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俺の理想的な始まり方

部外者は帰れ的な事になったから、俺は喜んで帰った。


ぶっちゃけ、さっさと帰って寝たい。


眠たすぎて死ねる。


電車を乗り継いで帰っている途中、半分眠りかけている頭でフと思う。



あいつら、あの痛いサイトの事言うのかな?



アル中と豚は自分達の武勇伝をドヤっていたけど、



『異能持ちだったのか?』



とか、



『その異能はいつ現れた?』



とか聞かれたら、アイツらはなんて答えるんだろ?


サイトの事とか言うんかな?


まぁ、部外者な俺にはもう関係無いんだけどな。


って言うか、パパさんは、俺から理力なるモノがダダ漏れしていて、しかも桜田達より量が凄いって言っていたけど、そんな俺をあの場ですんなり返しても良かったのか?


一応、俺も異能があるって事も言っちゃったんだけど……


それでも俺がすんなり帰れたって事は、別にソレはソレで問題ないって事で、俺に都合が良い方向で考えておくか。


まぁ、良くも悪くも、朝、俺が立てたフラグは無事に回収できたし。


ってか、豚は自分で立てたフラグのポールを、ちょっとやそっとじゃ折れない程の高層ビルクラスにまで昇華させて進化させやがったけど……


結局、あの豚は一体ナニに対してあんなにキョドってたんだろうな?


もう、これに関しては豚の自己責任って事で後は知らん。


あえて渦中に首を突っ込もうとするアイツらの事とか俺には全く理解できないし、ってか、どうでも良いわ。


俺が平穏ならソレで良いや。




ってな事を考えている内に、家がある駅に到着。


色々と思う事がありすぎて、電車の中で全然寝れなかった。


ついでに駅前にある牛丼のチェーン店で軽く昼ごはんを食べ終え、後は家に一直線。


帰路は真夏日の暑さと眠気のせいで、身体も心も重く感じる。


さっさと家に帰って、今日は惰眠を貪ろう。


平穏を望むモブな俺の夏休みなんて、適度にダラけているくらいで丁度良いのだ。


あ、プラモ作りたいな。


………………


…………


……











家に到着。


エアコンを点けた涼しい部屋のソファー上で、ゴロゴロ、ダラダラする為の怠惰な気持ちと身体の準備は、帰路についた時から既に整っている。


ドアの鍵を開ける。


靴を脱いで、いざリビングへ。


ガチャリと玄関からリビングに繋がるドアを開ける。


そして──



「あ、おかえり」


「………………」



──俺は固まった。






………………は?








部屋は既にエアコンで涼しくなっていて、



「外、暑かったでしょ?」



知らない女の人が俺の家のソファーで寛いでいて、



「アイス買ってきたから食べて良いよ」



漫画を読みながらキッチンを指さされ、



「え?  誰?」



この、不思議な状況に思考が全く追いつかない。


完全に呆けた馬鹿面で立ちすくむ俺。


鏡で自分の顔を見なくても、容易に脳内再生できる程に、今の自分がどんな顔をしているのか想像できる。


そんな不思議な顔な俺を見て、なんの驚きもリアクションもせずに、まるで自分の家に居るかの様にソファーでダラけて漫画を読んでいる女性。



「いや……  此処……  俺ん家、だよ、な?」



部屋の中を見回すも、どう見ても此処は俺ん家で間違いない──



──筈なのに、



「そだよ」



見知らぬ女性は俺が正しいと肯定しながらも、



「え?  だよ、な……?」



我が物顔で俺ん家でダラダラと寛ぎ続ける。



「ってか、マジで、誰?」


「うん。  もうちょっとで読み終わるから待ってて」


「………………」



自由かよ!?



怒りで思考が回り始め、急いでポケットからスマホを取り出す。


そして、警察の助けを求める為に八千流木さんへと電話をかけようとしたところで、



パンっ!!



「あだっ!?」



漫画を読み終えた女性がソファーから立ち上がり、



「お待たせ」



俺がスマホを持つ手にクッションが投げつけられた。



「そして、はじめまして、千羽 紅葉クン」



そんでもってクッションに当たった勢いで、俺の手からスマホが落ちる。



「まぁまぁ、一度落ち着いて私の話を聞いておくれよ」



人ん家に勝手に侵入し、完全に俺のスマホを狙って落としておきながら、屈託の無い笑顔を俺に向ける女性。



「落ち着いて話を聞くも何も、誰だよアンタ?  ってか、どうやって俺の家に入りやがったのですか?」


「そこは、アレをアレして、チョチョイのちょいっとですね~」


「………………」



イヤイヤイヤイヤ!?


そんな説明とかマジで怖すぎるしっ!!


ってか、何しに俺ん家来たし!?



犯罪者面で、身の危険を感じる様な凶器を持っていてくれた方が色々と覚悟を決めれたと思うけど、いかんせん顔もスタイルも俺好みだし、歳も俺と大差ない様に見え、逆に違うベクトルの恐怖が俺を襲う。



「私はね、色々とキミに伝えなければならない事があるのだよ」


「いや……  俺も急いで警察に伝えたい事が山ほどあるんですが……」


「うん。  私はソレは全力で阻止しなきゃいけないな」



マジでアウトなヤツじゃん……



コレはガチで、とてもヤベーアレなヤツって事で、女性と話しながら、足元に落ちたスマホをチラ見して探すも、見当たらない。


思うに、クッションの下にあるっぽい。


そんな俺のチラ見に気づいたのか、女性がクッションをチラチラ見ながら俺に近づいてくる。


女性との距離は俺が手を伸ばせば届きそうな所まで縮まり、



「だから、通報はダメなんだって。  って事で、コレは一旦、没収するよ」


「え?」



女性はスマホを持った手を俺の顔の前でヒラヒラさせて、



「は?  俺のスマホ?」


「そうだよ。  はい、没収~」



徐ろにロングスカートのポケットに仕舞った。


女性がポケットに仕舞ったのは、見間違う筈がない俺のスマホ。


限定プラモを買った時に付いてきた、数量限定特典なスマホケース。



は?


さっき床に落ちたはずだろ?


クッションの下にあった筈じゃ!?



驚いている俺に向かって笑顔で更に近づいて来る女性。


俺の方が身長は高く、俺の顔を覗き上げる様な下からの上目遣い具合がなかなかヤバい。


萌キュン死ねる。



ナニこの、友達以上、恋人未満な距離!?


ってか、マジで誰っ!?


ホントどちら様ですかっ!?



「それじゃ、先ずは私の話を聞いておくれ」



そして女性はササっと俺の背後に周りこんで、



「ちょっ──!?」 



俺の背中を強く押し、



「──ちょっとぉぉぉおおお!?」



入り口付近から無理矢理移動させられて、そのままソファーに座らせられた。



「キミには色々と知って貰わなければいけないから、ちゃんと私の話を聞いておくれよ?」



女性はソファーに座る俺の前に立ち、妖艶な顔で俺を見下ろす。



「ななななななな──!?」



──ナニが起こるのコレからっ!?



もしかして──


──素人ドッキリ企画モノ的な、アレな感じなのか!?


マジックミラー張りの車なアレに取って代わる新しいヤツなのか!?



勝手に家に侵入された怒りよりも、俺のムスコがオッキしそうなシチュエーションを想像してしまってドキドキが止まらない。


コレが俗に言うハニートラップと言うヤツなのか!?





説明しよう。


ハニートラップとは──


【──《甘い罠の意》(主に、女性の諜報員が男性に仕掛けるものを言う)であり、機密情報などを得る目的で、スパイが色仕掛けで対象を誘惑したり、弱みを握って脅迫したりする、諜報活動のことである】





ってな具合に、下半身に向かって自動で勢いよく流れ出した血流を、知っている蘊蓄で意識を別の方向に向け、冷静になろうと試みる。


しかし、いくら活字や堅い言葉で気難しく脳内に並べ立てたところで、結局、言いたい内容は同じだったから、余計に想像が膨らんで興奮してしまった。



活字恐るべし!!



しかも、この状況に刺激されてつられたのか、スッカリ忘れていた、昨日の八千流木さんのお胸様の感触を思い出してしまった。


そんで、余韻を思い出すかの様に、勝手にワキワキと動いてしまっている俺の手。



童貞な俺!


完全撃沈!!


無念!!!



ハニートラップ恐るべしって事で、もうソレで良いやと、そっち方面で覚悟を決める。


きっとこの女性は、汚れを知らない俺のピュアなハートを盗みに来たのだろう。


であれば、お望み通り、盗まれてやろうじゃぁ、ない、かっ!



さぁ!!


俺の覚悟は決まったぞ!!


バッチ来いやぁぁぁあああ!!



さっき迄の不安以上に、やましい期待が浮かぶ視線を女性に向け、”よろしくお願いします”と、居住いを正す。



全く経験が無い不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします!



「うん?  なんか、急に大人しくなった?」



急変した俺の態度に気づいたのか、女性は小首を傾げる。



「まぁ、ソレならソレで早いとこ済ませてしまおうか?」



そして、身を屈めて俺の股間の辺りへと顔を持って──



「──っ!?」


「よいしょっと」



──いかずに、対面にあるローテーブルに腰を下ろした。



「………………」


「んん?  なんでそんな残念そうな顔してるのかな?」


「………………」



イヤ!


まだだ!!


コレから始まるのだ!!



「先ずは自己紹介をさせてもらおうかな」



ほう。


先ずはお互いの名前から知ろうって事か。


俺的には、知らなくても、お互いをコードネーム的なアレで呼び合うってのも悪くはない、がっ!



「私は、この世界を管理する者、って言って伝わるかな?」


「んん?」



この世界を管理する者?


そう言う設定でキャラロールとサービスする感じなのか?


ってか、こう言う業界ではやっぱり二つ名とかコードネーム呼びが基本なのか!?



「いや……  それって名前じゃないよね?  別に、俺はそれでも良いけど」


「うーん、名前って言われても……  良く言われてるのは、神様とか、主とか、指導者、とかかな?」



マジか!?


ソレは俺が未だに知らない世界(性癖)だぞ!?



「いや、ソレは、敬称とかポジション名であって、名前じゃないだろ……」


「それはまぁ、後で考えるとして、先ずは、君にこの世界の事について知ってもらうのが先だよ。  まぁ、この世界の事を知ったら知ったで後戻り出来なくなっちゃうんだけど。  大丈夫だよね?」



ナニっ!?


ソレを知ったら後戻り出来なくなるですって!?


普通じゃ物足りなくなっちゃう系になちゃうのでございますかっ!?



「私としても拒否権をあげたいのはやまやまなんだけど、どうやらキミには素質があったみたいなんだよ」



拒否権無し!?


そんな、強引な!?


しかも、俺に素質があるだと!?


イヤイヤイヤイヤ!


どっちかって言うと、俺は攻められるより自分から攻めたい系だと自負してたんだが!?



「ソレで、今風に言うと、最初のチュートリアルって感じで、私がこうして色々と教えに来たって訳なんだよ」


「な、ナニを……?」


「使い方とか、かな?」



え!?


ナニか使うのですか!?


それとも、俺が使われる感じなのですか!?



「使い方ってナニ?  ナニを誰が使うの?」



平静を装って、あたかも興味が無い様に聞く。



「うん。  そうだね。  使うのは勿論キミで、使われるのは私の一部だね」


「はうぁっ!?」



が、女性の回答に理性が一瞬崩壊しかけた。



「ぶっちゃけ、俺、そんなの使うの初めてなんだけど……  大丈夫?」


「まぁ、一応問題ないかな?  キミの想像力次第?」



俺の想像力次第ってナニ!?


俺、こう見えて、想像力がとても豊ですよ!


経験の無さを想像力でカバーしますですよ!!



「痛くない?」


「最初は痛い場合もあるけど、慣れる?  かな?」


「そう、なん、だ……」



慣れるんですか!?


そう言うもんなんですか!?



「それじゃ、キミのポテンシャルを見る為に、此処で少し、私に ”キミの” を見せてくれるかな?」


「──っ!?  此処で!?  い、今!?」


「うん」



女性が目を輝かせながら俺を見つめる中、



「が、頑張ります!!」


「そんなに気合い入れなくてもいいよ」 



自分の見知らぬ新たな世界の扉を開く為、



「ここだと全力じゃ無理だろうからさ」


「は、ハイ!!」



期待と不安を胸に、



落ち着け!!


落ち着くんだ俺!!



焦らずに、且つ、スマートに、ズボンのベルトへと手をかける。



ノーマルな世界よりも先にアブノーマルな世界へと足を踏み入れてしまうとは、これもまた、俺の運命なんだろう。


だが、俺は、今日で大人の階段を数百段飛ばしで駆け上がるのだ!!


さぁ、見せてやろう!!


俺の内に秘められたポテンシャルと、豊富な想像力の数々をっ!!



「キミ……  何してるのかな?」


「はい。  俺の全てを見てもらおうと」


「ズボンを脱がなければできないのかな?」


「いえ、できなくもないですが、開放感は大事かなと」


「キミの能力はそんなんじゃないよね?」


「俺、初めてなので、逆に最初の出だしくらいはノーマルな感じから入らせてください」


「え?  何言ってるの?」


「大丈夫です。  ちゃんとあなたの言う世界と言うヤツも、直ぐにモノにしてみせますんで」


「え……  ちょ、ちょっと──!?」


「って事で、先ずは、俺の想像にある、『俺の理想的な始まり方』で入らせて頂きます」


「きゃっ──!?」




きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──!!




パン!!


パンパンパンパン!!



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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