エレベーターさんは俺に容赦ない
エレベーターを降りて直ぐに出くわしたウP主さん。
なんか、世界のナニソレやら、ハコのどうのこうのやら、如何にも、我こそがこの世界の神的な管理者的な事を言っていた癖に、
マジか……
普っっっ通ぅぅぅにエレベーターに乗り込もうとしてて草。
「お出かけですか?」
「……おでかけ、です、ね……」
しかも、相変わらずウP主が俺を見る上目遣いは破壊力抜群。
胸の大きさもこれまた、四捨五入したら無いと言っても過言ではないくらいな俺好みな絶妙なチッパイ具合で、俺はウP主へと向ける視線の向きを、厭らしく思われない感じにする為に必死に調整中。
表層だけでも、色々と神経を使いながら視線の動きをピーキーに調整しなければいけないと言うのに、かたや深層では、俺の魂の奥底で厳重に封印されているDTと言う荒ぶる獣が厄災の様に激しく暴れまくっていて、封印を破って表へと出てこない様に大人しくさせるのに全神経を集中し、そんな感じだから語彙力や気の利いた台詞にまで余力を回せるはずもなく、スマホのお助けAI以下の受け答えしかできない有様。
「そうですか…… では、また、明日にでも……」
そんな言葉を告げる、少し儚げにハニカんでいる、ウP主の頑張っている笑顔にキュン死。
あぁ、可憐だ……
まるで、汚れを知らない、純白の羽を持った天使か、まっ白な習字紙の様だ……
俺は一瞬にして脳内で、
『アハハハハハ── 待てよ〜』
まっ白な習字紙を持った天使と一緒に、
『キャー♡ 捕まっちゃうー♡』
墨汁のついた筆を持ちながら、
『俺の筆捌きは凄いんだぞー』
『墨汁なんてイヤー♡ ちゃんと、貴方色に染めてよー♡』
緑豊かな牧場で追いかけっこしながら遊んでいたのだが、
「千羽 紅葉。 早う前へ進め」
俺の背後に居たイカれストーカーによって
「………………」
現実へと連れ戻された。
クソが……
「あ、お友達ですか?」
「え? あ、その…… えぇっと……」
ってかなんか、まるで、今カノと元カノに囲まれた修羅場な雰囲気みたいな、リア充なモテ男のお約束なシチュエーションみたいな感じになっているけど、実のところの現実は、
──眼前に初代不法侵入者。
──背後に2代目不法侵入者。
とても残酷で、テーゼ係の天使は仕事を須く放棄していた。
そして、
「──!?」
「…………………」
お互いに目と目が合った彼女達。
一瞬にしてクッソ重い空気が漂う。
んでもって、非リア充でモブな俺がそんな彼女達の間に挟まれてどうこうできる訳もなく、とにかくクッソ居づらい。
って言うか、仕事に忠実なエレベーターが、さっきから何度も何度もガっコンガっコン言いながら、俺に当たってはドアを引っ込めてを繰り返している。
「貴女は……」
「ほぉう……」
そんな空気同然となっている俺を無視して、2人がお互いに何かを感じた様子で、この場から動かずに睨み合っているけど、
ガっコン──
ガっコン──
そんなの知るかと言わんばかりに、仕事に忠実なエレベーターさんは、俺に一切の容赦がない。
しかも、
ビ〜〜〜〜〜──
エレベーターさんは、ある時間が経過するまでドアが閉まらないと言う異常を知らせる警報音でもって、俺を完全に排除する為に捲し立てに来やがった。
こんな嫌でも俺のストレスが上昇しまくる中、流石にエレベーターさんのビーとガっコンが煩すぎたのか、
「「………………」」
空気な俺に無言で視線を向けた2人が同時に移動を始め、
「──っ!?」
俺も便乗して慌ててエレベータから降りた。
そんでもって、完全に俺を無視して距離を取って向かい合う2人。
「新たなハコ、か?」
「そう言う貴女は、ハコの使い……」
ナニコレ……?
なんか知らんけど──
──逃げるチャンスだ!!
って事で、チカラのかぎり猛ダッシュ。
走る度にビーサンがペっタン、ペっタン煩いけど、足を止めても、振り返っても死ねる!と身体に言い聞かせ、脇目もくれずに大学に向かう。
………………
…………
……
…
なんとか無事に大学に到着。
「ハァハァハァハァ──」
いくら家から大学が近いって言っても、真夏日の炎天下の中、しかもビーサン装備と言うデバフが掛かりながらの休みなし全力ダッシュはマジで死ねる。
煩い呼吸を無理矢理落ち着けようとするけど、肺が新鮮な空気を取り込もうとして、熱くて乾いた息がとめどなく出てきて、俺の喉をカラカラのカピカピにビフォーアフター。
呼吸を荒らげ、フラフラした足取りで近くにあった自販機から即座に水を購入し、
「ングっ── ングっ── ングっ── ングっ──」
ノンストップで一気に喉の奥に流し込む。
「ぶはぁぁぁぁ──!!」
しかし、暑さやら緊張やら諸々のせいで喉が潤っている感じが全くしないプラス、一気に飲んだ水のせいでお腹がタプタプ。
そんでもって時間差でジワジワと大量に吹き出てくる汗。
Tシャツの裾から手を突っ込んで掌で水を切る様に、大量に吹き出てくる汗を何度も払いながら、2本目の水を購入し、雫との待ち合わせ場所へと向かう。
イカれストーカーには雫との待ち合わせ場所は教えてないから、此処までくれば大丈夫だろ?
と、軽く緊張を解いて2本目の水をチビチビ飲みつつ、今日は珍しく人気がない大学の敷地内を日陰伝いで涼みながら歩いていたところ、
「ぇ”──!?」
何故か、
「言うたであろう──?」
目の前にイカれストーカーが立っていた。
「──妾はお主から離れぬと」
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