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ドヤ!

イカれ二人に何故かディスられている俺。


俺が正しいのかコイツらが正しいのか、もう、何が何だか訳ワカメ……


全部正しくて全部いい。


もうそれでいいかな……?



「それで、この残った3つから選べば良いのか?」



そう言いながら雫が自分のスマホの画面を指差す。




【心技体! 魔法剣士 虎の巻!】


【育め! Love 聖職者の極み!】


【ニンニン! 魔法で忍者になるってばよ!】




「そうでござる。  タップすれば選んだタイトルのPDFファイルがダウンロードされるでござるから、それを読めばタイトル通りの不思議なチカラがゲットできるでござる」


「ほぉう。  タイトル通りねぇ〜」



経験者は語る的にドヤ顔で説明している桜田は気づいていないんだろうけど、雫の顔がメチャクチャ怪しくて悪そうな顔になっている。



コレは桜田をモノにする為にLove一点狙いか……?


って言うかダメだろ……?


アイツが聖職者とか絶対無理だって……


よくて生殖者か生食者の方だって……




残ったものはどれをとっても雫に与えて良いものではないと言う事は確かだ。


って言うかもう、考えるのも面倒になってきたから、この責任は桜田に取ってもらうのが一番だな。



「う〜ん。  どれにするかな〜」


「………………」



そして、雫の中ではもう既に決まっているのか、めっちゃ抑揚のない如何にもな声色で悩むフリをしている。



「そんじゃまぁ、どれを選ぶかって前に、先ずはお前らの魔法がどんなモノなのか見せてみろよ」


「え──っ!?」


「な──っ!?」



コイツ!?


酔っ払いのクセになんて安全思考なヤツなんだ!?


俺達が出来る事を見てから選ぼうって腹積りなのか!?



桜田は俺と同じ事を思ったのか、驚愕の表情をバって俺に向ける。



「人を散々ディスっておいて、自分はそう言う事すんのかよ……?」


「はぁ?  んなの常識だろうが?  何処のバカが前情報無しでこんな怪しいヤツをホイホイ選べるっつうんだよ?」


「ぐぅっ──!?」



そんな雫のド正論に、ノリと願望剥き出しで選んだ桜田が悔しがる。



って言うか、悔しがって『ぐぅっ』て言ったヤツ初めて見たわ。



正論を述べる雫と同じ考えの元、あのリストの中でもかなり無難なヤツを選んだ俺が言うのもアレだが、



「チキンかよ……」


「一番無難なモンを選んだ腰抜け野郎に言われたかねぇよ」



グハァ!?


おかえりなさい!!



見事にブーメランが帰ってきて深々と突き刺さってしまった。



「オラ!  さっさと見せろって!  時間は有限なんだよ!」



夏休み中とは言え、こんな真昼間からロング缶の世話になっているヤツに時間の概念について正しく説き伏せられるのはマジで腹が立つ!



「クソ……  酔っ払いのクセにド正論を言いやがって」


「ホレホレ。  先ずはお前からだモヤシ。  無難ってのがどんくらい無難なのか見せてみろよ」


「俺が先なのかよ!?」


「あぁん?  んなの当たり前だろ?  メインディッシュってのは後からやってくるもんなんだよ。  別に先に葵ちゃんのヤツを見ても良いけど、無難を選んだ自分が惨めになるだけだぞ?」


「ぐぬぬぬぬぬぬ!」



完全に的を得ているだけに、雫の言葉にマジで腹が立つ!



「クッソ!  そんじゃ見せてやんよ!  無難の底力ってヤツを、おまえらにとくと見せてやんよぉぉぉおおお!」



雫の正論に対してなのか、それとも無難なモノを選んだ自分に対してなのか、行き先が分からない怒りのベクトルが俺の左手へと集中する。



「先ずはコレだっ!」



俺が左手の平を雫へと向ける。



「ウッハ!  ダッサ!?  なんなんだよソノ頭の悪そうな落書きは!」



雫がチューハイを口にしながら俺の左手にある黒い線を見て盛大に馬鹿にするが、



シュコぉぉぉォォォォオ──



魔素呼吸をして左手の口をぐわぱぁって開き、



「ブボォォォォォォオ──!?」



雫は飲み込もうとしたチューハイを桜田に向かって吹き出し、



『コンニチワ』



「ヒィィィイ!?」



腹話術で止めを刺す!


腹話術で恰も喋っているかの様な俺の左手に雫が盛大に恐れ慄きベンチから転げ落ちた。


雫にチューハイをぶっかけられた桜田は、何処ぞの仏像の様に半目になっていて、



「紅葉氏……  なんでソレをしたでござるか……」



自分の着ているピッチピチなTシャツの裾を無理矢理引っ張って顔を拭いながら、呆れた表情を俺に見せる。

  


「いや、なんとなく……  無難、無難って言われまくったからつい……」


「いや、気持ちは分からなくもないでござるが……」


「ななななな、なんだよソレ!?  なんで手に口があって喋ってんだよ!?」



ロング缶片手にイキっていた雫は、俺の左手にかなりビビっていた。



「いや、なんて言うか副作用?」


「はぁあ!?」


「まぁ、俺が得たのは、魔法を使う為の基礎みたいなヤツでだな──」



そう言いながら右の掌から魔力のモヤモヤを発現させる。


フわぁ〜ってな感じで柔らかく噴き出された、透明でキラキラと虹色に輝く俺の魔力。


そしてやってくる消失感。



「うわぁ〜……  綺麗ぇ〜……」



そんな俺から発現された魔力を見た雫は、まるで、ユニコーンや妖精を信じている夢見る少女みたいな反応を示した。



「──そんで、コレでこう言う事が出来る」



俺は慣れた様に四角錐をイメージし、右の掌に透明でキラキラ輝く小さなピラミッドを発現させる。



「ナニソレぇぇぇえ!!  スッゲぇ綺麗ぇぇぇえ!!」



まるで宝石の様な水晶の様な魔力の塊を見た雫は、逆に今度は物欲MAXな物欲しそうなギラついた視線を俺の掌の上に向ける。



「「………………」」



余りにも分かり易すぎる雫のリアクションに俺と桜田は無言となる。



「……とまぁ、魔法って言っても無難なモノを選んだ俺は、魔法の基礎である魔力のコントロールしか出来なくてだな。  そんで、自分の魔力を使ってこう言う風に何かを形成させる事が出来る」



何故か自嘲気味に答える俺。



「ソレと──」



今度は左手に四角錐を乗せ、



ボリっボリっボリっ──



「──こうやって発現させた魔力を自主回収できる」


「ぬぅおっ!?」



左手に四角錐を食わせた。



左手の口が魔力の塊を咀嚼する光景を見た雫は、驚き慄き表情を凍りつかせる。



そんで、



「魔力のコントロールを覚えている途中で何かミスったらしく──」



四角錐を咀嚼し終えた左手の口で『ぶバァぁぁぁ』ってな具合で真っ黒な魔力を吐き出させると、



「──変な魔力が出せる様になった」


「「………………」」



俺の左手から吹き出された漆黒のモヤモヤを見た雫と桜田の表情が固まった。


目を疑う程の驚きの黒さ。


反対側に座っている雫と桜田の顔が見えない程に黒い。


何度見てもクロ過ぎてヤバイ。


シゲルの肌が白く見える程黒い。



「そんで何故か──」



ささっと真っ黒な四角錐をイメージして発現させ、



「──ホレ」



段々と晴れていく漆黒のモヤモヤを霧散させながら、ポイって雫へと投げ渡す。


それに気付いた雫は、なんて事は無いと言った具合に片手でパシっと格好よくキャッチするが、



「ふごぉおっ!?」



予想してなかった重さに女の子らしからぬ声を上げる。



「巫山戯っ!?  こんの、クソモヤシぃぃぃい!!  こんな人を殺せそうな重さのモノを軽々と投げ渡してくんじゃねぇ!!」



自身も経験したからなのか、雫に同意する様にコクコクと無言で頷く桜田。


俺は狼狽える雫の手から漆黒の四角錐をヒョイってな具合に指で摘み、まるでコインを弾く様にしてピンって親指で上に弾いた後に左手でキャッチしてそのまま食わせる。



「オマっ!?  ソレっ!?  重くねぇのかよ!?」


「ん?  あぁ。  俺には全然全く重さは感じないな」


「なんだよソレ……」



雫は自分の手の平に残る重さで赤くなっている痕を見て驚愕する。



「そんで、この前、赤装束に襲われた時にこう言うのも作れる様になった」



俺は眼を瞑って赤装束の男が持っていた西洋剣をイメージする。


コレも不思議な事なんだけど、一回イメージして発現させた魔力の塊は、まるでイメージの基礎やテンプレが出来上がって俺の中に保存されたみたいな感じで、何故か2回目以降は簡単にイメージが纏まるんだよ。


数秒の集中を経て、俺は左手の平から右手で何かを握って抜き出すかの様に右手の拳の横をくっつけた後にゆっくり離す。


俺が左手の平から右手を離していくと、俺の手と手の間に漆黒の剣が現れた。



ドヤ!



そして俺は、唖然として言葉を失っている雫達へと向けて盛大にドヤ顔を見せた。



ドヤっ!!




お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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