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申し訳ございませんでしたぁあ!

ガチで俺達を殺す気でいるのか、山伏の男が肩に担いでいた棍棒を前に構え、



「先ずはわい達からだ」



近くにいる桜田と雫へと顔を向ける。


いきなりな事態に顔を歪める桜田と雫。


俺だってマジで何がなんだか分からない。


って言うか、八千流木さんが何故に空から降ってきて此処に落ちて、なんでこんなボロボロな姿なのかとかマジで意味が分からない。



偶然にしたって、ナニこの確率のバグリ具合?


八千流木さんはシ○タで、俺はパズ○なのか?


って言うか、こんな科学で旺盛な現代社会の中、都心の、しかも住宅街に棍棒を持った山伏が居るってマジでどういう事?


って言うか、なんなのコイツ?



「八千流木さん?  コレは一体どう言う事なんですか……?」


「千羽、さん……  申し訳、ございま、せん……」


「え?」



何が?



何故か八千流木さんに謝られた俺。


そんな俺が八千流木さんにいきなり謝られて困惑している中、



「ひとぉぉぉつ!!」


「!?」



恐怖で顔を引き攣らせている桜田へと向けて、山伏が棍棒を袈裟で振り落ろす。



「桜だ──!?」



咄嗟に両腕で抱き抱えている八千流木さんから右手を離して伸ばすも、この距離では何をするにも間に合わない。



「ふぅ──」



そんな大ピンチな桜田の前へと酔っ払いがスルリと歩み現れ、



「──よっこらせっと」



振り下ろされた棍棒に頭上でクロスさせた手首を合わせて当てて、



ドゴっ!!



そのまま自身の右側に受け流した。



「──なっ!?」


「「「!?」」」



かき氷を模したと言うアホみたいな髪型をした、自身より小さくて細い女性に軽々と渾身の攻撃を受け流された山伏は、驚きの余りに棍棒を振り下ろした格好で、雫を見ながら身体を硬直させる。



「そいっ」



そんなイカれたカキ氷頭は、受け流した自身の右に伸びている棍棒を足場にして跳び上がり、



ドシィィィイ!!



左足で山伏の側頭部へとムエタイ選手の様な強烈なジャンピングキックを入れ、



「はぃよっとぉ」



そのまま足を振り抜いて、身体を捻って回転させた横トリプルアクセルからの〜、



ボゴォっ!!



勢いのついた右の踵落としを首と肩の間、鎖骨の付け根部分へと打ち込み、



「ゴガぁぁ──!?」



コンビニのエプロンをはためかせながら身軽に着地。


かき氷頭の酔っぱらいは、自身よりも大きな体格の山伏をいとも簡単に地面に這いつくばらせた。


しかもこの間僅か10秒足らず。



「「「………………」」」



ダルっダルなやる気の無い見た目からは想像ができない、雫の軽やかでアクロバティックな動きと、防御から攻撃までの自然すぎる一連の流れに一同呆然。


桜田なんて、いつもの、酒、タバコ、ゲーム、漫画でダラダラしているダメ雫との差に驚きすぎて、鼻の穴までズレ落ちまくっている眼鏡のブリッジの部分を手でキャッチしてしまっているくらいだ。



「葵ちゃんは〜〜〜──」



そんなイカれた酔っ払いのカキ氷頭は、力を溜める様に大きく息を吸い込んで脚を後ろに振り上げると、



「──私が護る!」



フンスと大きく鼻息を吐きながら地面に倒れている山伏の横っ腹へと追加でトゥーキックをお見舞いした。



「オゴぉ──!?」



なんか、山伏の横っ腹から鳴っちゃダメな感じの鈍い音が聞こえた様な……?


って言うかコイツ、魔法なんて無くても十分普通じゃねぇぞ……


コレで暗殺可能な魔法な忍術があるとか、マジで恐怖しかねぇんだけど……



ダルっダルな雫の蹴りで完全沈黙した山伏。


動かなくなって皆んなの危険が去ったのは良い事なんだけど、山伏の顔を覆っていた赤い布が捲れて、白眼を剥いて顔をこっちに向けながら倒れているってのはマジ勘弁。



今夜の夢は多分コレだな……



等と今夜のナイトメア予告に怯えていると、



「あ、あの〜……  千羽さん……」



と、八千流木さんが俯きながら声を漏らす。



「身を挺して助けて頂いた事は凄く嬉しいのですが……  ソロソロ手を放して頂いても……」


「ん?」



そう言えば蹴り飛ばされた八千流木さんを受け止めて抱き抱えていたんだったわ。



「あ、はい?」



って言うか俺の手って……



「はうぁ!?」



程良い大きさのお胸様(左)を、背後から前に腕を回して完全ホールドしている俺のけしからん左手。



ハイ!


余りにもジャストフィットな大きさに、逆に何も違和感を感じてなかったですますだす!!



抱き抱える様に背後から回していた左腕を急いで八千流木さんから放し、地面を後ろ回りで2回程転がって離れ、土下座の格好で綺麗に着地。



「申し訳、  ございませんでし、た……」



そして、額を地面に擦り付けて誠心誠意謝る俺。



今夜の夢はこっちだな……



俺の綺麗な土下座で逆に恥ずかしさが込み上げてきたのか、



「い、いえ!  べべべべ、別に大したモノじゃないですし!!  逆に此方こそ申し訳ないと言いますか!!  あっ!?  違いますよ!  大きさが申し訳ないと言う意味では無くてですね!  大きさは平均と自負していますが!  って私は何を言ってるんですか!!」


「………………」



昨日見たクールな感じが微塵も見られないくらいに、ものすご〜くテンパってた。


そして、



「申し訳ございませんでしたっ!!」



八千流木さんが徐に綺麗にピンと直立し、腰を思いっきり折って俺に深々と頭を下げた。


八千流木さんに綺麗に謝られた俺は、

  


「こちらこそ申し訳ございませんでしたぁあ!!」



反射的に再度地面に額を擦り付ける。



「いや、人ん家で何やってんだよお前ら。  謝り謝り謝り返しで、ボケにボケを被せまくってるみたいな感じで収拾つかなくなってるぞ」



酔っ払いのカキ氷頭に冷静に突っ込まれ、なんだか居た堪れなくなった。



「それで、モヤシはその人知ってんだな?」



コンビニのエプロン姿で腕を組んで仁王立ちの、いつも以上に殺気を隠そうともしない雫様。



まるで、叩き起こされた寝起き直後の不機嫌な獣か、ギラッギラの剥き出しのスペツナズナイフの様だぜ……


ってかまぁ、いきなり来た変なのに自分家の敷地をめちゃくちゃにされりゃぁ、誰だってそうなるわな。



「ハイ……  この人は刑事さんでございます……」


「ふぅーん。  そんで、人ん家に勝手に入って暴れたこの赤いヤツはなんなんだ?」


「いや、ソイツは全く知らんですます」



雫に答えながら顔を八千流木さんに向ける。



だって、絶対に俺より詳しく知ってる筈じゃん?



「って事で、刑事さん?  コレ説明してくんない?」



雫の今にも人を殺しそうな鋭い目つきに、ビクっと震えた後に少したじろぐ八千流木さん。


こんな危ないヤツに睨まれたら誰だってそうなるわな。


しかも少し涙目気味になっている八千流木さん。


その光景は正に、反社の輩に捕まった一般市民。


って言うか、八千流木さんって刑事さんだよな?


余りにも刑事オーラが薄い涙目の八千流木さん。


威圧しすぎのやり過ぎ感を感じ、マジで勘弁してやれよと言う思いもあるけど、俺だっていきなり暴行を受けた被害者だ。


ってか、なんで俺だし。


未だに左腕が少し痺れてるぞ。


でも、胸の感触とサイズ感は完全に手にも脳にも残っている。


実際は生胸の感触じゃなくてブラの感触なんだけど、この際どうだって良い!!


くんかくんか。



って事で、それなりの説明をしてもらわないとたまったもんじゃない。


ブラの説明じゃないよ?


この状況の説明だよ?


ってことで、雫よ、後は宜しく。



「刑事さん。  なんで空から降ってきた?  そして、ウチの庭を破壊したあの赤いイカれた格好のヤツはなんなんだ?」



「いや、お前の──」


「──黙れモヤシ」


「──ハイ……」



お前もなかなか十分にイカれた格好してるぞ。


と、言う言葉は心の奥底に仕舞っておくとしよう。


ってか、俺を見る目が異様に据わりすぎだろ!?


八千流木さん、マジで怯えてんぞ!



「わ、私は……」



かなり深刻な顔をして言いよどむ八千流木さん。


職務的な機密情報を雫が無理矢理吐かせようとしているってのは分かってるけど、言ってもらわないと、被害を受けたこっちも納得できない状態なんだよなぁ〜。


でも雫さんや。


もう少し穏便に……



大企業の圧迫面接よりヤバい無言の圧力をかけ続けるパワハラ雫。


もう、反社の輩に捕まった時と同じレベルくらいの恐怖。



そして、そんな雫の圧力に耐えきれずに意を決したのか、八千流木さんは怯えた視線から、『キっ!』てな感じで雫に力強い視線を返して口を開いた。




お読みいただきありがとうございます。


モチベになるので、☆とか、ブクマとかお願いします。

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