一般市民の一人だろうがぁぁぁあ!
何が嬉しいのか、めちゃくちゃ破顔しているクソジジイ。
「ニヤニヤしてねぇで使い方教えろやジジイ! マジでキモいんだよ!!」
「そうだそうだ! 棺桶に片足ツッコんでるくせに何に悦ってんだよ!! 理力ってなんだよ! なんでパパさんが急に消えて離れた場所に現れたんだよ!」
俺と雫にディスられるも、ジジイの顔は益々緩んでニヤニヤしまくっている。
ディスられて悦るとか変態かよ!?
「と言うか、刑事さんはこの理力なるものを感じて此処に来たのでござるか? パパさんが使えていると言うことは、理力なるモノを知る他の人も使えると言う事ではないのでござるか? それだったら何故、魔法少女がこの辺にいるかもと思ったのでござるか?」
そんな折、刑事に追われていてかなりヤバい立場にいる桜田が、落ち着きつつも食い気味に八千流木さんに質問する。
「それはですね…… 理力には、人体で言う指紋みたいな感じで特徴がありまして。 私は理力を使って知覚?感覚?を鋭くさせる事ができまして……」
「あうぁ…… そ、そうなんでござるか……」
猟犬に匂いを覚えられた豚。
もう、ダメなヤツじゃんこれwww
「うん。 それも理力の使い方の一つだねい」
「だから何なんだよ理力の使い方って!! どうやったら使えるんだよ!」
八千流木さんの説明とパパさんの言葉に、苛立つ雫。
って言うかオマエ、忍術使えるだろうが?
今の話の流れだと、多分、同じヤツだぞ?
「理力と言うのは誰にでもある。 俺や千尋、雫、モヤシ、遺憾ながらそこの豚にもな」
「ブヒィ!?」
ジジイは余程説明したいのか、パパさんとの会話の間にシャシャリでてきた。
「んで? どうやったら使えるんだ? 私も使えるのか?」
「うむ。 訓練次第で誰でも理力は使える。 稀に、訓練しなくても使える者もいるがな」
「そそ。 理力は超能力や魔法みたいな、人間の隠れたチカラの源なんだよい」
「私達は、異能、と一括りにして呼称しています……」
異能って……
「それじゃ、理力はどうやって使うんだよ? 超能力とか魔法とか異能の源って事は、訓練すればそんな感じの不思議なチカラが使えるのか?」
だから、お前は既に使えてるだろうが!!
同じモノって気づけよ!!
「まぁ、そうでもあるし、そうじゃなくもある」
「はっきりしねぇジジイだなオイ!」
「まぁ、聞けバカ孫。 理力は誰にでもあるが、理力をどう扱えるかは、扱う人によって違う」
「そそ。 色々あるんだよ。 僕が使えるのは、身体を強化すると言う、ごくごく基本的なモノだけだよい。 でも、今までの話を聞いている限りだと──」
パパさんが八千流木さんへと視線を向けると、
「──は、はい。 基本の身体強化と合わせて、理力感知ができます」
やけくそになったのか、もうどうでも良いと言った様な開き直った顔になっていた。
「ほう。 嬢ちゃんは【ギフト】持ちか」
「はい…… 理力感知、です……」
「「「………………」」」
ジジイ達の話に全くついて行けない俺達。
「いやはや、嬢ちゃんが【ギフト】持ちとは」
「オイ、ジジイ。 私達にも分かる様に話せ。 身内ネタ的なノリで話からハブらてれる感じがしてマジでムカつく」
そうだぞジジイ!
雫さんはオコだぞ、オ! コ!
「ってか今、理力は誰にでもあるって言ったよな? 私にもあるのか?」
「あぁ。 理力は誰にでもある。 理力は誰しもが身体の内に秘めているチカラ。 しかし、普通に生活していたらあまり使わない。 と言うか全く使わない」
「は? 意味分かんねぇよ」
「理力ってのは、所謂、人の限界を超えたチカラ。 火事場の馬鹿力や死力、極限状態ってのが理力だ」
「それを好きなようにコントロールできる様になれば、任意で身体を限界以上に強化する事もできるんだよい」
「左様。 さっき千尋が見せたのは、理力で身体を強化した後に、瞬歩や瞬脚、縮地とも言われている足運びを合わせて素早く動いただけだ。 それに更に理力を纏わせてやると、こんな感じでもっと素早く動けるように──」
瞬間、
ジジイの姿がソファーから消え、
「──なる」
離れたテーブル席に現れた。
「まぁ、コレは基本の動作で、訓練すれば誰でも使える様になる。 だが──」
ジジイはソファーに座る八千流木さんに顔を向け、
「──そんな身体強化の基本的な理力とは別に、嬢ちゃんみたいに、理力を違う形で使えるチカラを持つものがいる。 その者達は生まれもって特別なチカラを秘めており、故に【ギフト】って呼ばれておる。 【ギフト】には、理力の扱いを覚えた事によって【ギフト】を発現できる様になった”後天性”、理力を知る前から生まれもって特殊なチカラを発現させられる”先天性”がいる。 見た感じ、嬢ちゃんのは”後天性”か?」
「はい…… その為まだまだ精細性を欠いていて、大きなはっきりとした理力の発生しか感じ取れません……」
「まぁ、所謂、【理力】は努力や修行の賜で、【ギフト】は努力や修行でも得ることができない特殊なチカラ、正しく異能や超能力ってヤツだ」
「「「………………」」」
イヤイヤイヤイヤ!?
そんなのってマジであったのかよ!?
なんなのこの世界の裏事情的な話!?
しかも、なんかヤバそうな感じがプンプンしてるんだけど!?
「色々とよく分からないけど、取り敢えず、八千流木さんが魔法少女を探している方法は分かりました。 それで、八千流木さんはなんであの赤い奴と戦って?逃げていたんですか? それと、昨日、俺と桜田は公園で赤装束に襲われたんですけど、なんで昨日の今日で、また赤装束絡みで襲われなければならないんですか? って言うか、ニュースでは新興宗教の無差別テロってあったんですけど、現状から考えると、なんか違いますよね? それに、魔法少女を探してどうするんですか?」
「そ、それは……」
俺の続け様の質問に、理力やギフトの事以上に言い悩む八千流木さん。
流石にコレは仕事のトップシークレットや部外秘事項にあたるのか?
と思っていましたよ俺は。
「お義父さん。 『花羅独楽ノ御前』の者と思われます。 さっき捕らえた人の頭巾に模様がありました」
「奴らか……」
ギロリと八千流木さんを睨むジジイ。
「ハヒィっ!?」
そして、パパさんとジジイに速攻で情報がワレてしまった八千流木さん。
「ふぅ~── 時代を超え、世代を超え、長々とまぁ…… 根気強いと言うか、ネチっこいと言うか、執念深いのにも困ったもんだな」
「殺生石が割れたのを期に本格的に動き出したものかと」
「遂に奴らの悲願が叶ったと言う事か。 フン。 狂信者共め」
全てを知っているかの様に隠す事なく話し続けるジジイとパパさん。
「ちょちょちょちょちょ──!?」
それにカナリ焦り始めた八千流木さん。
うわぁ~……
分かりやすい人だな……
正解なのかよ……
「お、すまんすまん。 コレは一級極秘事項だったな? 確か」
「お義父さん。 こりゃあ、僕達の所にも話が来ますよ、きっと」
「だろうな。 なんせ、特級案件な上に、たまたまとは言えこうして関わってしまったからなぁ」
急に険しい顔つきになったジジイとパパさん。
そんでもって完全に蚊帳の外な俺達。
「仕方ない。 嬢ちゃん。 今回の事と併せて、俺と千尋の事を至急本部に伝えてくれ」
「あ?え?へ?」
いきなり話を纏め始めるジジイ。
そんなジジイに困惑する八千流木さん。
「って事で、お前らはもうどっか行っていいぞ。 後の事は俺と千尋で引き受ける」
「あぁん?」
「え?」
「は?」
そんでもって、いきなり俺達に出て行けコール。
「冗談じゃねぇぞジジイ! なんか楽しそうな事になってきてるってのに出て行けは今更だろ! 私も混ぜやがれ!」
「いや、楽しそうって言われてもねえ……」
「バカ孫…… オマ…… 何考えてんだよ……」
雫の頭の悪そうな発言にパパさんとジジイが呆れ果て、
「あうぅ……」
極秘事項を暴露されまくった八千流木さんの目が死んでるんだけど……
仕方ない。
俺は平穏ウェルカム派だから、この馬鹿なカキ氷頭をなんとかするとしよう。
「おい雫。 皆んな困ってんだろ? 一般人の、しかも学生の俺達が楽しそうだからってだけで首を突っ込んで良い様な──」
「──黙れモヤシ。 殺すぞ」
「──ハイ……」
無理。
こいつをなんとかするとかマジで無理。
アホみたいに殺気と死臭を振り撒きまくってるんですけど……
「ジジイ。 “私達”もこの話に乗るからな」
「木梨氏ぃぃぃい──!?」
「私達って!? オマ!? 巫山戯ん──!?」
「──黙れ」
「「──ハイ……」」
なんなのコイツ!?
俺と桜田が折角、警察の目から逃げようとしているのに、マジで何してくれてんのこの馬鹿ぁぁぁあ!?
マジモノの厄病神じゃねぇか!?
桜田も俺と同じ事を思っているのか、不意に合った目が声を大にして俺と同じ事を雄弁に語っていた。
「一般市民の平和の為に私はやるぞ!」
『………………』
雫の追加のアホ発言に全員が唖然。
オマエは学生で、コンビニの店員で、一般市民の一人だろうがぁぁぁあ!!!
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