家族ぐるみかよ!
おかしいぞ……
話の意味が分からないのもあるけど、なんか色々おかしいぞ……
「ジジイは、道場の師範で地主で不動産屋でコンビニチェーンの経営者じゃないのか……?」
小さい頃から見ていたジジイは正にそうだった。
浦島機関?
化け物退治?
なんじゃそりゃ?
俺と同じ事を思っているのか、雫と桜田も俺の言葉に頷く。
「まぁ、本業じゃなく、指南役みたいなヤツだな」
「ますます意味が分からん」
「そんなジジイ、私は見た事も聞いた事もないぞ」
一緒に暮らしている雫でさえ分からない情報。
マジでカナリの眉唾情報だ。
「そりゃぁそうだ。 雫が生まれてから綺麗サッパリ足を洗ったからな」
「そうなのパパ?」
「おう。 雫が産まれてからはコンビニ事業を始めたお。 女の子に殺伐とした家族は見せられないからなあ!」
「いや……」
「それは……」
パパさんの言葉に何かを言いかけた俺と桜田。
ぶっちゃけ、雫はカナリの戦闘狂で殺伐としまくっていますです。
さっきも赤装束を秒でノシましたのですよ。
「って事はパパはジジイの事知ってたの?」
「あぁ、勿論! だって、僕とママが出会ったのも浦島機関だったからねい!」
「「「………………」」」
家族ぐるみかよ!!
浦島機関って出会い系なナニカなのかよ!?
って言うか、何で八千流木さんも吃驚してんだよ!?
「それじゃ、八千流木さんは魔法少女を探しながらジジイに助けを求めに来たって感じなんですか?」
そう言いながら八千流木さんを見たら、メッチャ視線が合ってしまった。
って言うか八千流木さんは、いきなり話を振られた事に驚いて俺をガン見して、何故か困惑しながら顔が引き攣っている。
「い、いえ…… 何と言いますかその…… そう言う事とは知らずにですね…… はい……」
「「「うわぁぁぁ……」」」
思わず雫と桜田と声がハモってしまった。
「今の新しい世代は僕やお義父さんの事は知らないだろうねい。 所属していたのは20年以上前になるからねい!」
それにしてもナニこの偶然……?
「と言うか、何でこの辺に魔法少女が居ると思ったのでござるか?」
「うぅ……」
やはり桜田はそこが気になるのだろう。
そりゃ、ピンポイントで居場所が知られて追われ、探され続けりゃ、マジで恐怖しかないからな。
「い、一応、極秘事項なのですが……」
八千流木さんが言い淀むも、
「一応も何も、こいつ達は被害者だ。 こうなってしまった以上、隠さず説明してやっても良いではないのか? 話を聞いてこいつ達がどう捉えるかはこいつ達の自由だ」
ジジイが八千流木さんに顔を向けて促す様に顎をしゃくり上げると、八千流木さんがため息と共に口を開く。
「わ、私の能力です……」
「……へ?」
「……ナニソレ?」
「……能力?」
「なんと言いますか…… 地場の変化?乱れ?を感じ取れる能力です…… それで、千羽さんが言う魔法少女なる者が現れた時と似た様な地場の変化をこの辺で感じましたので……」
うわぁ……
桜田詰んだぞコレ……
「ぢ、地場の変化ってなんでござるか?」
桜田が食い気味に続けて質問。
「感じるってなんだよ? ナニ感じてんだよアンタ??」
雫が半ギレで追加質問。
「ヒっ!?」
おまえ、何キレてんだよ……
って言うか、雫がキレている理由が何となく分かってしまう。
どうせ、魔法少女な桜田をどこからでも感じとる事ができるみたいな、八千流木さんへのジェラシーだ。
「通常では起こり得ない現象が、発現した際に、感じられます……」
「通常で起こり得ない現象って、なんでござるか……?」
「はい…… 分かり易く簡単に説明しますと──」
アレだ……
もうコレは絶対にアレだ……
俺達が異能を使っていたからだ……
俺と桜田はなんとなく分かっている様な顔をし始めたけど、カキ氷頭はメチャクチャ八千流木さんにメンチ切ってる。
「──超能力や魔法の発現、化け物の出現と言った超常現象的な類のモノです……」
「かぁぁ~! ナニソレっ!! そんなんある訳無いじゃん!!」
「あぅぅ……」
カキ氷頭はドン引きした顔で八千流木さんを馬鹿にする様な視線を向けているけど、
オマエ……
まさか自分でブッパしたり色々やった事を覚えてないってんじゃないだろうな……?
この酔っぱらいは鳥頭かよ……?
数十分前に自分がしたことを綺麗さっぱり忘れてやがった。
そんなアホな雫の言葉に恥ずかしそうに顔を赤くしながら下を向く八千流木さん。
「バカ孫よ。 浦島太郎の話を忘れたのか?」
そんな八千流木さんにジジイがフォローを入れる。
「浦島太郎の話では、大昔のこの世界には化け物がウヨウヨいたそうだ。 それに、浦島太郎も玉手箱で不思議なチカラを手に入れている」
「そんなもん、クソでかい尾ひれの付いた御伽噺だろうが」
「と、思うだろ?」
ジジイはそう言いながらパパさんに向かって顎をしゃくってナニかを促す。
「雫。 こう言うのだよい」
ジジイの言葉を引き継ぐように、パパさんが俺達に向かって右手を伸ばして手を広げた。
すると──
「な!?」
「ふあぁぁぁ!?」
「うおっ!?」
パパさんの掌から、俺の右手から発現させた様な、偶にキラキラ光る透明なモヤモヤが現れた。
コレに俺達はマジで驚愕。
何に驚愕って、俺達が知るところの魔力を知り、使える人がいたからだ。
しかもこんな身近に。
「嘘だろ……?」
「手からキラキラ……?」
「パパ、ナニソレ……?」
パパさんが広げていた手をギュウって握ると、モヤモヤが霧散して消えた。
「うん。 コレは、【理力】って僕達は呼んでいるよい」
「り、【理力】……?」
って言うか、ソレって魔力じゃねぇのかよ……?
俺のモヤモヤと全く同じモノを発現させたパパさん。
「うん。 気やオーラとかって呼び方もあるけど。 不思議なチカラを使う為の元?みたいな感じだねい」
そして、俺がダウンロードしたPDFみたいな事を言うパパさん。
まじか……
「そ、ソレって、どういう仕組で出てるんですか?」
そりゃぁ、俺も堪らず質問するわな。
「う~ん。 なんと言うか、自分の中にある内なるチカラを感じて引き出す感じい?」
そう言いながら少し困った顔でパパさんがジジイに顔を向ける。
「まぁ、及第点だが、そんなところだ」
「そんなところって言うか、八千流木さんが言う魔法とか超能力ってのはなんとなく想像がつくけど、パパさんのそれは理力ってやつなんだろ? 不思議なチカラを使う元って言ってたけど、ソレで一体何ができるんだよ? キラキラ光ったモヤが手からでるだけなのか?」
自分が得た魔力と酷似しまくっている、パパさんが発現させたキラキラ光るモヤ。
俺以外の他の人も使えているとか、マジで気になりすぎる。
って言うか、話の流れから察するに、このモヤモヤで何かを造形する以外にもできることがありそうなこの雰囲気。
「千尋。 理力で何ができるのか、ちょっとみんなに見せてやれ」
「分かりました、お義父さん。 それじゃぁ、こんなのは、どう──」
さっきまで居間のテーブルを挟んだ向こう側に座っていたパパさんが立ち上がると、
「──かなあ?」
「はうあっ!?」
いつの間にか桜田の後ろに立って、トントンって肩を叩いていた。
って言うか、俺、コレ知ってるぞ……
赤装束の急に現れる動きじゃんよ……
公園で対峙した、赤装束の奴らみたいに急に現れたパパさん。
「い、いつの間に、移動したでござるか……?」
「パパぁ! スッゲー!! どうやんだよソレ!」
「ハハハハハハ── これは【理力】の使い方の一つだねい」
「使い方の一つ? って事は他にも?」
「うん。 色々あるけど、教えるのは僕よりお義父さんの方が詳しいよい」
この理力なるチカラの使い方にかなり興味を持った俺達。
そして、初めて、孫やその友達から羨望の眼差しを受けたジジイは、嬉しそうに顔が緩んで涙目で破顔していた。
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