それ以上考えるのはやめた
俺が考えていた、おジジとマギアの実験。
結果から言うと成功?した。
「「「………………」」」
したんだけど……
マジか……
昨日のピラミッドダンジョンで左手に魔石を食わせた時の感触は、密度が薄い感触はあるけど、ダークマターと同じく、普通に左手で吸収できた。
って事は、ダークマターと同じ?なのではって事で、
「おジジ。 コレをマギアで吸収してみて?」
ダークマターの塊を発現させておジジに見せる。
「モミジの理の塊をじゃと?」
「そそ。 実験」
「う、うむ……」
腕がないおジジの代わりに、俺がダークマターの塊をマギアにくっつけてあげて、
「いくぞ?」
「バッチ来い!」
おジジがマギアを操作する。
すると、
「おぉ…… 吸収しおった……」
「できた、な……」
俺のダークマターは普通にマギアに吸収された。
「そんじゃ、次に、アンナ」
「ん? ボク?」
「うん。 アンナの理の塊も、俺のと同じ様にマギアに吸収できるかやってみたい」
「うん。 分かったよ」
アンナが胸のあたりに両手を持ってきて、20cm程の隙間を開けた状態で掌同士を向かい合わせ、理力を操る。
そんでもって、アンナの手と手の間に半透明気味な黄色い塊が現れて、ソレをアンナがササっとキャッチする。
「はい。 できたよ♪」
と、同時に俺に手渡された、
「ありがと」
アンナの理の塊。
半透明な黄色の中に、紫とオレンジと青が、プリズム発光みたいにチラチラテカテカキラキラしている。
なんて言うか、見たまんま、雷とか電気の塊なソレ。
俺の濃厚でガッチガチなダークマターとは違って、少し力を入れれば、直ぐに壊れそうな儚さを感じる。
これが、神格者の線の数の違いって事なんだろう、多分。
それに、
「なんか、触っててピリピリするんだけどコレ……」
アンナの理力の塊に触れているだけで、なんか、漏電しているPCに触れたみたいなアレな感じがしている。
「そりゃぁ、ボクの理の塊だからね」
「あ、そう言う事ね…… そんじゃ、おジジ、これは吸収できる?」
さっきと同じ様に、アンナの理力の塊をマギアにくっつけて検証。
「うむ…… できるのぉ……」
「できるんかい……」
暫定だけど、理力の塊も、虚無からとれる魔力でできた魔石同様にマギアに吸収できた。
「って事は、魔力が理力なのか、理力が魔力なのかって問題が出てきたな……」
「モミジ。 これは、なかなか興味深い実験ぞ。 今まで、魔力と理力は全くの別物と考えられておったが、実は、ソレらは同じ根源と言うことになるやもしれぬのぉ」
「うん。 でも、このマギアが理力と魔力の2種類に対応できるってだけの物なのかもしれないから、今すぐには2つが同じ根源だって確定はできないよね?」
「確かに」
「まぁ、取りあえず、俺がダークマターを作りまくって、おジジのマギアにブっ込んでいくわ」
「あい分かった」
って事で、ここから流れ作業開始。
左手に発現させたダークマターを右手で取ってマギアに当てる。
ソレをおジジが吸収させていく。
小一時間くらい続けてみて、
「おジジ、義手発現できそう?」
進捗を確認。
「うむ…… 問題なさそうじゃぞ?」
「おk。 そんじゃ、魔力とか神経で繋がる感じのイメージと一緒に、義手を発現させてみて?」
「分かった」
おジジは相槌を打つと同時にスッと目を瞑った。
集中して、俺の注文通りのイメージを纏めているんだろう、多分。
異能を手に入れて、俺が初めの頃にやっていた様なおジジの一連の動作を見ていて、ホント、マギアの性能は、理力の第一段階、線1本分と同じって事を感じた。
めちゃくちゃ集中しているのか、静かな時間が流れていく。
静かで、無音で、やる事なくて、暇だから、スマホでこの様子を録画しておく事に。
スマホの録画機能を起動させて数分後、
「いくぞ」
おジジが急に目を開けて、マギアに魔力を通して発動させた。
瞬間、マギアが光って霧散して、
「おぉ……」
「え? どうなったの? ボクにも教えてよ?」
おジジの両腕に光が集まって、
「義手、発現できた……」
漆黒の骨みたいな、ロボットのフレームみたいな腕が現れた。
「ふぅ── 歳を取ると、イメージを練るのが億劫だわい」
「ってか、おジジの顔が……」
「んん? ワシの顔がどうした?」
「モミジ? 何か問題?」
「なんて言えば良いのか…… 何故か、おジジが若返った……」
「は?」
「え?」
何がどうなってるし!?
なんで若返ってるし!?
スマホの録画を止めて、写真を撮って、困惑しているおジジに見せる。
「ふぁぁあ!? ホントじゃ!? 若返っておる!?」
おジジの、ほぼ、骨と皮だけだった顔が、渋いダンディーなオジさんになっていた。
ってか、おジジはビックリして、無意識に発現させた義手を動かして、自分の顔を触りまくっている。
「義手も動いているし……」
「おぉ!? ホントじゃ!? なんの違和感もないから、ついついいつもの様に動かしておったわ!?」
「マギアの義手は成功だな…… でも、なんで若返ってるし……」
色々と考えてみたけど、多分、俺の不老不死が影響しているっぽい……
取り敢えず、俺が不老不死って言うのは秘密にして、若返ったのは謎と言う事にして、それ以上考えるのはやめた。
この後、足もアンクレットとかパワードスーツの義足みたいな感じでマギアを発現させて、おジジは1人で歩いたり、両手を使う事が出来る様になった。
「「「………………」」」
いやもう、なんて言うか……
おジジ、見た目、別人になってんじゃん……
そんなおジジは、マギアで発現させた手足をめっちゃ気に入って、
「腰が軽い!! 肩が上がる!! 膝が曲がる!! 本当に最高じゃなコレは!!」
ってか、若返った事でテンションが上がりまくっていて、
「モミジよ! 後生じゃから、この若返った状態で、もう一晩、この宿のベッドで寝かせてはくれぬか!! 身体の張りを気にせずに、この柔らかなベッドを堪能したい!」
「……じゃ、じゃぁ、今晩だけだぞ?」
「おぉ!? すまぬ!! 恩に着るぞ!」
子供みたいに、広い部屋の中を忙しなく歩いたり、身体を捻ったりしているおジジ。
取り敢えず、良かったね。




