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その表現ヤメロって!

普通に地面を歩いて来ればいいのに、なんでそんな歩き辛らそうなトコ歩いて来るし……



って思いながら、投網を被って倒れている赤装束達の上をドヤ顔で歩いて来るキチメンヘラを睨みつける。



略してキチメンでおなしゃす。



赤装束達を一網?打尽にできて、『さぁ、後は逃げるだけだ!』と思っていた矢先に現れたコイツ。



「「………………」」



マジで空気読めよ!


このまま逃がせよ!


コンチクショー!



「ヘヘヘへへ──  早速リベンジマッチだぜ」



横に居る戦闘狂な笑みを浮かべている雫を見て、



って言うか、オマエは獰猛な顔で嬉しそうに笑うなし!!


マジで怖ぇぇぇわっ!



と、俺のハートがシャウトした。



「いや、雫さん……?  リベンジもクソも……」


「今、みんなで逃げるって空気になってたでござるよね?」


「そうだっけ?」


「そうだったんだよ!!」



もうお忘れになったのでございますですかっ!?



馬鹿アタマ以前に、鳥アタマ以下すぎて、俺も桜田も次の言葉が出てこない。



「オイ……  もうコイツだけ残して逃げようぜ……?」


「そう……  で、ござるな……」



ノッリノリでオッラオラな魔法少女の時とは違って、素豚な桜田の素早い手ノヒラクルー具合が酷すぎる……



「「………………」」



互いにアイコンタクトをして心の中で頷きあい、



「だりゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ──!!」



雫が印を組んでキチメンに向かって特大火炎をブッパした瞬間、



「!?  お、オイっ!?」



俺と桜田は、同時に無言で階段に向かってダッシュした。



「雫!!  オマエの死は無駄にはしないぞ!!」


「木梨氏の家族なら、笑顔で分かってくれるでござるよ!!」



トカゲの尻尾切りとか、殿とか、犠牲とかでは全くなくて、どんな言葉であっても今の状況は語れない。


多分。


所謂、これは、単なる雫の自己満足であって、戦闘民族の習性なのだ。


犬にボールを見せると、周りが見えなくなって興奮しながら発狂するアレとか、急に発生する尿意とか、空腹時の腹の音とかと同じで、ごく自然的且つネイチャーな出来事なのだ。


生きとし生けるものがネイチャーコールに抗うとか、マジでどうにもできないのだ。


って事で、俺達は全く悪くないし、絡みたくも、関わりたくもない。


寧ろ、こうする事で双方間でWin-Winなのだからしょうがない。



そんな、戦闘馬鹿を瞬時に切り捨てた俺達がもう少しで階段に着きそうってところで、



「ノホぉぉぉおおお!?」


「ブヒぃぃぃいいい!?」



前方に上から何かが降ってきた。


降ってきたのが、語尾にアルが付く女の子だったら、共に世界を救おうと小さい頃から心に決めていたのだが、



『逃さん』



残念な事に、現実はそんなに甘酸っぱくなく、



「ふぁぁぁ!?」


「ブヒぇぇぇ!?」



寧ろ残酷な天使のテーゼだった。


声はさっきのキチメンと同じ。


だーけーどー、



「ばばばばばば──  化け物ぉぉぉおおお!!」



横で的確にポイントを捉えて大声を上げてくれている桜田氏がおっしゃる様に、



「バイオで、ハザードだな……」



趣味の悪い全身タイツを着ているみたいな、人の形をした赤黒い肉の塊っていうか、保健室の人体模型の内側のアレな部分っていうか、取り敢えずグロな感じな人型なヤツが俺達の前に降ってきた。



って言うか、今、雫のブッパ食らっていた筈だろが……?



って背後の雫をチラリと見てみると、



「逃げてんじゃねぇよ!!」



もの凄い形相でこっちに向かって走って来ている。


ってか、その言葉は俺と桜田に言っているのか、ソレとも、化け物な見た目のキチメンに言っているのか、状況的な認識すべき範囲が広すぎて、どう捉えて良いのか分からなさすぎだ。


まぁ、取り敢えず、色々と逃げられたんだろうな……


マジカヨ……



って事で、腰を抜かして地面に尻もちをついてアワアワしている桜田の前にスっと立ち入り、



「イダっ!?  アダっ!?  ちょっ!?  痛いでござるよっ!!」



小刻みに踵で脛とか足とかを執拗に蹴って、強制的に後ろに下がらせる。


んでもって、急いで剣を作って、目の前に居る、殺伐とした外の世界から安全に街を隔離しているデカい壁をブチ破った、超大型巨人が人間大の大きさになった様な化け物に向かって、ソレっぽく構えてみる。



「マジモノのバケモンじゃねぇか……」



構えながら思わず思っていた事が口に出てしまった。


ってか、俺がボソッと呟いた言葉の何処にオモシロ要素があったのか知らないけど、



『ククっ──  クククククククク──  フハハハハハハハハハハハハハハハ──』



キチメンは何にツボったのか、いきなり声を上げて笑い出した。



「………………」


『ククっ──  クククククククク──  あぁ──  バケモノだよ、なぁ!!』



そして、徐に左手を広げて俺に向かって突き出し、



「──っ!?」



と、同時に左手の指がビューンって伸びまくって、俺が握っている剣の先に絡みついた。



「キッモっ!?」



色のせいで見た目がミミズとか内臓みたいで、しかもグネグネ、ウネウネと其々がキモく動いていて、



「無理っ!!  キッショ!!  無理ぃぃぃっ!!」



俺は嫌悪感に負けて即座に剣を手放した。


瞬間、案の定と言うかなんと言うか、指がグルグル絡まっていた剣が凄い勢いで地面に落ちて、



『ウグゥ──っ!?』



絡まっている指が剣に押しつぶされた。



あ……



キモく剣に指を絡めていたキチメンは、剣と地面に指を挟まれて身動きが取れなくなったっぽくて、少し焦った様子で自分の伸びている左手の指を右手で握って引っ張っている。



「「「………………」」」



ラ、ラッキー!!?



「オマエら!!  逃げるぞっ!!」



って事でさっさとここからズラかる事に!


自分の指を引っ張っているキチメンが、



『ま、待てぇぇぇ!!』



驚愕の表情で自身の横を走り抜けて行く俺を見るけど、



「豚っ!!  アル中っ!!  走れっ!!」



二人に適当に声をかけて、重たい剣を必死にどかそうと頑張っているイカれを通り過ぎて階段へと向かう。


桜田は俺の意図を瞬時に悟ったのか、無言で俺について来たけど、



「馬っ鹿っ!!  チャンスじゃねぇか!!  アイツを此処で仕留めるのが先だろ!!」



雫が足を止めて動こうとしない。



「黙れ!  馬鹿はオマエだ!  さっさと走れ!」



って言うか、全然チャンスでもねぇし、仕留めるのを優先した覚えなんて微塵もございません!!



「俺が優先したのは ”此処から逃げる” だよ!」



って事で、戦闘狂な鳥アタマの世迷言を無視して、このイカれた状況から逃げる為に急いで階段に向かって走る。


………………


…………


……








そのまま走り続けて階段を駆け上がる事数分。



「ゼはぁ──  ゼはぁ──  も、もう──

  無理、で、ござ、る──」



案の定、豚が真っ先にギブアップ。


桜田は壁に手を着いて、呼吸もまともに整えられないと言った状態で、前に居る俺と雫を酷いブサイク面で見上げている。



「ハァハァハァハァ──  無理、じゃねぇ!  ハァハァ──  早く、走れって!!」


「ハァハァハァハァ──  葵ちゃん!  頑張って!!」



そう言う俺と雫も結構息が上がっているけど、桜田よりはまだまだ動ける。



いや、ぶっちゃけもうキツイかも……


今日は走ってばかりで流石にキツイ……


脹脛とか太ももがパンパンで死ねる……



って事で、



「ハァハァ──  それじゃ、此処で仕掛けておく、か──  ハァハァ──」



桜田の横に降りていって、手の口から剣を発現させ、



「──っシょっ!!」



簡易的な防壁とか檻みたいな感じに、階段とか壁とか天井に次々と剣を刺していく。



取り敢えず、これで時間稼ぎくらいはできるだろう。



少し速度は落ちたけど、急ぎ足で階段を駆け上がり、要所要所で立ち止まって休憩しながら、さっきと同じ様に剣を刺しまくって足止めを作る。



「ふぅぅ~。  これで簡単には追って来れねぇだろ……  多分」


「剣の鉄格子とか物騒極まりないでござるな……  と言うか、いっその事、壁を作れば良いのでは?」



賢いお豚様が俺に進言してくるが、



「無茶言うな。  そんな簡単に壁を作れとか言うな。  今まで生きてきて、壁なんて作った事も意識して見た事もねぇから。  おまえは俺をなんだと思ってんだよ?」


「では、某おもちゃのブロックみたいに、大きめの箱の様な何かとかだったら大丈夫なのでは?  ソレを積み上げるとか?」


「いや、階段の段差を考えると無理だろ。  いくら重いって言っても、足場がしっかりしていないと不安定になるぞ?」


「うむ。  そうで、ござるな……」



いや、マジソレ。


段差のせいで足場が真っ直ぐじゃないから、壁とか箱を作れたとしても不安定だし、直ぐに倒れるってオチしか見えねぇわ。



「逆に、触れれば手前に倒れる様に調整すればいいじゃねぇか。  そしたら、ペシャンコにできるぜ」


「「………………」」



生粋の戦闘民族が何か不穏な事を言っているが、何も聞かなかった事にしよう。



「取り敢えず上に向かって歩くぞ~」


「無視かよ!?  ってか、マジでどうすんだよあのキモいヤツ?  完全にイカれてやがったぞ?  ってか、指がめっちゃ伸びてたぞ?」



いや、お前がイカれ言うなし。


お前もお前で別ベクトルでイカれてるから。


寧ろオマエはアイツと同じカテゴリーだからな。



「あんなの、もう人間じゃないでござるよ。  カエルの胃袋みたいに、身体の中と外が裏返っていたでござるよ」


「やめろよその言い方……  変なん想像しちゃっただろうが……」



間近でみたウネウネ動く指のキモさを思い出して、軽く吐きそうになったわ……



「とりあえず、キモいからジジイに丸投げでいいだろ?  お前も色々と暴れられたんだから、今回はこれで満足しとけ」



階段を歩きながら、カキ氷頭の戦闘狂へと顔を向ける。



「は?  全然満足できてねぇんだけど?」


「んじゃ、お前一人だけ戻って、あのキモいヤツの指に身体中を絡められてこい」


「触手プレイでござるな」


「オマエらマジ死ね。  セクハラ飛び越えてマジでキモいわ。  生理的に引くわ。  キモっ!!」



この発言には、流石に愛しの葵ちゃんですらも拒絶されたようだ。



「って言うか、あのキモく伸びてウネウネする指を間近で見たら、お前、絶対泣くぞ?」


「はぁ?  オマエみたいなモヤシと一緒にすんじゃねぇよ。  あんなん、引き裂いて焼き払ってやるっつうの」


「木梨氏は凄いでござるな。  僕は、あの皮膚と肉が裏返ったみたいな見た目と存在だけで、もう無理でござるよ」


「だから、その表現ヤメロって!」


「大丈夫!  私が葵ちゃんを護るから!」


「ちょっ!?  離れるでござるよ!  暑いでござるよ!!」



桜田にスゴい言われた雫のご機嫌は急上昇。


よく、あんな暑苦しくて汗だくな豚と腕が組めるよな。


この前の公園で汗だくな豚を担いでいた事を思い出して鳥肌が立ったわ。



気持ち悪ぃ……



等と話している内に階段を登り終え、やっとの事で配電室に戻ってきた。



「って事で、真夏のイカれた冒険もこれで終わりだ。  さっさと帰るぞ。  もう何があっても無視して帰るからな。  疲れたからマジで帰るからな」



って事で、東京タワーの地下駐車場から出て、雫にパパさんに連絡させて、俺は八千流木さんに電話して、皆んなが来るまでの間、近くのコンビニで其々が寛ぐ。



マジでクッソ長くて疲れる1日だったわ……





お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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