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イキった結果がコレでござる(1)

──時間は少し遡る──


早朝、東京タワーの地下駐車場のとある箇所に、数台の真っ黒なバンが停まった。


停まったバンから物々しい装備に身を包んだ者達が足早に降りて来る。


その姿は、何処ぞの特殊部隊の様な真っ黒な格好で、そんな物々しい雰囲気の中、



「ヒャッハー!!  コレコレこう言うの!!」



頭の悪そうな声が駐車場内にこだまする。



「バカ孫!?  大声を上げるな!!」


「雫!?  シっ!!  静かにっ!!」



そして速攻で怒られて、周りから痛々しい視線を向けられる。



「んだよ!?  こんなん、テンション上がってナンボだろうが!!  なぁ、葵ちゃん?」


「オェップ──」



対照的に、メガネの太っちょは顔を青ざめさせながら、今にも嘔吐しそうな程に頬袋をパンパンにさせていた。







紅葉氏が帰った後、僕達は赤装束のアジトでの出来事をパパさん達に話し、急遽、こうしてまた、東京タワーの地下駐車場にやってきたでござる。


あの場では、僕は世界の平和を護ると決めたのでござるけど、厳つい装備を着込み、此処に来る迄の間に色々と怖くなってしまったでござる……


木梨氏はテンションが爆上がりしてるでござるけど、僕はストレスで吐きそうでござるよ……


やっぱり、紅葉氏が正しかったのでござろうか……



等と考えている内に、準備を終えた皆んなで赤い扉があった場所に向かって行ったでござる。



僕が粉にした扉の上を跨ぎ、奥へ奥へと進んで行く。


配電室の更に奥にある、地下鉄の出入り口みたいな感じの、下に続く長い階段。


何処までも続いていそうな、ずっと真っ直ぐな一直線な事も驚きだけど、それ以上に、



「なんだコレ!?」


「こ、コレは!?」



まるで、下からナニかが外に出ない様、階段を徹底的に封印するかの様に、等間隔で四方八方に突き刺さりまくっている、沢山の真っ黒な剣。


先日、僕達が逃げながら、ビビリな紅葉氏が執拗にブっ刺したモノのでござる……


と言うか、



「あのクソモヤシ。  全然ダメじゃん……」



木梨氏が指摘する様に、天井や壁に刺さっていた筈の剣が全て抜けて下に落ちていたでござる……



「自重で抜けたのでござるな……」



だから、ブロックにして壁を建てろって言ったでござるのに……



「なんだコレ……?  剣、か?」



そんな、抜け落ちて階段に転がっている紅葉氏の剣をお爺さんが持ち上げようとするも、



「ふぐぅぁあ!?」



案の定と言うか何と言うか、



「なんて重さだコレ!?」



やっぱり、お爺さんでもクッソ重くて持ち上げられないらしいでござる。


パパさんも試したけど、



「おっも!?」



少しも持ち上がらないでござる……


ホント、あんなクッソ重い物をビュンビュン振り回している紅葉氏は、マジでアタマおかしいでござるよ……



そんなこんなで、自重で落ちた剣によって空いた隙間を進みつつ、僕達は、赤装束や変な触手野郎と戦った広場に到着したでござる。


皆んながハンドライトで照らす明かりの中に現れたのは、



「………………」



自分たちでやっていておいてアレでござるが、



「此処で、一体、何が起きたと言うんだ……」



そこはまるで、



「これは……」



戦争でもやっていたのかと疑いたくなる様な、地面に残る沢山の黒い焦げ跡。


墓標の様に地面に突き刺さっている黒い剣。


人の形をした氷の彫刻。


投網がかけられ、動けずにうめき声をあげる赤装束達。


そして、



「あっ!?  葵ちゃん!!  あのヤローがいねぇぞ!?」



剣に押しつぶされ、途中で千切れながらもビチビチと動く、大きなミミズみたいな、臓物みたいな何か。



「──!?」



直後、



「木梨氏ぃぃぃいいい!?  アレっ!!」



闇の中から現れた、千切れた肉塊の主。



「って……  なんなんだアイツ……」



この前までは片腕だけだったでござるが、



「ば、化け物で、ござる……」



左半身を肥大した肉塊に覆われ、



『コ” ロ” シ” て” ク” レ”──』



どう見ても人間とは思えない姿に変貌した、この前の触手なヤツ。


怠慢に動く右足で、左半身の肉塊を引き摺りながら重そうに歩き、涙ながらに嘆願する様にこっちに向かって右手を伸ばしているでござる……



そんな化け物を見て、全員の動きが固まり、顔が引き攣っているのが薄暗い中でもなんとなく伝わってくるでござる。


そして、



「──各位!  全面の化け物へと照準を合わせ発砲っ!!」



指揮官の号令と共に、サイレンサーが付いたマシンガンから発せられる複数の乾いた音とマズルフラッシュ。


一緒に、ビチュビチュバチュバチュと、肉が弾け、血が飛び散る音。



「──オロっ──!?  オロロロロロロロロロ──!!」



その光景を見て、音を聞いて、僕は堪らず嘔吐した。



こんなの、僕には、無理で、ござる……


紅葉氏が正しかったでござる……


モブはイキっては駄目なんでござる……


モブがイキった結果がコレでござる……



オロロした僕に木梨氏が駆け寄って背中を擦ってくれているでござるが、



「あんなん一人で倒した日にゃ、新米ペーペーの私でも、組織内ランクアップ確実だな!!」


「──ブヒィっ!?」



背中を擦りながらも目をギラつかせ、化け物を嬉々として見ている木梨氏にドン引きでござる!!



未だに続いているマズルフラッシュで、暗闇に沢山の赤い火花が飛び散る。


映画の中だけの世界と思っていた光景が、こうして現実で、しかも目の前で起こっているでござる。


当に、生き死にの世界。


紅葉氏を馬鹿にし、忠告を無視し、あれだけ自分が世界を救うと豪語しておきながら、いざ、その時になったら、恐れて立てずに、一人だけオロロでござる。



こんなの──



「──違うでござる……」



魔法少女は、もっと勇敢で、何者にも怯まないでござる!!


そう自分に言い聞かせ、自分を鼓舞して立ち上がる。



「木梨氏。  ありがとうでござる」


「お?  葵ちゃん復活?」



オロロして、スエた匂いを発するこんな僕にも構わず優しく接してくれる木梨氏。


こんな時にも人目を気にせず抱きつかれるのはアレでござるが……



「こんなの、さっさと終わらせるでござる!!」


「そのイキだ葵ちゃん!!  私達の初陣を華々しく飾ろうぜぃ!!」



そして、懐に大事に仕舞っていたワンドを取り出し、



「輝け月!  煌めけ星!  照らすは太陽!  望むはマジカル!  顕現せよっ──!!」



暗闇の中へと高々と掲げ、



「──マッダ☆レぇぇぇナァァァぁぁぁああああああ!!」



自分を鼓舞し、敵を撃ち倒す為に咆哮する。




お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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