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いや、俺も居るんですけど…

クリリンと一緒に外に飛び出す。


次いで、桜田が玄関にあったみんなの靴を抱えて出てきて無造作に道路に投げ置き、



「輝け月!  煌めけ星──!」



ワンドを掲げて変身呪文を唱え始めた。


そんな、いきなりな俺たちの行動や、



「え──?」  



変な呪文を唱え終えた桜田がモザイクに包まれて、マジで訳が分からなくなっている姿を見て、  



「──ナニ、コレ……?」



クリリンは自分の靴を持ちながら、思考も動きも完全にフリーズした。



「クリリン!  この辺に広いところってある!?」


「あ……  紅葉……  うん……」



しかも、モザイクが晴れて魔法少女になった桜田の姿を見て、



「か、可憐だ……」



驚きながら呆然と見とれていて、



「栗林氏!!  僕たちを広い場所に案内するでござる!!  此処では被害が出すぎるでござる!!」


「あ……  えっと……」



そんな魔法少女の鈴の音の様な声を聞いたクリリンは、



「早くするでござるよ!!」


「こっち……  いや、こっちだ!!」



一気にフリーズが解けて、



「キミ!  僕についてきて!!」



何故かいきなり勇敢な感じになった。


そして、完全に俺を無視して行動し始める2人。



いや、俺も居るんですけど……



走るクリリンの背後についていく魔法少女。


しかも、走りながらワンドを地面に向けて、1本の線を引く様に凍らせて、



「これで、木梨氏に僕たちが向かった先が伝わるでござる!!」



と、何故かドヤ顔。



いや、そりゃ分かるだろうけど……


出てくるまで待ってあげろよ……



そんな桜田の魔法を見て、



「なんだか良く分からないけど、凄いねキミ!?」


「グフっグフっグフっ──  こんなの、よゆーでござるよ!」



と、キモい笑い方をする魔法少女をベタ褒めするクリリン。



ってな感じで、美男美女が甘酸っぱく走り去って行ったから、俺は俺で、雫が家から出てくるのを待つ事に。


アイツを一人で放置しておくと、マジで何をしでかすか分かったもんじゃない。


ってか、



「──ㇰっソ」


「──ㇶイっ!?」



いきなり雫が玄関から真っ直ぐに吹っ飛んできて、



「──がぁぁぁあああ!!」



お向かいさん家のブロック塀に靭やかに両足で着地して、



「一体、何なんだよアイツ!?」



スタイリッシュにカッコ良く道路に降りる。


何て言うか、重力とか色々な物理法則が全く仕事してない。


マジでアニメや漫画の世界な感じ全開。



そんな雫の視線の先には、



『アガ──  アガガガガガガガ──』



何処ぞのもののけの森に居る白い精霊の様に、顔をガクガクさせている穂花ちゃん。


と、相変わらず背後から愛おしそうに穂花ちゃんをハグしてる黒いヤツ。



彼氏さんかな?



「クソっ!!  アイツの攻撃が全く見えねぇ!!」



って雫が言っている間にも、背後の黒いヤツが右腕を横に広げて、雫に向かって薙ぎ払う。



「──グゥっ!?」



バチコンってな具合に、ソレをまともに食らった雫が俺に向かって吹き飛ばされてきて、



「あダァっ──!?」


「邪魔ダっ──!!」



衝突した俺をクッションに使って体勢を整える。


俺は俺で、激しくアスファルトの上をゴロンゴロン。



クソ!!


俺も桜田達と逃げていれば良かった!!



って事で、



「オイ馬鹿っ!!  桜田達んとこ行くぞ!!  こんなとこで暴れたら、マジで近所迷惑になるっつうの!?」


「黙れっ!!  オマエに言われなくてもそれくらい分かってるわ!!」



そして雫が素早く印を組んで、人差し指と中指の間に白い紙を発現させて、



「コッチだ化け物!!」



ポケットから取り出した小銭と融合させて無造作に丸めて、穂花ちゃんに向かって勢いよく投げつける。



「着いてきやがれ!!」



しかし、雫が投げた小銭と同じ硬さになっている紙は、



『──ガガガが』



穂花ちゃんに届く前に、ペシってな感じで黒いヤツに叩き落とされた。



「クソ!  何で届かねぇんだよ!?」


「………………」



いや、届かない以前に、黒いヤツに叩き落とされてるし……


そんなんが届く訳ないし……



「見えないバリアでも張ってんのかよアイツ!?」



ん?


もしかして、コイツ……


まさか……



「背後の黒いアレ、見えてないのか……?」







雫が小銭と同じ性質の紙を丸めて、



「こっちだ!!   オラァ!!」



追ってくる穂花ちゃんに投げつけながら、



「氷が解けてきてんぞ!?」



真夏日の炎天下によって解け始めた、桜田が残した氷の跡を進んでいる俺たち。


そして、



「モヤシぃっ!!  1円玉以外の小銭、全部よこせっ!!」


「はぁっ!?  なんでだよっ!?」


「早くしろ!!  小銭が切れた!!」



露骨かつ大ぴらにカツアゲされる俺。


状況的に仕方がないとは言え、



「オマっ──!?  マジで巫山戯んなよっ!?  ってか、ソレ用に小銭みたいなナニかをいつも持ち歩いとけよ!!」



って言うか、ゲーセンのメダルとかパチンコ玉でもいいだろうが!!



雫の計画性の無さにイライラする。



ってかこんなん、俺の金返ってこないの確定じゃん!?


これが終わったら、後で絶対に拾いに来てやるんだから!!


雫のヤツはパクってやるんだから!!



そんなこんなで、広めの公園に到着。


しかも、



「オマっ──!?  オイ豚ぁぁぁあああ!!  公園の場所が分かったんだったら、こっちに加勢にこいよっ!!」


「葵ちゃん!」



公園の中央で、魔法少女が意味深気なポーズを取って俺たちを悠然と待っていた。



「木梨氏!  後は任せるでござる!!」


「アイツの攻撃見えないから気をつけて!」


「了っでござっ!!」


『アガがガガガが──』



そして、俺を無視して事を進め始めた2人。


ソレならばと、俺はクリリンが半身を出してこっちを見ながら避難している、大きめの木に向かって走る。


別名、避難とも、逃避とも言うとかなんとかなアレ。



「紅葉……  一体、なにがどうなってんだよコレ……?」



そんで、やっぱりって言うか、俺に説明を求めてきたクリリン。



「いや、何ていうか……」



俺こそ、ナニがどうなってこうなってるか知らんし、アレをどう説明すればよいのかマジで分からん。


だから、



「何かに取り憑かれてるっぽい?」


「は?」



とだけ言っておく。


俺とクリリンの視線の先では、雫と桜田の攻撃を前に、クビをカクカクガクガクさせながら、呆然と佇んでいる穂花ちゃん。


俺には、穂花ちゃんの背後に居る黒いヤツが、雫と桜田の攻撃をペシペシ叩き落としているのが見えてるんだけど、



「何でござるかコレは!?  バリアでござるか!?」


「そうなんだよ葵ちゃん!!  アイツのバリアなんとかしてよ!!  攻撃が全く通んねぇんだよ!!」



戦っている2人には、マジで背後の黒いヤツが見えてないっぽい。



「木梨氏下がるでござる!!」



空をグルグルとかき回すようにして、



「これでも──」



ワンドを頭上で振る桜田。



「──喰らえでござる!!」



そして、何処ぞかから現れた雷の柱。




──ドッゴォォォぉぉンン!!




と、腹の底に響く雷鳴を轟かせながら、穂花ちゃんの頭上に落ちる。



「穂花ぁぁぁあああ──!!」



ソレを見て、かなり心配そうに手を伸ばして叫び声を上げるクリリン。


こんな、妹に容赦なく魔法が放たれている絵面なんて、シスコンの兄にはたまったもんじゃないだろう。


黙々と上がる粉塵が穂花ちゃんを覆って隠しているけど、



「「「──!?」」」



粉塵の隙間から、黒いヤツが両手を広げて、桜田の雷を防いでいるのが見える。



「──っㇰ!!」



って言うか、クリリンのイケメンフェイスが、今にも泣き出しそうな感じで悲痛で歪んでいて、



「紅葉!!  何かっ!  何か僕にできることは!?  このままでは、穂花が、穂花がっ!!」


「………………」



そして、黒いヤツが反撃に薙ぎ振るった腕に簡単に当たって吹き飛ばされる、桜田と雫。


マジで黒いヤツが見えてないっぽい。


何故か知らんけど、俺だけには見えているっぽいけど、



モブでひ弱な俺があんなゴツいビンタ食らったら、マジで死ねる自信あるぞ……



マジで痛そうだから極力介入したくないし、ホントに戦いたくない。


ってか無理。


左手の黒い線を見てどうしようかマジで悩んでいると、



「クソ──!!  僕にもあんな力があれば──!!」



って苦しげに呟きながら、身を隠している木に向かってパンチするイケメン。



「………………」



いやぁ、もの凄く主人公的なアレでアレなシチュエーションとセリフだな……



こうやって他人が言うのをリアルに聞いてしまうと、なんか俺まで恥ずかしくなって、背中がゾワゾワする。



けど、



「クリリン。  力があったらどうするつもり?」



俺はクリリンに尋ねてみる。



「そんなの決まってる!!  今、僕に力があったら!  僕が穂花を助けるんだ!!」


「──っ!?」



ヤバい!?


眩しすぎて、目が潰れるかと思った!?



「穂花の苦しみを、僕がこの手で消してやりたい!!」


「──っ!?」



ヤバい!?


清純派主人公なクサイ台詞すぎて、気持ち悪くて鳥肌立った!?



そんな、恥ずかしげもなくクサイ台詞を唱えるクリリンから目を逸し、俺はそれとなくバレない様に、ゆっくりとサスサスって自分の両腕をこする。


って事で、


「じゃぁ、クリリンにチカラをあげるよ」


「え?」


「スマホ出して」


「は?  こんな時にナニを──!」



俺はクリリンに、黒い何かと戦っている桜田と雫にも見せた、そして、俺の何かがバグった原因でもある、”アレ” を見せる事にした。





【魔法使いになろう!】



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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