。


しかも、こんな状況の中、俺の不謹慎な行動に軽く怒りが込み上げたのか、



「こんな時に、キミは──!」



声を荒げようとしているのを、



「──穂花ちゃん、助けたいんだろ?」



最後まで言わせずにブった切る。



「──っㇰ!」


「見ての通り、俺は普段から鍛えているクリリンと違って、ひ弱でモブだ」



青白い、少しヒョロってる俺の腕をクリリンに見せる。



「でも、桜田と雫も、俺が送ったソレを見て、あんなファンタジーな事ができる様になった」


「なっ!?」



クリリンが向こうで穂花ちゃんと戦っている桜田達に視線を向ける。



「そんで──」



徐に自分の左腕を突き出して、掌にある黒い線をみせながら、



「──俺も、ホレ」


「え──!?」



魔力を込めて掌の口を開いてやって、



「ナニソレ!?」



掌の上に発現させた真っ黒な四角錐を見せる。



「俺のチカラは、まぁ、無難なモノを選んだから、向こうに居る二人と違ってマジでショボいんだけど。  クリリンは力が欲しいんだろ?」



俺の掌にある四角錐を見ながら、ポケットからスマホを取り出すクリリン。


そして、俺が送ったリンクを開き、



「…………紅葉。  コレって………」


「いや、俺もたまたま見つけただけだから。  ソレ以上は、言わなくても分かってるから」



案の定って言うか、痛い奴を見る様な視線を俺に向けるクリリン。



大丈夫!


言いたい事は分かってるから!


俺は痛くないから!


痛いのは俺じゃなくて、そのサイトだから!!


俺が痛いんじゃないんだから!!



「そんで、そこにある2つから好きなの選んで」


「え?  で、でも……」



サイトに残っているのは、





【心技体! 魔法剣士 虎の巻!】



【育め! Love 聖職者の極み!】





まぁまぁ良い具合に、少し痛めな感じのタイトルのヤツが2つ。


でも、最大の爆弾は、桜田と雫が好んでペロリと処理したから、どれを選んでも誰にも非難されることは無いはず。



…………無いよな?




「ソレを選べば、タイトル通りな感じの力が手に入る。  因みに俺は、そのグレーアウトしている魔力のヤツで、桜田は魔法少女、雫は忍者のヤツ」


「紅葉……」



クリリンが俺の言葉を聞きながらスマホから俺に視線を移したけど、



「大丈夫。  言いたい事は分かるから。  だから、何も言わずに早く選んで……」



クリリンが俺を見る目は、完全にチキン野郎を見るアレだった。


誰彼構わず心優しいクリリンにでさえそんな目で見られ続けられたら、俺は自分の目を潰して、今後、人の視線を気にせずに、傍若無人に生きていくだろう。


でも、そんなの嫌だから、今はどうでも良いモブでチキンな俺の事じゃなくて、



「穂花ちゃんを助けたいんだろ?」


「──っㇰ!」



今、見るべき、考えるべきクリリンの望みへと意識を強制的に変えてやる。



「クリリンは、自分の妹が首ガクガクでも良いの?」


「いや、だ」


「クリリンは、自分の妹があの馬鹿と豚に痛めつけられてるのを見てるだけで良いの?」


「いやだ」


「クリリンは、自分の妹が暴走したりして、人を殺めてしまっても良いの?」


「嫌だ!」


「クリリンは、自分の妹が指名手配されたり、警察のお世話になっても良いの?」


「そんなの、嫌に決まってる!!」



今の状況を見て、俺が言う様な未来が容易に脳内再生できたのか、アドレナリンドバドバな感じで声を荒げるクリリン。


『じゃぁ、どうするか分かるよな?』と言う意を込めながら軽く顎をシャクってクリリンのスマホに視線を向け、これから何をすべきかを促す。


己の身を挺して献身的に誰かを助けたいとか全く思わない、ひ弱でモブな俺とは違って、



「これを選べば、僕にも穂花を助けられる……」



正義感が強いクリリンの目に活力が滾る。



「選べる力の選択肢は少ないけど、クリリンができる選択肢は増えるはず」


「僕の選択肢……」



そして、選ぶチカラが決まったのか、



「僕は──  僕が穂花を助けるんだ──!!」



手にしているスマホを操作し始めた。



「紅葉。  ダウンロードできた!」


「選んだヤツがPDFでダウンロードされてる筈だから、それを読んだらチカラが手に入るよ?  多分?」


「え?  多分?」



クリリンが不安気な顔でスマホから俺に顔を向ける。



「俺たちの場合はそうだったってだけで、正直、クリリンの場合、どうなって、どうやってチカラを得られるのか分かんない」


「え?  ちょっ──  ナニソレ!?」


「でも、俺から言えるのは、ダウンロードしたPDFにある手順通り進めないと、もしもの事があるかも?だから……」


「もしもってナニ!?  もしもとかあるの!?」



ぶっちゃけ、コレは言うかどうか迷った。


不覚にも、先走ってバグったのは今のところ俺だけ。


ムカつくが、ちゃんと手順通り進めた馬鹿と豚はバグってない。


欲望だらけの馬鹿と豚のくせにバグんないとか、マジでムカつく。



なんでだよ!?


おかしいだろ!?


アイツらが元からバグってたからなのか!?



って事で、クリリンがバグ仲間になってくれれば俺としても嬉しいんだけど、



「あるかもだから、冷静に、心を落ち着けて、先走らずにPDFの進行通りに従って。  試練的なのがあるかも」



あの2人とは違って、一応、良識があって(シスコンを抜かせば)、俺に優しいクリリンには、何事もなく純粋にチカラを得て欲しい。


チカラを得たい理由も俺たちと違って、唯一まともだし……



「し、試練……?  わ、分かった……」



クリリンはダウンロードされたPDFを開くか開かないかで迷っているっぽいけど、



「………………」



恐る恐るって感じでPDFを読み始めた。



あ……


向こうで桜田が黒いやつの手に潰された……


生きてるかな……?



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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