怒りがブチ上がるどころじゃ済まなくなった
最後の壁をブチ抜いて、ダークマターのドリルを解除したら、
「アンナぁっ!!」
「モミジぃ!!」
やっと、我が、
「「!!」」
愛しの嫁へと辿り着いた。
テレビとか映画を観てて、出会った瞬間に場所を弁えずにハグするとか、んなリア充臭すぎる事とか現実であってたまるかよって思ってたけど、
「もう、絶対に離さない!!」
「ボクも、絶対にモミジから離れない!!」
まさか、俺自身がそう言う事をするとは思ってもいなかった。
しかも、ナチュラル且つ、無意識に。
けど、虚無はそんな甘々なラブシーンとかに配慮も遠慮もする筈もなく、
「ウッゼー!!」
「邪魔っ!!」
久しぶりの出会いを喜ぶ俺とアンナに瞬殺される。
俺がメッシュボールで虚無を押し出し、押し出された虚無をアンナが雷で貫く。
空中都市で、虚無を倒すのが面倒くさい時にやっていた、俺とアンナのコンボ技。
しかも、メッシュボールに高圧電流みたいな雷が纏わりついていて、虚無共は触れた端からアババアババして硬直し、メッシュボールから現れたトゲトゲに串刺しの刑。
トゲトゲも雷でバリバリしているから、即死でお願い宜しくございます無双。
正に俺とアンナの愛の結晶。
あまりの愛おしさに、お互いの唇が重なろうとしたところで、
「「「………………」」」
おジジと目があった。
「いや、ワシを気にせず続けてどうぞ。 うむ。 若いとは良いものよのぉ」
「「………………」」
そう言われて続けられる訳もなく、
「助けにきました……」
「モミジ、きました……」
泣く泣くハグを解除。
何が楽しいのか、おジジは、
「ホッホッホッホ──」
って笑ろっておる。
ってか、そんなおジジ、
「腕が──!?」
両腕がない!?
ってか、両足の健も切られている!?
「エルフ共にしてやられたわ……」
「あんの、クソ野郎──!!」
肩口からバッサリ両腕がなくなっていて、コレをやったであろうエルフへの怒りがとめどなく溢れてきた。
「ワシが両手両足を使って魔法陣を描くのを阻止するためじゃな……」
「エルフ、駆逐でおk?」
「ボクはおk。 ってか、絶対許さない」
「ワシも異論はない」
そしておジジの両腕が斬り落とされて、両足もダルンダルンになっているんだから、もしかしてって思って、アンナを足元から調べるようによくよく見ると、
「アンナ…… もしかして、目が……」
綺麗な翡翠色だった目が白っぽくなっていて、
「う、うん……」
なんだか視線がぎこちなかった。
「アイツら──!? よくも──!!」
一瞬にして怒りがブチ上って天元突破して、瞬時に色々な復讐方法が頭の中を駆け巡る。
「すまんなモミジ。 今のワシの手持ちでは、武御雷の傷を治してやる事しかできなんだ」
「見えなくても、能力で回りの探知とか把握はできているから、取り敢えずは問題ないよ……」
「いや、問題しかねぇし……」
怒りがブチ上がるどころじゃ済まなくなった。
「空中都市に戻れれば、ワシが絶対に武御雷の目を治してやる。 オマエや武御雷を巻き込んでしまった事、ワシにできる限りの罪滅ぼしをさせてくれ」
「ガラクシャ様。 治癒特化の神格者のリリマナに頼めば、ボクの目もガラクシャ様の腕も治ると思いますので。 そこまで気負わないでください」
能力の雷で本当に感知できているのか、アンナが地面に座っているおジジに近づいて片膝立ちで屈んで、胸に優しく手を当てる。
「本当に、すまん……」
かき消えそうな言葉を吐きながら、アンナに頭を下げるおジジ。
アンナのおジジへの心遣いは分かるけど、
「取りあえず、此処から出る」
全く関係ないアンナの目を潰したエルフ共は、連帯責任で駆逐決定。
こんなん、俺が自重するとかしないとかじゃない。
さっさとこのクソウザいダンジョンから出て、即行で空中都市に行って、ササっとアンナの目を治す。
そして、クソエルフの住処に復讐しに行く。
「アンナ。 ごめんだけど、おジジを頼んでいい? 大丈夫?
「うん♪ 任せてよ♪」
「先ずはさっさと此処から出る!」
怒りで筋肉が張って、カチコチに凝り固まった首を横に傾けて『ゴキっ──』って骨を鳴らしてすっきりして、
「塗りつぶせ!!」
足元からマジの自重なしのダークマターを発現させて、ダンジョンの出口を探す。
外にも ダンジョンに向けてダークマターを這わせていた。
って事は、そこと ダンジョン内のダークマターが繋がったところが出入り口だ。
ってか、壁とか柱が邪魔でウザイから、
「そんで、真っ平らにでもなっとけ!」
ダークマターで壁をぶち壊しながら、虚無を排除しながら、 ダンジョン内にダークマターを敷き詰める。
そして、
「あった!」
外との繋がりを見つけて、
「アンナ、しっかり捕まっていて!」
「う、うん」
右側でアンナを抱きしめて、
「おジジ、雑でゴメン!」
「う、うむ」
左手で腰におジジを抱えて、
「ソレじゃ、行く!」
身体に纏ったダークマターを操作して、漆黒に染まった、殺風景なダンジョンを飛んで行く。
俺のダークマターの黒なのか、 ダンジョンの出入り口の黒なのかも分からない闇の中へと突っ込んで、
「っしゃぁあ!!」
「顔に光を感じる!!」
「外かっ!!」
ピラミッドが見える外へと飛び出した。
朝に入った ダンジョン。
空には赤い太陽が地平線へと沈みかけていて、もう直ぐで夜の帳が降りようとしていた。
流石に今から日本に向かうのも厳しいから、今日はエジプトで一夜明かすしかない。
「ソレじゃ、休めるとこまで飛ぶから、もう少しこのままで」
「うん」
「うむ」
雫に自重するな言われたから、ガードがいるゲートも通らずに、そのまま空に飛び立つ。
そして、見栄えが良いホテルっぽいのを眼下に見つけたら、そのまま下降してホテルに到着。
昨晩の件もあり、何処にエルフの手のものがいるかも分からないから、アンナと手を繋ぎ、おジジを脇に抱えたまま、ロビーのカウンターでチェックインの手続きをする。
「1番、景色が良いくて、3人一緒の部屋を1部屋お願いします」
ホテルのスタッフは、
「か、畏まり、ました…… それですと、スペシャルスイートになられますが……」
「その部屋、3人で泊まれますか?」
「は、はい。 広さは3名様でも十分お寛ぎ頂けます」
「んじゃ、ソレで」
「か、畏まりました……」
そんな俺の姿に終始ドン引きしまくっていたけど、
「お支払いは、如何致しますか?」
「シーカーカードでお願いします」
「畏まりました……」
金の力で物理的に黙らせてやった。
案内された部屋に入って、
「アンナ、シャワー浴びてくれば?」
「うん♪ そうするよ♪」
アンナを気遣って直ぐにお風呂に入ってもらって、
「あー、ルームサービス良いですか?」
ルームサービスで新しい着替えを用意してもらう。
「地上世界の宿は、中々に良いものよのぉ」
「まぁ、コレはお金にモノ言わせてるからなんだけどね」
「ほぅ。 モミジは地上世界では裕福なのか?」
「強制的な臨時収入で、今は得てせずに懐がホクホクかな」
「なんか、不穏な物言いじゃやな……」
多分って言うか、絶対、おジジも雫の言動にはドン引きする事間違いない。
そして雫から連想して考えていた事を思い出して、ポーチからスマホを取り出して、急いで雫に連絡する。
「オイ。 アンナ達の救出成功だ。 そんで、至急頼みがある」
って事で要件を伝え、了承を貰い、直ぐに対応してもらう事に。
「ありがとう。 明日には日本に向かうから、着いたら連絡する」
スマホを切っておジジを見る。
「おジジ、良いモノが直ぐに届くから、ゴメンだけど、風呂とかはちょっと待ってて」
「助けられたうえ、こんな使えぬ身体となったワシを、こんなにも素晴らしい部屋で寛がせてもらっておる。 モミジが待てと言うのであれば、幾らでも待とうぞ」
「そんなに大袈裟に考えるなって。 おジジが喜びそうな良いものが直ぐに届くから、ソレが来るまでゆっくり休んでて」
「すまんのぉ…… では、少し休ませて貰うとするかのぉ」
「喉渇いたり、何か欲しいモノがあったら遠慮なく言って」
「うむ。 ありがとう」
おジジは余程疲れていたのか、フッカフカのベッドの上で、直ぐに意識を手放した。
おジジが眠って少しして、ルームサービスがアンナとおジジの新しい着替えを持ってきてくれた。
今のアンナ達の格好は空中都市の格好だけど、シーカーって見えなくもないけど、流石に2週間以上も同じ服ってのは厳しい。
そんで、俺が雫に頼んだモノも一緒に届いた。
ソレはおジジ起きてから渡すとして、シャワー中のアンナに着替えを渡しに行く。
今は目が見えなくて、服のデザインは見れてないけど、地上の服の着心地に喜ぶアンナ。
そんな目が見えないアンナの着替えを手伝う俺。
今はおジジも一緒の部屋にいるから、裸のアンナを見て必死に湧き上がってくる理性を抑えた。
俺、我慢!
俺、我慢できる子!!
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