イキった結果がコレでござる(2)
葵ちゃんが復活した。
って言うか、なんか、気合が入ってて、その大きな背中に、胸の辺りとかお腹の下とかがキュンキュンする。
抱きついてもいいかな?
いいよね?
むふぁぁぁぁぁ──!!
葵ちゃんの匂いだぁぁぁ──!!
マジでずっとこうしていたい。
でも、今はそんな場合じゃない。
眼の前に居るキモいアレは、私の勘がカナりヤバいって警笛を鳴らしている。
でも、凛々しい葵ちゃんもずっと見ていたい。
じゃぁ、どうする──
──そんなの言わなくても決まっている。
葵ちゃんと一緒に──
「こんなの、さっさと終わらせるでござる!!」
「そのイキだ葵ちゃん!! 私達の初陣を華々しく飾ろうぜぃ!!」
──アレをブッ殺す!!
葵ちゃんがメインで私もメイン。
主張するお互いが、高め合い、支え合い、助け合い、二人の不得意な部分を補い合うんだ!!
私は葵ちゃんを護るって決めたんだ!!
変身が終わった葵ちゃん。
いつ見てもモザイク塗れはウケるwww。
けど、変身した美少女な葵ちゃんがマジで可愛い。
ぽっちゃりで大きくて抱き心地が良い葵ちゃんも好きだけど、白くて細くて華奢な葵ちゃんも好き。
葵ちゃんの白くてキメ細かで綺麗で柔らかそうな頬に、思わず私の頬をスリスリしたくなる。
ハァハァハァハァ──!!
想像しただけでも、堪っ、らんんんっ──!!
でもっ!
それは、今じゃ、ない!!
眼の前のコイツをブチ殺してからだ!!
私が殺して葵ちゃんからご褒美貰うんだ!!
はぅあぁぁあ──!!
ご ほ う びぃぃぃぃ!!!
ご褒美の為に私も右手に爪を発現させて、葵ちゃんがどう動くのか、その、細くて白くて綺麗な一挙手一投足に集中する。
ホント、手足細っ!?
お尻小さっ!?
って違う!
ソコじゃない!!
連携を取るんだ!!
私がリードして、葵ちゃんがリードして、そして、肩を抱いて、抱き返されて、手と手が触れて、舌と舌が絡まりあって、そして、そして──
──違ぁぁぁう!!
今はそんなんじゃない!!
そんな私が敵より先に煩悩と必死に戦っている間に、
「アイス☆プリズン!!」
葵ちゃんが肉塊にワンドを翳した瞬間、肉塊の周りの空気が凍りついて、
──クソ!?
肉塊を瞬時に凍らせた。
──葵ちゃんに先を越された!?
このままではご褒美がっ!?
このままではご褒美が危ういと感じ、ご褒美への点数稼ぎの為に化け物に向かって急いで詰め寄る。
「葵ちゃん!! 火ぃぃぃいいい!!」
「ござる!!」
私の言葉に、葵ちゃんがすれ違い様に空中に篝火みたいな炎を発現させ、
「オっ──!!」
ソレを爪で引き裂いて爪に炎を付与しながら、
「──ラァぁぁぁぁああああ!!」
凍って動けない肉塊の腹に向かって炎の抜き手を突き立てる。
なんて完璧なコンビネーション!!
やっぱり、私と葵ちゃんの相性は最高だ!!
『イダァァっぁ──!!』
続けて、
「はよ死ねやゴラァっ──!!」
爪をブっ刺した状態から肉塊の中に向かって炎をブッパ。
『オ”ガァ”ァ”ァ”ァ”ァ”ァァァ──!?』
尖った炎が肉を抉って焦がしながら、覆われている氷を爆散させながら肉塊の反対側へと突き抜けて、
「──っシぃ!!」
骨を折って肉を潰す勢いで、思いっきり前蹴りを入れて爪を捻って引き抜きながら、後ろに跳躍して離脱して距離を取る。
さぁ!!
私をいっぱい褒めてくれ葵ちゃん!!
しかし、
「き、木梨氏…… アレ……」
「マジか……」
チっ──
抉った穴を補う様にして、他の箇所の肉が集まって空いた穴を塞いでいく。
しかも、肉塊から触手がウジャウジャ生えやがって、
『イダイ── イダイ── ゴロジデグレェェェェェェええええええ──』
肉塊の近くに居たモヤシの投網に捕らわれていた赤装束達を、
「ギャァァァァァ──!?」
「助けてく、がぁぁぁぁぁ──!!」
包む様に、飲み込む様にして触手が次々と取り込んでいった。
何て言うか、蛇に丸呑みされた小動物みたいなアレだ……
しかも、包みこんだと同時に内側で咀嚼する様に圧縮して潰しているのか、
「「「「………………」」」」
肉が潰れる嫌な音が周囲に撒き散らされた。
完全な化け物過ぎて、マジで草も生えん。
でも、早く葵ちゃんに抱きついたり頬ずりしたいから、
「──キモいからさっさと死ねっ!!」
炎の爪を振ってアンダースローに空を切り、蠢く触手を巻き込みながら炎の斬撃を食らわせる。
『アガァァァァ──』
斬撃に沿って肉が千切れて削れて焼かれるけど、
「回復が早いでござる……」
抉れて千切れて焼けた箇所からどんどん肉が盛り上がって、
『ゴロジデ──』
人間だった右側まで肉が広がっていった。
ってかもう、見た目が完全な肉団子な触手ヤローだ。
キモいっていうか、マジでキモい。
そんな触手な肉ヤローに向かって、
「千尋! 内側からの破壊を試みるぞ!」
「はい!」
今まで見ていただけのジジイとパパが私と入れ替わる様に、肉塊から伸びる触手を躱しながら瞬時に詰め寄り、
「フンっ!!」
「ハァあああ!!」
掌底を肉塊に当てた。
『ごゔぁ”ぁ”ぁっ!?』
掌底を当てられた部分が思いっきりヘコむわ、踏ん張った足の地面が少し陥没するわで、
「ウハっ!!」
ってか、何だソレ!?
殴った音がクッソヤバいぞ!?
私生活では見たことがない、ジジイとパパの強烈な一撃。
大型トラックが巨木に突っ込んだみたいな、無機物と有機物が激しく衝突したみたいな重くてイカれた音。
クソが……
あいつら、今までネコ被ってやがったのか……!?
ジジイとパパが放った、たった1撃の掌底に戦慄が走り、更なる高みがある事が嬉しくて、生まれて初めて魂から震えた。
掌底を食らった肉塊が一瞬膨張し、水が入った風船にいっぱい穴をけたみたいな感じで身体中から血がピュぅって吹き出した。
触手も萎えた感じでダルンダルンになって動かなくなってるし。
もう、見た目は肉な感じのモンブラン?
アレはマジで生身で食らいたくないな……
ってか、ありゃぁ、流石にもう死んだだろ……?
クソ!
葵ちゃんからのご褒美がっ!!
ご褒美が掻っ攫われてイライラしながらも、容赦ないジジイとパパの一撃に恐怖を感じていたら、
「アイシクル☆ボムっ!!」
葵ちゃんが追撃した……
「………………」
可愛くて凛々しい顔でワンドを肉塊に向けて佇む葵ちゃん。
でも、何も起こらない。
「「「………………」」」
ジジイとパパもこの後どうして良いのか分からないのか、一応、肉塊に向かって構えながら、横目で葵ちゃんをチラ見して立っている。
失敗か?
うん。
失敗した葵ちゃんも可愛いな。
しかし、
「ウハっ──!?」
「なっ──!?」
「うわぁ──!?」
いきなり肉塊の内側から無数の氷柱が肉を破って貫いて生え出てきた。
「燃やしてダメなら、完全に凍らせるでござる!!」
『アギャァァァァァァァァァァァァ──!!』
内側から身体中に氷のトゲトゲを生やしながら、みるみる内に凶悪な見た目で凍りついていく肉塊。
しかも、最後の断末魔のオマケつき。
マジでエグい……
あの様子じゃ、内側から細胞レベルで凍ってんじゃね……?
「「「………………」」」
ってか、肉塊、完全沈黙。
葵ちゃん、マジでヤバすぎ……
こんなん、最強じゃね……?
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