お前の性格の方が面倒くさいわっ!
「モヤシ…… お前、相当バグりすぎだろ……」
「ウルセェ。 バグって言うな。 ってか俺が知るか。 もしかしたらこれが魔法業界では無難でありきたりなヤツかも知れねぇだろ」
「いや、魔法を食う手とか、そんなんバグ以外ねぇだろ? そんなんが魔法業界で普通だったらマジで引くわ。 って言うか、そもそも魔法を食う手ってなんだよ? 自分で言っててもマジで意味が分からなさすぎるわ」
何故か雫にドン引きされている俺。
「イヤイヤイヤイヤ。 ぶっちゃけ、ドン引かれる対象はオマエだからな? 厨二全開なヤツを選んで、しかもテンプレ的に印を組んで発現させる忍術とか、厨二患者達の大好物じゃねぇか」
「うるせぇ! 誰がどう考え思おうと、私はコレで葵ちゃんを護るんだよ!」
「イヤイヤイヤイヤ。 護るどころか、トリガーハッピーでいきなりブッパして困らせちゃってんじゃねぇか。 ぶっちゃけ、俺の左手が炎を食えなかったら、お前ん家マジで燃えて無くなってたからな?」
「黙れモヤシ! お前が何とかしなくても、葵ちゃんが何とかしてたわ!」
「いや…… ソレって、結局、桜田頼みじゃねぇか……」
頭痛が痛いとはこの事か……
俺がアホとの会話で疲れ果てていると、
「それにしても、木梨氏の魔法?忍術?はなんで最初は紙吹雪だったのでござるか?」
と、桜田が可愛い所作で首を傾げた。
普通であれば醜い豚が小首をかしげて見つめるとか、瞬時にヘイトを集めて殺意が湧きまくっている筈なのに、見た目が違うと同じ所作でもこうも違うものなのか……
見た目、恐ろし過ぎる……
そんな桜田を見た雫は、顔を赤くしてモジモジしながら答える。
「うーんとね葵ちゃん。 私の能力は、組んだ印が格ゲーのコマンドみたいな感じ?でぇ、組んだ印によって技?が使える様になるみたい」
「なんでござるかそれ……?」
「全く意味わかんねぇな……」
格ゲーのコマンドってなんだよ……?
魔法の発現方法は分かり易すぎるけど、そもそも、なんで紙吹雪なんだよ……?
「そ、それと紙吹雪はどう言う関係なのでござるか?」
「うーん…… 分かんない!」
「あうゥ……」
「分かんないってお前…… お前がダウンロードしたソレにはなんて書いてあったんだよ?」
「あぁん? 沢山の印の組み方と印組んで技を出した後に対象の事象を付けろってしか書いてねぇよ。 ボケ、バグ、カス」
恐ろしい程、桜田との喋り方と態度が違うんだが……
「……そんで、技の紙吹雪が出た後にライターで着火して火の事象を付け足したと?」
「まぁ、そんなとこだ。 ってか、聞かずに察しろモブ」
「………………」
マジ、で、なんなんだよ、コイツっ!?
って言うか、それだったら俺の魔力もライターで火を着けたら燃やせるのか?
「他にはなんて書いてあったんだ? って言うか、お前の言い方だと、付ける事象の種類も一緒に書いてあったんじゃねぇか?」
「あん? そういや書いてあったな……」
もしかしたら、マジで俺の魔力にも雫がやったみたいに後付けで事象を付けられるんじゃねぇのか?
雫は喋って喉が渇いたのか、新たなロング缶へと手を伸ばして飲み始める。
「そこを詳しく」
「プハー! やだ。 面倒くさい」
「「………………」」
コんノ!?
酔っ払いがぁぁぁあ!!
お前の性格の方が面倒くさいわっ!!
「木梨氏。 僕もソレには興味があるでござるよ」
「うん! ちょっと待ってね!」
桜田の鶴の一声でスマホを弄り始めるチョロい雫。
ってか、この酔っ払いにはマジで殺意しか湧かない。
スマホで自身がダウンロードしたものを読んだ雫が言うには、
火には火を──
水には水を──
風には風を──
土には土を──
目を凝らせ──
原初の属性は己が周りの至る所に存在する──
印を組み、己が心の思うがままに属性を感じ付与せよ──
って事らしい。
もしかして、一番まともそうな本じゃねぇのかコレ……?
「印のコマンドはダウンロードしたヤツにリストがあって、先ずは火系の技を試してみたいなって事で、書いてある技の印を組んだ後にライターでなんとなく火をつけてみた」
「いや、それだと火系一つをとっても、凄い数の技のコマンドがあるって事じゃねぇか?」
トータルで考えたら、ぶっちゃけ、辞書レベル、いや、それ以上のリストって事なんじゃねぇか?
「あぁ。 技のコマンドがクッソ沢山あって、あんなん読みきれんし覚えきれんわ」
「って事は、スマホにダウンロードされているPDFから、都度使いたい技を検索して、その印?コマンド?を組まなければならないのでござるか? それか、一つずつ覚えていかなければならないのでござるか?」
桜田の言っている事は尤もだ。
雫が読みきれないと言う程の数なんて覚えきれる訳がない。
「完全厨二を匂わせていただけあって、相当気合と根性が入ってないと技一つ真面に出せねぇじゃねぇかコレ……」
「アホか。 私にゃそんな膨大な数の技を覚える気合いも根性もねぇよ」
「「………………」」
「いや、お前…… さっき桜田を生涯護るとかって言ってただろ……」
鳥アタマかよ……
マジで単なる酔っ払いじゃねぇか……
「バーカ。 そんな数をいちいち覚えなくても、さっき組んだ最初の印で全部頭の中に入るんだよ」
「はぁあ?」
「なんでござるか、そのチートっぷりは……」
「あ、そういや言い忘れてたわ」
「「………………」」
いや、ソコ一番大事なトコじゃねぇか!?
「最初に何か一つ技の印を組んで属性を付けたら、後は技のコマンドが全部頭の中に入るんだってよ」
「チート過ぎるでござる……」
「いや、イカれたステッキ一つでホイホイ魔法を使いまくっているお前が言うなよ……」
アンケートみたいなものに答え、ワンド一つでホイホイ魔法を使えている桜田に、お前がそれを言うなとジト目を向ける。
「まぁ、技のコマンドを覚えられても、属性を自分で探して付けなきゃなんないから、葵ちゃん程チートじゃないよ」
それでも、俺から見れば雫のヤツも凄いとしか言いようがない。
「んで、その中に面白いものがあってさぁ」
雫はそう言いながら、右手の人差し指と中指を立て、中指に人差し指を絡める様にクロスさせ、
「【万象】!」
徐に技名を呟くと、
「紙?」
「折り紙?」
交差させている指と指の間に真っ白な折り紙みたいな2枚の紙が現れた。
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