表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/168

俺かいっ!

チューハイを水の様に煽る雫は、酒の肴と言わんばかりに桜田の話へと耳を傾ける。


そして、



「ンだよソレ!?  お前らメチャクチャ楽しそうな事してんじゃねぇか!  魔法でバトルとか胸熱じゃねぇか!」


「「………………」」



と、俺達がペアルックな部分についてはガン無視し、俺達が襲われた部分に興味を剥き出しにしまくった。



ペアルックよりそこに食いついたのかよ……


そう言えばコイツ、武士の家系の血を引いた生粋の戦闘民族だったわ……


可愛い顔と細い体型ですっかり忘れてたわ……



桜田の話を聞いた雫は、切れ長の目をギラつかせながら俺を睨み、



なんで俺が睨まれてるし……



「モヤシぃ!  私にもソレ寄越せぇ!」



そう言いながら2本目となるチューハイロング缶のプルタブを開け、グビグビと一気に煽る。



またしてもロング缶で今度はピーチ味か……



「ど、どうするでござるか紅葉氏……」


「俺は知らん。  お前が決めろ」


「何故に僕が決めるのでござるか!?」


「葵ちゃん。  私にもちょ〜だいっ!」



そんな軽く酔い始めた雫が席を立ち、右手にタバコ、左手にロング缶を持って背後から桜田の首に腕を回す。



「ホレ。  名指しだ。  頑張れよ葵ちゃん」



一見、人目を気にしないバカップルっぽく見えるが、



「ぐぅえぇぇぇえ!?  グビがぁぁぁあ“!?」



桜田は思いっきり首をキメられており、嫌と言えない状況に追い込まれていた。


そんな桜田は必死な顔で雫の腕を数回素早くタップ。


不敵な笑みを浮かべながら桜田の首から腕を外す雫。



「さぁあ!  はよっ!」



ダン!



とロング缶をテーブルへと叩きつけて置き、ポケットからラメでキラキラにデコられたウサギ柄のスマホを取り出した。



「も、紅葉氏ぃ……  僕から木梨氏にあのサイトを送るのでござるか?」


「お前が送れよ。  お前は名指しを受けて雫を拒否しなかったんだ」


「あの状況でどう拒否できるでござるかぁぁぁあ!」


「グズグズすんな!  早くしろよ葵ちゃん!」


「うぅぅ〜……  僕、木梨氏の電話番号もメアドもチャットIDも知らないでござるよ……」



因みに俺は知っていたが、コイツの場合、敢えて今まで教えていなかったと言うのが正解であって、



「葵ちゃん!  私の番号はコレコレコレで!  メアドはコレコレコレで!  チャットIDはコレコレコレ!」



コレがチャンスと言わんばかりに、雫が速攻で桜田へと自分の連絡先を教え始めた。


ぶっちゃけ、桜田の連絡先を入手できる事の方が雫に取っては大収獲なんだろうな……



「木梨氏。  ちょっと待つでござるよ。  今、ステ垢作るん──」



しかし、馬鹿な豚はこの流れの中ステ垢でこの場を乗り切ろうとしたらしいが、



「──でごあぁぁぁあ!?」



くわえタバコをした雫は、ソレをさせまいと桜田のデカい顔にアイアンクローを決めながら冷たい視線で桜田を見下ろす。



「そんなの、必要ない、だろ?  葵、ちゃん?」


「あがががががが──!?  は、はひぃ!  今すぐ送りますでござります!」



桜田はアイアンクローを決められながら、震える手でもって雫へと急いで某サイトのURLを送る。


それを監視するかの様に見ていた雫は、反対の手にあるスマホへの着信を確認すると、ニタァ〜って凶悪な笑みを浮かべながら桜田の顔から手を離した。



桜田、終わったな……



心の中で合掌し、桜田が毎日を強く生きて乗り切れる事をお祈りしておく。



「キタキタキタぁぁぁあ〜!」



メチャクチャ嬉しそうに自分のチャットアプリを確認する雫。



遂に手に入れた桜田のチャットIDの喜びが大きく見える様に感じるが、俺は何も感じなかったし何も見なかった事にしておく。



「木梨氏……  それで、そのURLを、開くでござるよ……」


「まぁ待てって♪  そんなに急ぐなよ♪」



そう言いながら雫がスマホに何かを打ち込んで、満足した様な満面の笑顔で桜田へと顔を向ける。



「…………」  



桜田はそんな雫に腑に落ちないと言った様な視線を向けているが、



「──!?」



連続して振動した自分のスマホの画面を見て驚愕の表情となり、そしてソッとスマホを鞄の奥底へと仕舞った。



「さぁさぁさぁあさぁあ!  雫さんは色々とテンションが上がってきましたヨォ!」



アルコールのせいか桜田のチャットIDをゲットできたせいかは知らないが、雫のテンションは爆上がり中。


逆に桜田のテンションは底値がまだまだ見えてこない程ダダ下がり中。


放っておけばこのまま自殺してしまいそうな、死相が顔いっぱいにこびりついている様な表情になっていっている。



「ウッハー!!  ナニこの痛いサイトっ!!  どう言う風に探せばこんな痛すぎるサイトに辿り着けるんだよ!」



雫が揶揄う様に桜田へと顔を向けるが、桜田は自分じゃないと言う強い意志を込めながら不細工な顔を俺へと向ける。



「こっち見んな豚!」


「痛い!  痛すぎ!  モヤシ痛すぎぃぃぃい!」


「うるせぇ!  偶々見つけたんだよ、偶々っ!  そんなサイト、わざわざ狙って行けねぇよ!」


「ハイハイ。  そう言う事にしておくわ〜」


「そう言う事ってどう言う事だよ!  マジで偶々だからな!」


「ハイハイ。  痛い痛い」



ホント!


見つけた俺が痛いヤツ扱いされるのってマジ心外!


痛いのはこのサイトであって、断じて俺じゃないから!



雫の中で俺が痛いって事で確定して、既に俺から興味が失せたのか、我関せずと言わんばかりに無視無言でチューハイを飲みながらスマホを弄る。



ナニこの桜田との扱いの差!?



そしてスマホを弄っていた雫が、



「なぁ、葵ちゃん?  ココとココんところが暗くなってんだけど?」



此処ぞとばかりにアグレッシブに桜田へと身体を近づけて質問するが、桜田は磁石の同じ極同士の様に逆の方へと離れていく。



って言うか多分アレだ。


俺と桜田が選んだヤツだ。



「あ〜、えぇっとでござるなぁ〜……」



そして何故か言い淀む桜田。


そりゃそうだ。


消えてるのは無難なヤツとキワモノなヤツ。


って事で、これ以上俺が痛いヤツって思われるのも癪だから、



「あ〜。  ソレな。  俺と桜田が選んだヤツだ」


「そうなん?」


「因みに俺が選んだのは魔力のヤツな」



桜田にはキモく死んでもらう。



「うわぁ〜。  マジかぁ〜」



そして雫がドン引きした様な声をあげながらスマホから顔を動かし、



「お前、無難すぎてつまんねぇヤツだな」



俺かいっ!



「………………」


「こんな時はネタモノ選ぶのがセオリーだろうが?  お前みたいなヤツがMMORPGのアバターで普通に無難なお洒落な格好してんだよなぁ」


「木梨氏。  ソレすっごく分かるでござる。  なんて言うか、遊んでるのにハジけきれてないと言うか、ゲームにリアルを引き摺っていると言うか」


「そう。  ソレソレ。  非現実で現実に寄せてくる辺り、クッソつまんねぇ考えなヤツだよな」


「そうでござるな。  そう言う人は、大抵ステータスを満遍なく平均的に上げて、なんの魅力も尖りも無いでござるな」


「だよなぁ。  マジで生まれついての有象無象ってヤツ?  マジモブだよな」



なんで俺がディスられてんだよ……



「って事は葵ちゃんは魔法少女のヤツ?」


「そうでござるよ!  本当に魔法が使えるのでござるよ!」


「ウヒョー!  スッゲー!  イイなぁ〜!」



なんなんだよコイツら!?


殺意が湧いてくるくらい息ピッタリのラブラブっぷりじゃねぇか!!




お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ