そうしよう!
心の中で、必死になって大声でド○えもんに助けを呼んでも来てくれる訳もなく。
なんなら、お約束どおりに、泣きつきながら直接助けを求めに行かなければならない訳であって。
でも、目の前にいる不法侵入してきたイカれは、俺が何処かに助けに行くのを許してくれるかどうかは定かでない訳で。
雫が電話でこっちに向かってるって言ってたけど、
「………………」
ぶっちゃけ、マジで待てん。
と言うよりも、此処で目の前に居るイカれと2人きりって言う状況が嫌すぎる。
って事で、
「5分だけ、ちょっとそこまで助けを求めに行っても良いっスか?」
コンビニに行くノリで正直に聞いてみたところ、
「良いが、お主が助けを求めた其奴は、死ぬのが生温いと思える程の事になるが、それでも良いか?」
って言われた。
ナニソレ……
でも、俺は幼少期にゲームをやり始めた当初から『命大事に(メインキャラのみ)』で通しているから、
「じゃぁ、ソレで……」
って言ったら、
「その腐った心根も堪らんのぉ」
「………………」
ってな感じで、逆にギャップ萌えされた。
ギャップ萌えされたのか?
って事で取り敢えず、ここにきて俺は究極の2択を得ることができた。
①魔法少女アニ豚、桜田を生贄にして生き延びる。
②クソジャイアニズムアル中、雫を生贄にして生き延びる。
うん。
どっちでも良いや。
寧ろ、この2人を一度に捧げよう。
素晴らしく好戦的な異能を得た、あの人類最強ツートップにかかれば、きっと、俺が助かる事間違いなし。
モブな俺は戦闘力とか皆無だしな。
スカウターで2桁いけば御の字だ。
ってかもう、丸投げでいいや。
うん!
そうしよう!
「して、どうする?」
「………………」
俺が究極の選択をしている中、ソファーで片肘をついて優雅に寝転がっている女性。
どんだけ俺ん家のソファー気に入ってんだよ?
寛ぎすぎだろ?
いや、気持ちは分かるよ?
俺もこのソファーで寝るの凄く好きだから。
3ヶ月かけて色々な所を回って、めっちゃ厳選したかいはあったよ。
だから、
「………………」
せめて靴は脱いで欲しいよね。
ってか、一度気になってしまったら、もうソファーの上に乗せられている靴しか視界に入らなくなったし。
「……あ、じゃぁ、生贄を紹介する方向で、良いですか?」
大事なソファーに乗せられた土足が気になりすぎて、助けを求めるじゃなくて、思わず生贄を紹介するって言ってしまった。
「良い良い。 生贄だろうが助けだろうが、妾はお主を御せられるのであれば何でも良い。 前菜とでも思って堪能するとしようぞ」
「………………」
アレ?
「え、と…… 助けを求めたら、俺、助かっちゃう感じだと思うんスけど……?」
「ふむ、ソレはないのぉ」
アレアレ?
「お主が何処ぞの某に助けを求めたところで、この妾を滅ぼす事などそうそうできぬよ」
「え?」
それは流石に無いっしょ?
なんつったって、魔法少女(アニ豚)と忍者(アル中)による、夢の共演ファンタジー最強ツートップだってばよ?
「つかぬことをお聞きしますが…… 貴女様はそんなにお強いので、ございますなのでしょうか?」
「うむ。 強いと言うか、妾は死ねぬ体質でのぉ」
「………………」
え?
マジ?
え?
ナニソレ?
え?
「まぁ、それ故、一生お主に憑き纏うことは妾の中では決定事項よのぉ」
「………………」
【悲報】俺ちゃん、不法侵入者からストーキング宣言を受ける。
「そして、お主が助けを求める者達を、尽くゆっくりとジワジワと嬲り甚振り、蹂躙し、お主が仲間に、世界に、己自信に絶望していく様を堪能しながら、最後に食すと言う腹積もりぞ」
【悲報】俺ちゃんのストーカーがものすごいメンヘラすぎる。
「いえ…… ソレはちょっと……」
ヤバいやろ……
コイツ、マジでヤバすぎるやろ……
カマキリの雌よりヤバすぎるやろ……
「妾がそう思ってしまう程、お主は妾にとって極上の糧と言う事よ。 どこまでお主の絶望が熟れるのか、ホント、今から楽しみよのぉ」
「……随分と、長期的で崇高なご計画を立てていらっしゃるん、ですね……」
アレ~?
何だろな~?
ナニ聞かされてんだろなコレ~?
ってか俺の耳、ちょっと腐ってんのかな~?
おーい、俺の耳〜。
ちゃんと働け〜。
「因みになんスけど…… ちょっといいっスか……?」
「ん? 申せ」
「ゆっくり、ジワジワって言う部分なんスけど、時間的にどれくらい、なんスか?」
いや、これはアレだよ?
他人を犠牲にして自分だけ少しでも長く生き延びたいとかじゃなくて、俺から放たれてるって言う、メシウマ臭ってのはどれくらい続くのかなってアレだから?
大事だから2回言うけど。
決して、自分だけ生き延びたいってのとは違うから!
誰と無しに心の中で言い訳を垂れつつ、期待を込めて女性を見る。
「うーん。 贄の頑張り次第によるとしか言えんのぉ」
贄って……
頑張り次第って……
一体、ナニを頑張らせられるのかな……?
ものすんごく気になるけど、
『紅葉さん。 紅葉さん。 あまり深く聞かない方が精神衛生的に良いですよ〜』
と、俺の中のゴーストが優しく囁いている。
「そこをなんとか。 大まかでもよいので、数字的に教えてもらえると……」
プリーズ・ティーチ・ミー!!
聞かずにはいられ、な、い!!
「繊細に優しくであれば2週間程、普通だと2日程、容赦なく激しくとなると2時間程度と言うところかのぉ?」
「──っスか……」
いや、どんだけ2って数字が好きなんだよ。
ってか、2と2の差が半端ねぇよ。
甚振られるヤツ、たまったもんじゃねぇな……
俺は、”2” と言う沢山の可能性を秘めた数字に恐怖しながら、心の中で桜田と雫に合唱しつつ、再度決心した。
「じゃぁ、取り敢えず一回、助けを呼んでみたいと思います」
「ほぅ」
なんか、色々な感情が混ざった視線を向けられたけど、
「じゃぁ、ちょっと準備するんで」
って事で、雫に電話する。
「あ、オレオレ。 そうオレ。 紅葉」
って言う、いかにも人を騙す時に使うであろう胡散臭い常套フレーズから始まって、
「お前、今どこ? え? 向かってる? マジ? そんじゃ、取り敢えず大学のグラウンドのベンチんトコ集合で良い?」
生贄の宅配先を指定する。
「え? オレ? 今んとこ大丈夫かな?」
確かに、今んとこ大丈夫ではあるが、それは俺だけじゃなくお前もなっ!!
「おう、そんじゃまた後で」
無事、生贄の配達指定終了。
「って事で、フレッシュで生きの良い助けを求めてみました」
「うむ。 生きが良いのは素晴らしい。 まぁ、生き足掻くのに綺麗も汚いも等しく関係ないと思う故、妾はお主の柔軟な生き方を好ましく思うぞ」
なんか、褒められた……?
いや、ディスられてんのかコレ?
そんな感じで、俺はこのイカれた訪問者と一緒に、寝起きの着の身着のまま(着替えは許されなかった)な、下は水着で上はTシャツ、足下はビーサンで、肩から襷掛けで鍵と財布を入れた小さなポーチをぶら下げてると言う、スーパーラフな格好で家を出た。
………………
…………
……
…
しかし、家を出て、エレベーターで1階に到着したところで、
「あ…… 千羽 紅葉クン」
サイトのウP主とばったり会った。
「あ…… ウP主さん……」
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