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現実は、小説より奇なり

そんなこんなで近くのファミレスなう。


ナチュラルで眩しすぎる、爽やかオーラーを常時出し続けるまでに育ってしまったクリリンとなんて、マジで一緒にご飯とか行きたくなかった。


けど、丁度夕飯時だったってのもあって、渋々ながら行くことに。


それにクリリンは、



「ゴっメーン。  ちょっと紅葉と大事な話があるから、また今度遊んでよ~」



モブな俺なんかに大事な話などあるはずもないのに、俺の人見知り具合に気を使ってくれたのか、爽やかに女性を帰した。


そんな女性達は、次にクリリンと遊ぶ為の優先権を得られたらしく、ホクホク顔で帰っていった。


いや、大事な話とかないから。


飯食って帰るだけだから。


ってか、俺の彼女になりそうな女性紹介してくれよ。



ファミレスに入り、お互いにそれぞれが注文を済ませ、料理が来るまでお互いのプラモを見せあいっこする。



「紅葉のは、相変わらず魔改造な量産機だね」


「そう言うクリリンのだって、相変わらず主人公機いじり続けてんだな?  ってか、モブな俺には量産機がしっくりくるんだよ」


「ぷクククククク──  ワンオフの量産機って、もう、主人公機じゃん」


「ちげーし。  量産機だから量産できるし。  量産機は主人公機と違って、数の暴力こそがチカラだし」


「アハハハハハハ──  そうだねぇ。  当に今の世の中はそんな感じだしねぇ」



こんな感じで他愛もない話をしつつ、続けてお互いの改造ポイントを自慢しあいながらご飯を食べる。



「ホント久しぶりだねぇ。  3年ぶりくらい?」


「ん。  多分そんくらい」


「お互い、あっという間に大学卒業間近だね」


「だな。  って言うか、クリリン卒業できそう?  防衛大卒業するのってやっぱ厳しいの?」


「みんなそう言うけど、僕はそうでもないかな?  ちゃんとストレートで卒業できるよ」



クリリンはそう言いながら笑顔を見せるけど、



「……なんか、あった?」



目があまり笑ってなくて、笑顔に影があった。



「まぁ、ちょっと……」



って言いながら、さっき迄の明るい感じとは違って、明らかに浮かない顔になるクリリン。



「愚痴とか溜め込んでいる事があれば、取り敢えず、話聞くくらいはできるから」


「………………うん」



言うか言わないか考えてるのか、オレンジジュースを飲んで喉を潤し、



「ちょっと……  相談があるんだ……」



意を決したかの様に重そうに口を開いた。



「僕の妹、って覚えてる?」


「ん?  穂花ちゃんだっけ?」


「うん。  穂花」


「なんかあったの?」


「………………」



真剣で、不安で、悲しげな顔で、遠くを見つめるイケメン。


そんな顔もイケメンがやると絵になってますですね。



「ちょと、問題があるって言うかなんて言うか……」


「問題?」



そう言えば、クリリンは重度のシスコンだったわ……


3つ下の妹大好き人間だったわ……



「クリリンのシスコンをウザがられてる感じ?」


「いや、僕、シスコンじゃないし」


「………………」



しかも、どう見ても、誰が見てもシスコンなくせに、本人は無自覚って言う、ヤベーヤツ。



「……んで、妹がどうしたの?」


「大学に入ってから、ちょっと様子がおかしくて……」


「そりゃぁ、流石に大学生になったんだから、お兄ちゃんのシスでコンな呪縛から抜け出したいじゃねぇの」


「違うから!  そんな呪縛なんて無いから!!」



流石は無自覚。


ナチュラルに否定を続けるシスコン。



「それで?」


「君、以前より更にコミュニケーション能力が低下してない……?  AI以下だよ……」


「否定はしない」


「して!?  流石に否定しようよ!?」


「いや、だってさぁ、基本、俺が普段から会話してる人間って、桜田と雫だぞ?」



無茶言うなよ。


アイツらとのコミュニケーションなんて、あって無い様なものだ。


寧ろ、マイナスになるわ。



「あー。  うん。  それはまぁ……」


「いや、諦めんな。  否定してやれよ」



クリリンですらも諦めてしまうレベルな奴ら。



「……んで、穂花ちゃんがどうしたん?」


「ちょっと様子がおかしくなっているんだ……」


「………………」



だから、シスコンな兄がウザいんだって。



「ずっとボーってしてたり、何かと会話してるみたいに虚空に向かって独り言を言ったりし始めて──」


「………………」


「──最近は、暴力的になったり、夜中に出歩いたり、生の肉を好んで食べたりとか……」


「……反抗期か?」


「いや、絶対違うでしょ?  そんな反抗しないでしょ?  君は親に反抗する時、虚空に向かって独り言言ったり、生肉を食べたりするの?」


「いや……  人それぞれに表現の自由はあるわけで、反抗する方法もそれぞれなわけで」


「えぇっと……  じゃぁ、君が言う様に、コレが穂花の反抗方法だったとして、もし君に、そんな変わった反抗表現をする妹がいたらどう思う?」



クリリンの質問に俺は、見えない誰かとお喋りをしながら、生肉を食べているって言う、架空の妹を脳内再生してしまった。



「………………」



無理。


絶対無理。


怖すぎる。



「怖い、っスね……」


「だよね?」



やっと理解してもらえたからなのか、



「ふぅう〜……」



めちゃくちゃ重苦しい表情になってため息を吐くクリリン。



「親も妹をいろいろな病院に連れていったり、種類問わずに医者にも診せたりしているんだけど……」


「効果ない感じ?」


「うん……  全く……」



本当に八方塞がりなのか、両手で目を覆って項垂れるクリリン。  



「聞く限りだと、よく、映画とか小説とかに出てくるヤツじゃん……」


「うん。  君が思っている事も言いたい事も分かるよ……  最近は、僕の親もそう思っているっぽくて、僕に隠れてそう言う関係のとこを探してるっぽい」


「だったら、なんで俺にこう言う話したん?  俺なんて、たんなるモブぞ?  無力な一般市民ぞ?」


「…………………。  僕はそう言うのって信じられないし、そういうのだと思いたくもない。  だって、科学が進歩しまくっている現代だよ?  現実だよ?」


「まぁ、気持ちは分かる。  でも、現実は小説よりも奇なりって言うじゃん?」



俺はクリリンにそう告げながら、左手の内側を隠す様にして右手の親指で左手の黒い線をなぞる。



いや、マジコレ。


実際、俺も魔法を使いたいと思って変なのに手を出したら、マジで変な事になってしまってるし。


桜田とか雫なんて、マジで俺より酷い現実離れな生き方始めちゃってるし。



「そうだけど……  でも、さすがにコレは……  だから、今日は紅葉の意見を聞きたくて」


「話を聞く限り、俺はソッチ系だと思うけど……」


「──っ……」



手で顔が隠れて見えないけど、クリリンは相当まいっているっぽい。


ってか、穂花ちゃんに何が起こってるか知らんけど、多分ヤバい感じのヤツだろう。


だってもうさぁ、俺が魔力を使えてる時点で、何が現実か分かんねぇもん。


それに、この前のイカれストーカーの事もあるし。



「……変な事頼むんだけど、良いかな?」


「え?  な、なんだよ……?  俺に金はないぞ?」


「一度、穂花に会ってくれない?」


「え?」



隠していた顔を出して、真剣な表情のクリリンと目があった。



「一度、紅葉が実際に穂花の様子を見て、感じた事を教えて欲しい」


「なんで、だよ」



俺が穂花ちゃんに会って何を感じ取れと!?


もし変な事言ったりしたら、絶対にシスコン兄さんに殺されるじゃん!?


ってか俺、殺されるでファイナルアンサーじゃん!?



「紅葉の感想を聞いて、僕も決心する」


「イヤイヤイヤイヤ──!?  決心ってなに!?  なんで俺!?  お前、他にも友達いんだろ!?  そいつらに頼めよ!?」


「他には頼めないよ……  こう見えても、僕には、紅葉みたいに裏表なく遠慮なく話しができる友達はいないんだ……」


「は?」


「自分で言うのもアレだけど……  僕の周りにいる人達は、僕の見た目にしか興味ないんだよ……  自分を着飾る為のアクセサリーや、獲物を呼び寄せる撒き餌にしか思っていない感じかな……」


「色々とヒデーなお前……」



イケメンはイケメンで、煌びやかな世界の中に、色々とグチャグチャドロドロしてる舞台裏とか何かがあるんだろうけど、



「完全に鬱ってんじゃん……」



脳筋思考で正義感が強いとは言え、優しくて豆腐メンタルなクリリンにとっては、自分の優れた容姿が呪いになっていたっぽい。


アニメや小説の鈍感系主人公みたいな、”ヒャッハー、何も気にせずゴーイングマイウェイ!” な感じだったら、こう言うのも考えなくてよかったのかもな。


ほんと、現実は、小説より奇なりだ。



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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