意地でも生存確率を上げてやる!
目がカッピカピになって瞬きできない。
同じく口の中もカッラカラで唾液が出てこない。
物凄いスピードで強制半落下させられ、永遠にも思えた恐怖体験。
でも、スマホを見たら僅か1分と少々。
流石はスピードの向こう側。
時間までをも置き去りにしてきたらしい。
って──
「──豚ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!! 殺す気かぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「殺す訳無いでござるよ」
「冷静に返答すんなやっ!! こちとら、オマエのせいで身も心もドライにカッピカピぞ!!」
「それよりも先行くでござるよ」
「それよりもだとぉお!? 魔法少女とは違うひ弱でモブな俺を、もっとモブらしく優しく大事に丁重に扱えつってんだよ!!」
「ハイハイ。 時間が無いからさっさと行くでござるよ」
「ヒぃヤぁぁぁぁぁぁぁぁ──!?」
余りにも雑な対応にビックリしすぎて変な裏声出てしまったわ!!
強くて可憐な魔法少女様は、下級でモブな俺とは争ってなんていられないでございますですか!?
階段を降りた先は、階段と同じ様な装いをした高架下の遊歩道みたいな感じになっていて、件の魔法少女様は俺を無視して歩きだす。
「無視すんな! 豚ぁぁぁあああ!」
って言うか、コレまた階段と同じく一直線で、もう、此処の上、地上が何処でどの位置にいるのか全く分からない。
それに、
「電波がねぇ……」
スマホの電波も圏外で、マップアプリが使えない。
そんな状態で十数メートル程真っ直ぐ進んだところで、
「ナニコレ……」
「ウハっ!?」
いきなり巨大な空間が現れた。
なんて言うか、首都圏外郭放水路?
うん。
そんな感じの無機質なコンクリむき出しの、薄暗くてだだっ広い巨大な空間。
天井とか高すぎて見えないし、等間隔に太い柱が沢山並んでいるしで、まるで、現代の技術で作られた地下神殿的な何かを思わせる。
「もしかして埼玉じゃないよな……? 伝説の放水路じゃねココ……?」
「イヤイヤイヤイヤ。 そんな訳ないでござるよ。 あそこは東京タワーからどれだけ離れてると思っているでござるか?」
「その根拠はなんだよ? 違うって言う証拠でもあんのか?」
「な、ないでござる、が……」
「んだよ。 根拠も何も無いクセに全否定してんじゃねぇよ。 それとも、魔法少女様は全知全能でいらっしゃるのですか?」
「いや、ソレは──」
「それとも、王様の言う事は絶対、的な、まさかのジャイアニズム的なアレですかね?」
「──うぅ……」
俺の論破のせいで魔法少女様の士気が目に見えて下がり始めた。
いかんいかん。
さっき雑な扱いされたせいで、些か心がささくれて強く当たりすぎたわ。
「まぁ、そんな事よりも、ホントにあの馬鹿がこんなトコに居んのかよ……」
雫を探そうと薄暗い巨大空間に目を凝らして凝視していると、奥から動く影と沢山の足音が聞こえてきた。
「オイ、桜田よ……」
「わ、分かってるでござる……」
桜田も足音とか動く影に気がついていて、
「先ずは視覚の確保でござるな……」
ワンドを足音が聞こえてくる方向へと向かって翳し、
「ソイやっ!」
掛け声と同時に巨大な火の玉が上空に舞い上がり、巨大空間を照らしだした。
「うわぁ〜……」
「マジでござるか……」
照らし出された俺達の前には、瞬時に数えるのを諦める程に沢山の赤装束達がいて、
「雫なんてマジでどうでも良いから、俺、もう帰っていいかな……?」
各々が手に槍やら剣やら斧やら、明らかに殺す気満々の武器を持っていて、
「うん…… その気持ち、分かるでござる……」
目の前の光景にドン引きで、マジで雫とかどうでもよくなって、横にいる魔法少女な桜田でさえ顔が引き攣りまくっている。
ハイ!
こんな数、モブな俺には絶対無理ですぞ!
って言うか、攫われた雫はなまじ顔とかスタイルが良いから、どうせ、あんな事やこんな事されまくって絶対に無事な訳がない!
助けたところでダメなパターンのヤツだね!
アヘって廃人になってる的なヤツだね!
って事で、
「雫よ、安らかに成仏してくれ」
薄暗い天井に向かって軽く追悼の意と黙祷を捧げた後、
「ちょっぉぉぉ──!?」
入ってきた通路へと向かって全力で猛ダッシュ。
「──紅葉氏ぃぃぃいいい!?」
「魔法少女よ! 殿は任せたぞ!」
俺が逃げたと同時に、イカつい雄叫びをあげながら荒波の様に押し寄せてくる赤装束達。
桶狭間の再来かな?
「ウソォォォォォォォ──!!」
「こんなんマジ無理だからっ!」
こんな数の集団に襲われた日には、即座に四方を囲まれて、フルでボっコのメッタメタのヒデブにされて、デュクシって効果音がコンマゼロ秒で鳴り続けるわ!
モブな俺が戦国や三国みたいにリアルで無双なんてできる訳がねぇんだよ!
桜田が殿を努めている背後からは、沢山の怒号や悲鳴と爆発音が聞こえてくるけど、格闘ゲームの効果音がリアルに幻聴しているって事で良きに計らう。
桜田も身の危険を感じて堪らず遠慮なくブッパしまくっている様で、走る俺の視界の端へと宙を舞う人影がチラホラリ。
ってか、桜田抜きであのクっソ長い階段を駆け上がるのはマジでキツそうだけど、俺はいざとなったらやれる子だから、そこんとこ、頑張るます!
俺、階段、登るますっ!
って言うか、このまま追いつかれるのも危険だから、
「ソイやぁぁぁ! ソイやぁぁぁ!! ソイやぁぁぁ!!!」
走りながら剣を手の口から吐き出させて、ランダムに地面にブッ刺して、通路までの道のりに簡易的な障害物を構築。
意地でも生存確率を上げてやる!
そんでもって通路も剣だらけにしながら階段に到着したのだが、
「よっ」
「は……?」
何故か階段から降りてきた雫とバッタリ出会す。
「オマっ──!?」
「んだよ。 来んの早ぇな」
「──なんでオマエが此処に居んだよぉぉぉおおお!?」
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本日、18時にもう1話投稿になりますです。
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