お尻の穴もムズムズ状態!
はい。
どうも。
僕です。
どうせ居るんだろ?って思っていたのですが、やっぱり居ました、見張り役。
警備員的な装いをしているけど、全員がお揃いの赤い腕章をしていて、態度や振る舞いがどう見ても一般人の、一般人による、一般人の為の警備員じゃない。
しかも無駄に3人も居るし。
せめて、そこは偶数にしとけよ……
でも、こっちには──
「行け。 魔法少女」
「ござる!」
──変身してテンションが上がって、ヤル気満々のメガネっ娘魔法少女がいるのでございますですよ!
先制ブッパで蹴散らせGo!Go!
俺の合図と共に河川敷の時みたいに颯爽と空を走り、チャラついた警備員達の頭上から降下して背後に着地。
「えっ!?」
「な!?」
「ハァあ!?」
勿論、これには面白いくらいテンプレ的にとても驚いてくれた警備員達。
そして、
「えい♪ えい♪ えい♪」
「………………」
桜田がドピンクのイカれたワンドでリズミカルに警備員達を軽く小突くと、
「「「アバババババババババババババババババババババ──!!」」」
いつかテレビとかネットで観た様な、テイザーガンを食らった人みたいな感じで、感電して痙攣しながら気絶した。
「魔法少女…… 恐るべし……」
魔法少女にしては、めちゃくちゃ地味で堅実的な無力化方法だけど、アレだけは絶対に俺に使うのは勘弁してほしい。
モブとしてどうせヤられるのであれば、派手に全身凍らされた方がまだ映えてマシだわ……
こうして、
「紅葉氏。 早く行くでござるよ」
魔法少女のクセに、攻撃になんのキラキラもエフェクトも出さないまま、ものの数秒で簡単に制圧、解放された地下駐車場の入り口。
「お、おぉ……」
地下へと斜めになっているスロープを走り抜け、柱に表示されているアルファベットを追って『D』の場所を探す。
んでもって、やっぱりって言うかなんて言うか、
「端っこかよ」
Dの場所は地下駐車場の奥の端っこにあって、そこに『高圧危険 関係者以外立ち入り禁止』って表示がある鉄っぽい赤いドアがあった。
「コレか?」
「Dエリアのドアはコレだけでござるな…… と言うか、赤いからコレでござろう?」
コンクリむき出しの壁だらけの中、唯一、赤と言うか、古びて朱色になっている、Dのエリアにポツリとあるドア。
しかもドア横の壁にはカードキーを翳すみたいな機械があって、
「クソ。 時間がねぇっつうのに……」
ご丁寧な事に、なかなかセキュリティがしっかりしていた。
「こりゃぁ、入り口に戻ってアイツらから奪ってこなきゃだな……」
渋々踵を返し、駐車場の入り口で感電して無様に気絶している見張り達の姿が脳裏にチラつく中、
「そんな時間勿体ないでござる」
ドアに向かって綺麗に整った小鼻からフンスって大きな鼻息を吐き、
「此処は僕に任せるでござるよ」
意味深気味にズレたメガネを何度もクイクイさせる魔法少女。
そして、手にしているワンドを壁にある機械へと向け──
「シャシャシャシャシャ──!!」
──ないで、何処かの剣豪かアサシンみたいにワンドを逆手に構え、
「──シャァァァァァァアアア!!」
ドアに向かって何度もエア斬撃をお見舞いする。
「また、つまらぬモノを斬ってしまった、でござる」
「………………」
誰でも一度は言ってみたい、そしてやってみたい行動をして、至極満足したドヤ顔で中腰になって残心している魔法少女。
ソレをゴミを見る目で見つめる俺。
「オイ…… そこのダメガネ……」
そんな俺を無視して、
「ふぅ〜」
残心する桜田がドアに向かって口を尖らせて息を吹きかけた瞬間、
「はうぁっ!?」
ドアがサラサラと砂より細かくなって崩れ落ちていった。
「ドアがサラッサラ!?」
「電気分解させてやったでござるよ!(ドヤ!)」
「電気分解ぃぃぃいいい!?」
正に技術の無駄使い。
「うむ。 潜入している最中故、あまり物音は立てたくないでござるよ」
「………………」
正にロマンへの冒涜。
たとえそうでもそこは斬っておけや!!
だったら何故にその台詞を吐いたし!!
って言うか、斬る真似とか必要なかっただろうが!!
大声で色々と言いたい事があったけど、
「……んじゃ、行くか……」
桜田の変身可能時間が惜しいから先に進む。
粉になったドアの成れの果てを踏み越えて中に入ると、そこはボイラー室とか配電室みたいな暗くてゴチャゴチャした感じだった。
昼間に雫が脅して吐かせた赤装束の情報通りなら、この先に地下に続く階段があるはずなんだけど……
と、奥に向かって歩いていると、
「あったよ……」
いきなり幅が広めの階段が現れた。
「地下鉄の入り口みたいでござるな……」
階段の壁や天井部分に薄暗い照明が等間隔で並んで配置されていて、桜田が言う様に、正に地下鉄の地上口みたいな感じだ。
そんな階段を見て、なんか下の方で嫌な予感がしたから、
「此処は敵地のど真ん中で、いつ何時ナニが起こるか分からんから、一応、足元とか気をつけろよ。 命大事にだぞ」
と、言って桜田を前に押し出す。
「………………」
TS美少女メガネっ娘がジト目で俺を見てるけど、早よ行けと言わんばかりに無言で背中をグイグイ押す。
「ちょっ!? 押すなでござる! こんな長い階段で脚を踏み外したら死ねるでござるよ!」
「フリか?」
「フってないでござる! 今すぐ押すのをヤメるでござるよ!! ホント、洒落になってない高さでござるよ!
「うるさい。 はやくいけ。 じかんがない」
ブーブー吠える五月蝿いメガネっ娘に、スマホで計測している魔法少女の変身時間を見せて黙らせる。
「うぅ……」
コレには桜田も逆らえず、恨めしそうな顔で階段を駆け降りて行く。
………………
…………
……
…
既に入り口が見えなくなっているくらい結構長い間降りた階段。
普通だったら、下に向かうには階段の途中で踊り場があって、曲がったりしてグルグルって感じで真下を目指すものなんだろうけど、
「コレ、何処まで続くのでござるか……」
「それよりも、ずっと一直線ってのがおかしすぎるだろ……」
階段は未だに一直線。
もう、降ってんのか登ってんのかも分からんわ。
「こうもずっと真っ直ぐだと、地下鉄とか下水道にぶつかる筈でござるよ、普通……」
「だな…… って言うか、お前の変身時間の残りがそろそろ30分になるぞ……」
手の中のスマホに表示されているタイマーを見て、ちょっと焦りが湧いてきた。
降りきったと同時に桜田の変身が切れたとかマジで洒落にならないし、
「オマエの変身は途中でキャンセルとか、残った時間を次に使うとかってできんのか?」
今思っている桜田の変身の事を聞いておく。
「僕もそうしたいのでござるが、どうにも、
発動したら使い切るしかないようでござるな……」
マリ○のスター状態かよ……
「正にマジカルタイムだな……」
「でござるな……」
流石に桜田も残りの変身時間で焦りが湧いてきたらしく、
「紅葉氏。 此処で無駄な時間は使ってられないでござる!」
「お、おう……」
焦った様子で俺に顔を向け、
「って、オイ!? なんで俺にソレ向けてるし!?」
そんでもって、何故か俺にワンドも向けてきやがった。
「って事で、えいっ!」
「って事でってナニっ!? ちょっ! 待てって──!?」
そして桜田のワンドが俺に触れた瞬間、
「──ぬフォォォォォォォォォォおおお──!!」
俺の身体が浮かび上がった。
「──なんじゃコレぇぇぇぇぇぇ!!」
なんか知らんけど下から風がブワーって来て、なんて言うか、無重力!!
浮遊感で背筋もお尻の穴もムズムズ状態!!
「それじゃ、本気出して走ってみるでござる!! 紅葉氏は僕の身体にしっかりと掴まっているでござるよ!」
「イヤっ──!? オマっ──!?」
そう言う桜田が俺を小脇に抱え、
「ちょっ──!? ギャァァァァァァァァァァァ──!!」
そのままモンのスンゴイ速さで階段を駆け下り始めやがった。
いやもう、走って駆け降りてるって言うか、背中にブースターとかあんじゃね?音速超えてんじゃね?ってくらい、斜め下に向かって空中を滑っている。
「ふごぉぉぉぉぉぉ──!!」
遊園地のジェットコースターとか、鼻歌歌えて可愛く見えるレベルの速さで、ヤバさとスリリングが瞬時に背後へと過ぎ去っていく。
兎にも角にも向かい風がヤバすぎて、歯医者さんで口の中の水分をバキュームされている感じのあれが顔中を襲いまくり、目も鼻も口の中も、かなりのドライで潤いナシのゼロ水分状態。
「目が! 鼻が! 口の中がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ──!!」
俺は今日、生まれて初めてスピードの向こう側なる現象を体験したのであった。
お読みいただきありがとうございます。
モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。




