小さなことからコツコツと!
──レッスン3──
放出した魔力を停滞、変形させてみよう!
お?
また急に応用編っぽいの来たぞ。
相変わらずいきなりすぎんだよ。
『ここからちょっと難しくなってくるよ! まぁ、人によっては簡単に出来ちゃうんだけどね!』
難しいっつったり簡単っつったり、一体どっちだよ。
『体外に放出した魔力はモヤモヤの霧みたいなもので、放出するとすぐに霧散して消えちゃったよね?』
はい。
そうでございましたが何か?
『体外に出た魔力は、吐き出された二酸化炭素みたいにすぐに霧散して空気中に戻ってしまうんだよ! 所謂、無意識の垂れ流しって事だね!』
呼吸で吐き出される二酸化炭素を無意識の垂れ流しって表現はどうかと思うぞ。
『体外に放出した魔力は空気中に溶けてしまうのが自然の摂理なんだよ! 酸素ボンベから酸素を出しっぱなしにしているのと同じだよ! そんな垂れ流し状態だと折角貯めた魔力がもったいないよね?』
勿体無いって言うか、また魔素を吸収して魔力を造れば良いんじゃねぇのか?
『霧散する側から魔素を吸収して魔力を常に補填し続けるって事もできるけど、それじゃ魔力の消費に対して補填が追いつかないんだよ! 魔法を使う時の魔力消費量は、魔力補填の約10倍くらいなんだよ!』
魔法を使うってそんなに燃費が悪いのかよ?
『でもでも、放出させた魔力は訓練で空気中に停滞させる事が出来るんだよ! 空気中に霧散しようとする魔力を少しでも遅らせて停滞させておく事ができたり、魔力を必要な分だけ放出できる様になれば、魔法を使う時に魔力の節約にもなるんだよ!』
出ました!
節・約・術!
『魔力を空気中に停滞させる方法は、魔力を体外に出す時に空気中で留めたい形をイメージするだけだよ!』
そんだけかよ?
難しくなるっつうから少し覚悟してたけど、マジでそんなんでイケんの?
『火の魔法で例えると、火魔法を発現させる為には、魔力と言う燃料に火の事象が付与されて燃焼をおこしているんだよ!』
おぉ!?
やっと魔法のお出ましか!
『魔力を停滞させずに垂れ流しの状態で火の事象を付与しちゃうと、魔力の霧散も加わってるから一瞬でその場で燃え尽きちゃうよ!』
あ、そう言う事?
『放出する魔力をイメージしながら停滞、変形させちゃえば、火の玉や火の槍として停滞させる事もできちゃうし、イメージ次第で魔力に指向性を持たせたりとか、爆発とか射出もできちゃうんだよ!』
いやぁ〜!
なんかソレっぽくなってきたぞぉ〜!!
『でも、停滞させる魔力は、ただ単に形をイメージして形成するだけじゃダメなんだよ!』
スワイプ。
『形だけをイメージした場合、取り敢えず垂れ流し状態の魔力を停滞させる事はできるけど、中までしっかりとイメージしなければスカスカのハリボテになっちゃうよ! そんなハリボテの魔力に火の事象を付与しちゃったら、薄紙に火をつけたみたいにコレまた一瞬で燃え尽きちゃうよ! 氷の場合はパリパリの脆い薄氷、水の場合は水溜まり以下の薄い膜って具合になっちゃうよ!』
コレまたなかなか難しそうだな……
時と場合によってはそういう風に使う場合もあるかも知れないけど、コレばかりは先ずはやってみないとだな。
いつもの俺ならここで勝手に試し始めていたけど、魔素呼吸の時に痛すぎる程に痛い目を見ているから、ここは我慢して続きを読んでいく。
ステイだ俺!
Be cool だ俺!
スワイプ。
『魔法は、放出する魔力のイメージ次第で可能性が無限にあるんだよ! ちゃんと細部までイメージして指向性を持たせてあげれば、魔法を生き物の様に操る事もできるんだよ!』
おぉ!?
ちょっとマジモノの魔導書っぽくなって来たぞ……!?
『でも、内側の細部までイメージをすればする程、それにあわせて魔力の消費量が多くなるんだよ! と言う訳で、さっきも記述した様な感じで、魔力の消費に対して補填が遅くなっちゃうんだよ! 魔力の放出は慣れや訓練次第でどんどん早く放出できる様になっていくけど、魔素の吸収、魔力の補填速度は魔力器官の大きさ次第になっちゃうからね!』
なんか、今までで1番それらしい事になってきたな。
『さぁ! イメージしながら魔力を放出させてみよう! 先ずは小さなモノからイメージして、徐々に大きくしていくのがコツだよ!』
小さなコトからコツコツと!
ってか。
他に何かアドバイス的なのが後に書いてあるんじゃねぇのか?
って事で、さっきの様に後から何か書いてあるんじゃないかと思って次のページに画面をスワイプさせるが、
「んあ?」
バグってんのか?
何故かページが次へと移らない。
何度も指でツイツイ〜って画面をスワイプさせるも、
「………………」
前のページに戻る事はできたけど、次のページには進めない。
「いきなりどうしたっつうんだよ……」
しかたない。
取り敢えずイメージしながら魔力の放出でもしてみるか……
魔力を放出させる為に、さっきと同じ要領で手の平に「の」の字を書こうと右手の人差し指を突き出す。
「………………」
が、左手にある黒い線を見て動きを止めた。
この手で魔力を放出させたらどうなるんだ?
左右の自分の手の平へと何度も行ったり来たりと視線を彷徨わせながら、俺はどうしようか考える。
取り敢えず、両手でやってみればいいか?
って事で、先ずは右手に「の」の字を書こうと指を乗せるが、
「アレ?」
「の」の字を書く前から手の平が少しポカポカしている様に感じる。
「……まさかな」
って事で、半信半疑の実験的な感じで、「の」の字を書かずに手の平に集中してみる事に。
「フンむぅ! むむむむむむ!!──」
モファぁぁぁぁ〜〜
──出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
手の平に「の」の字を書かなくても、何故か出ちゃったキラキラ光るモヤモヤ。
またまた出て来たモヤモヤに興奮冷めやらぬ俺。
そして、手の平から改めてモヤモヤが出た事で、さっきとは違って身体中に常に魔力回路が繋がっているのが分かった。
同時に、
「おふぅ……」
魔力器官から魔力が減ったのも感じられた。
うん。 またしても不思議な消失感?
さっきと同じ様に変な消失感を感じたけど、何故かさっきより消失感の感じが小さくなっている様な気がする。
さっき何回も魔素呼吸したからか?
気のせいか?
イメージをしないで魔力を放出したからか、魔力はさっきみたいに直ぐに霧散して消えた。
そして、霧散した魔力を見て気付く。
あ、イメージすんの忘れてた。
まぁ、左右の手で一回ずつ出してからでいいか?
って事で、次は左手で魔力を放出してみる。
ここも「の」の字を書かなくても出来そうな予感が。
左手の平から魔力が放出する様に集中。
案の定って言うかなんて言うか、手の平の線が「ぐわぁぱぁ〜」って開いて、悪役レスラーが毒霧を吐く様に、酔ったおっさんが酒気帯び検査で息を吐く様に、「ブばァ〜」ってな具合で魔力を放出?吐き出した。
「………………」
うん。
もう別にそれはいいんだ。
口って時点でどうせこうなるだろうって予感はしてたし。
そんな事よりも、左手の口から吐き出された魔力についてだ。
「くっろっ!?」
一言で言うと、なんて言うか、
真っ黒!
右手から出された魔力の色とは全くの真逆。
光が透過しているのかどうかも分からない程に真っ黒すぎて、手の平の口から吐き出された魔力のところに、ポッカリと穴が空いているみたいな感じになっている。
俺からこんなのが吐き出されたのかと思うと、マジでゾッとする……
けど、真っ黒なモヤモヤもキラキラのモヤモヤと同じなのか、直ぐに空気中に溶け込む様にして消えた。
違うところは、真っ黒なモヤモヤが消える時、黒塗りの所を消しゴムで消したら徐々に風景が現れたみたいな感じになっていて、コレでもかと言う程にモヤモヤの黒さを感じ取れた。
なんでこうなってるし……?
真っ黒な魔力を吐き出して元の線の様な状態に戻っている左手を見る。
コレ、絶対に魔素毒の影響だろ……?
右手と左手で放出した魔力の見た目が違いすぎる。
横にいる桜田に、「何ソレ?」って聞かれたら、「魔素毒です」って即答しても正解だと思う程に違いすぎる。
取り敢えず、ここで悩んでいても先に進まないから、一応、イメージして成形した魔素を放出してみる事に。
どっちの手でやるか迷ったけど、練習も兼ねて左右の手で交互にやる事にする。
先ずは無難に右手。
最初は小さなモノからって書いてあったから、取り敢えず四角錐、小さなピラミッドからイメージ。
って言うか、コレってイメージしながら出すのか?
それとも、イメージしてから出すのか?
重要と思われるそこんトコの記載が全く無かった事に対し、俺はこの魔導書(本物?)の雑さに苦笑が溢れた。
ホント雑だな。
お読みいただきありがとうございます。
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