マジで恐怖しかねぇんですますですけど!!
コンビニで待つ事30分くらい。
1台の黒いワゴン車が、『キキー!!』って煩くタイヤを道路に滑らせながら、凄い勢いでコンビニ前に停車した。
んでもって、中からジジイとパパさん、八千流木さんと知らない誰かが降りて来た。
「お? ジジイ達来たぞ?」
「あ、ホントでござるな」
「ウハっ! あの馬鹿、殴られてやんの!」
「自業自得でござるな」
俺と桜田はコンビニ内で立ち読みしながら、車から降りて来たジジイに、外で缶酎ハイ片手にタバコを吸っていた雫が頭を殴られていると言う光景を微笑ましく眺めていた。
「んじゃ、行くか」
「了っ」
そして、立ち読みを中断し、まるで、仕事が終わった後の様に、清々しい気持ちでコンビニから気軽に出て行く。
「オマエら──!」
ってか、コンビニから出た瞬間にジジイが凄い剣幕で走って来て、
「──無事だったか!」
「………………」
何故か思いっきり抱きつかれた。
何が嬉しくて、いきなりジジイなんぞに抱きつかれなければならんのだ。
「………………。 クセェ」
しかも、加齢臭が酷い。
服に臭いが移りそうなんだが。
「オイ、離せよ。 俺にそんな趣味はねぇし、ジジイ臭くて服に匂いが移るだろうが」
「うむ。 これは、心配からの愛の抱擁でござるな」
「だったら、俺じゃなくて桜田に抱きつけよ。 俺より抱き心地良さそうな腹回りしてるだろうが」
そんなジジイは直ぐに俺から離れて、桜田へとゴミを見る様な視線を向けるなり、
「フン! 俺にも選ぶ権利はある!」
と、吐き捨てて、
「「………………」」
俺達に背を向けてワゴン車に向かって歩き出した。
「ま、まぁ、な……」
「ナニソレ!? 酷いでござるよ! 色々ヒドイでござるよ!!」
そんで、ワゴン車の近くには八千流木さんが居て、
「ご、ご無事そうで何よりです!」
心配とか、怒りとか、悲しみとか、喜びとかをひっ包めた様な顔で思いっきり睨まれた。
「すんません…… あの ”馬鹿” のせいで、色々とご迷惑やら心配やらをおかけしました」
ぶっちゃけ、俺が始めたことじゃないけど、後々怒られるのも嫌だし、此処は素直に謝っておく。
でも、主犯は雫だから、これは強調しておく。
「”雫“の奇行を止められなかった、俺と ”桜田” にも多少の責任はあると思いますし……」
それと、桜田を道連れにするのも忘れない。
「テメっ!? モヤシっ!! 奇行ってなんだよ!?」
トドメに、深々と頭を下げて反省してるっポく振る舞い、
「すんませんでした!!」
心象よく見せるのもコツだな。
「も,紅葉氏!?」
「千羽さん!?」
いきなり頭を下げた俺に桜田と八千流木さんが驚いてリアクションをとる。
こうやって出会って早々に反省してるっポイ感じを出しておけば、無下にはされんだろう。
「お──!? お顔を上げてください!? わ、私は、責任なんて、そんなつもりでは──!?」
しめしめ。
八千流木さんはチョロっチョロだな!
この流れで行けば、取り敢えず俺と桜田は怒られたり責められたりとかはないだろう。
って思っていた俺もいましたよ。
ハイ……
「いや、誰が良いとか悪いとかじゃなくて、オマエらは全員、連帯責任だ」
「──!?」
「な”!?」
「はぁあぁああ?」
オイぃぃぃ!?
クソジジイぃぃぃいいい!?
なんでぇぇぇ!?
「イヤイヤイヤイヤ! 巫山戯んなよっ!? 連帯責任ってなんだよ!? 諸悪の根源はアンタの孫娘だからな!! 俺はアイツの巻き添え食らったんだからな! ぶっちゃけ、責任なんて俺には最初っから微塵もねぇんだよ!!」
「そうでござるよ! 僕も木梨氏の巻き添えでござるよ!! 完全にとばっちりでござるよ!!」
「無実の人間に罪を償わせるとか、マジで老害かよ!! そんなに孫娘が可愛いなら、ジジイが責任とればいいだろ!!」
「そうだそうだ!! 濡れ衣でござる!! 横暴でござる!! 保護者が責任取れでござる!!」
「お前ら巫山戯んなよ! 私より先にアイツらのアジトに着いて暴れまくっていたくせに!!」
「オマっ──!? なんて事言うんだ!? ってか、言い方!?」
「イヤイヤイヤイヤ!? 僕達は木梨氏が拉致されたって言う置き手紙を見て、勇気を出して助けに行っただけでござるよ!? と言うか、完全に木梨氏の自作自演にハメられたでござるよ!?」
「そうだっ!! 助けに行ってもオマエは居なくてコンビニで寛いでいたしで、俺達はオマエの陰険で悪質で最悪な策略にハメられたんだよ!!」
「なんでハメられた僕達まで連帯責任なんでござるか!! 納得がいかないでござる!!」
「そうだそうだ! 俺達をハメたオマエこそが重罪で今回の戦犯で諸悪の根源だろうが!」
「ハイハイ。 どんだけ溜まってんだよオマエら?」
「溜まってるってなんだよ!? ってか、溜まってるのは俺達をハメたオマエへの文句と怒りだ!!」
「そうでござる! ハメられた方はたまったもんじゃないでござるよ!」
「あーもー、さっきからハメハメハメハメ五月蝿いんだよ。 って言うかぁ~、私がオマエらを自作自演でハメたって言う証拠なんてあるんですか~? 寧ろ、女の私の方が~、殿方共に後ろとか前とかからハメられる側だと思うんですけど~」
「フぁっ──!?」
「木梨氏ぃぃぃっ──!?」
このクソな状況で、クソ最悪な下ネタを織り交ぜながら、何故かクッソ悪そうなドヤ顔をしているカキ氷頭のクソビッチ。
「しょ、証拠ならここに──!?」
雫が書いたであろう書き置きをズボンのポケットから出そうとしたんだけど、
「──アレ!? 無いぞ──!? オマエの自作自演の書き置きがないぞ!? 何処行った!?」
どのポケットを探しても見つからない。
紙とポケットの大きさ的に、絶対にポケットから落ちる筈が無いのに、まるで消えたかの様に、元から無かったかの様に紙が何処にもない。
──っ!?
「ま、まさかっ──!?」
これはアレだ……
あの時、雫はポストカードに見せかけた自分の異能に書き置きしてて、時間経過で消えた的なアレだ……
何かに気づいた俺の様子を見ている、雫の凄く悪そうな笑みを見て、俺は、あの書き置きはそう言うモノだったんだと瞬時に確信し、
「オマっ──!?」
絶句した。
書き置きを探す俺を見ていた桜田も、俺のリアクションを見て俺と同じ考えに至ったのか、完全にハメられたって顔で雫にドン引きしている。
「って事で~、連帯責任ヨっロ~♡」
「テンメっ──!?」
「そんなのあり得ないでござるよっ!?」
「お前ら。 取り敢えず行くぞ。 こんな所では禄に話ができん。 さっさと車に乗れ」
「おい、ちょっと待てジジイ!! 禄に話ができないのはアンタの孫の性格とオツムのせいだろうが!」
「そうでござるよ! お爺さんも木梨氏の性格とか思考を自覚してて、その横暴な態度は酷いでござるよ!」
「ホンっト、マジで最悪な家族だな!!」
「はぁあ!? 黙れ負け犬共が! 世の中食うか食われるかなんだよ! 死人に口なしなんだよ!」
「いや!? オマエ!? アレだぞ!? この状況でそのフレーズ使ってる時点で、自分がやりましたって言ってる様なもんだかんな! この鳥頭!」
「ハイハイ。 負け犬が何を言ったところで、全部が無味無臭で無意味で無価値な妄想妄言なんだよ」
「このっ──!?」
「──おい! お前らさっさと車に乗れ! こっちは聴きたいことが山ほどあるんだからな!」
車の窓から顔を出すジジイ。
んでもって、申し訳ない様な顔で俺達の背後にいる八千流木さん。
「マジで、最悪じゃねぇかっ!!」
ってな最悪な幕切れで、俺達は長い1日を終えて帰路へとついた。
ホント、マジで最悪な1日だったわ!!
………………
…………
……
…
その後、今日は遅いから明日の朝に話を聴く為に迎えに来る言われて、俺と桜田は其々の家に送り届けられた。
ってか、明日の朝に来るって言われても、もう夜が明け始めてるし、迎えが来る時間まで3時間しか無いってどういう事だよ!?
昼でいいじゃん!?
マジで寝させてくれよ!!
結局、風呂に入った後に軽く寝落ちしていると、インターホンが鳴って迎えが来た。
クッソ眠いし、疲れが抜けなさすぎて死ねるわ!
移動中、睡眠が足りなさすぎて軽く車で寝落ちしてたんだけど……
着いた言われた場所が警視庁って、一体どういう事っ!?
なにコレ!?
雫ん家じゃねぇのかよ!?
驚きが強すぎて、拙者、寝起き早々思考がバグってるのでありますですけど!?
ってか、どんな寝起きドッキリだよ!?
こんなん、マジで恐怖しかねぇんですますですけど!!
お読みいただきありがとうございます。
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