俺も配慮してやらねー!!
俺の自重なしブッパによってピチュンされた虚無は、
「こっちの虚無も消えるんだな……」
空中都市の虚無と同じく、文字通り黒い霧となって霧散してピチュンした。
でも、
「ナニコレ……」
空中都市の虚無とは違って、
「石?」
なんか、見覚えがある、親近感を感じる、真っ黒な、水晶みたいな、石みたいなのを残して消えた。
「………………」
幅3cm、長さ10cmくらいの6角柱なソレを手に取ってみたところ、
「ダークマター?」
俺がいつもお世話になっているダークマターにクリソツ。
試しに、左手からダークマターで同じような6角柱を発現させて見比べてみたけど、
「ダークマターじゃん……」
俺が発現させたダークマターは、理力がギッチギチに詰まっている感じで、拾ったヤツは、スッカスカな感じがするダークマター。
なんて言うか、粗悪品と良質品的なアレ。
って事で、左手に俺が発現させたダークマターをリサイクルさせた後、
「イケるのかな?」
拾ったヤツもリサイクルしてみたところ、
「できんじゃん……」
普通に左手が食いやがった。
「………………」
そして、桜田とウP主が言っていた、マギアの説明を思い出す。
『ダンジョンの虚無からドロップした魔石をマギアに吸収させると、マギアがレベルアップするんでござるよ。 そんなレベルアップしたマギアに、利用者によるイメージと魔力を込めたら、上がったレベルに比例して、マギアを武器や防具に変身させられるでござる!』
『これで誰もが虚無と戦うことができるよ! 疑似的な箱の眷属だよ!! まぁ、最初の頃は、リソースが少ないから虚無を倒すための武器になってしまうけど、マギアがレベルアップすれば、次第に防具とか武器のアプデに余剰のリソースを回せるようになってくるんだよ。 ホント、葵ちゃんのアイディアには脱帽ものだよ!』
『マギアの発動は、所有者の生体認証と魔力でござる。 盗難にあっても、本人以外使えないでござるし、譲渡も無理でござる。 紛失した場合は、また、ゼロからのスタートでござるな。 一定期間以上、マギアの生体認証の確認が行われない場合、マギアは魔力になって、ウP主のハコに吸収されるでござる』
『これで、虚無の侵略を防ぐための疑似的なハコの眷属も増やせるし、葵ちゃん達をパワーアップさせらるしで、マギアは画期的なアイテムだよ!』
マギアはロマンだの、画期的アイディアだのと鼻息荒く、目を血走らせながら2人に説明され、ニチアサ脳達の本気度具合を、2時間かけて思い知らされた。
魔力が使えなくなった俺には、この2時間がマジで苦痛以外の何物でもなかった。
って事で、マギアに魔石を吸収させれば、魔力が使えない俺でも、マギアのレベルは上げれるっぽい。
まぁ、マギアのレベルを上げたところで、魔力が使えなくなった俺には使えないんだけどね。
でも、レベルを上げれば、今回みたいにダンジョンに入れるのも簡単になるし、それ以上に、シーカーとして、桜田達みたいに協会に優遇対応されると思う。
最悪、レベルを上げまくって放置すれば、ウP主の眷属である俺たちは、なにかしらパワーアップできるかもだし。
って事で、虚無とエンカウントした傍からピチュンさせて、マギアに魔石を取り込ませていく。
俺のマギアよ、どんどん食べて、どんどん育てー。
今の気分は、卵のアレを育てていく育成ゲーをしているのと同じ感覚。
こういうゲーム要素を入れてやってないと、
「クッソ多すぎやろ!? 何処からこんなにワラワラ湧いてきてるしぃぃぃいいい!?」
次々と現れてくる虚無の数が多すぎて心が折れそうになる。
ってか、マジで虚無の数が多すぎ!!
ウザっ!!
こんだけ虚無の出現が多いうえに、出入り口の場所が変り続けるとか、完全に侵入者を殺しにかかっていて、シーカーのレベルが低いとマジですぐに終わるであろう、クソダンジョン。
あまりにも数が多すぎて、既に二丁拳銃な俺。
ってか、たった数時間でこのウザさに心が折れそうになった俺。
でも、アンナとおジジは、これを2週間以上、毎日続けている。
いくら2人が強いとは言え、こんだけとめどなく現れまくっている虚無をずっと対処し続けなければならないってなると、ランダムで変わるダンジョンの出入り口を探しまわる事なんて、マジで無理ゲーに近いだろう。
急いでアンナ達に合流して、負担を減らしてやらねば!
そんな、ほぼやけくそ気味でブッパしまくっている最中、
「──!?」
俺がダンジョンに放ったダークマターに反応が。
「アンナ!?」
マミー共に踏まれているのとは明らかに違う感触。
踏みつぶされているみたいな物理的なヤツじゃなくて、何かの魔法的なヤツ。
だいぶ遠くで感じるけど、その場から動く様子がないソレ。
って事で、その感覚がある方に向かって、ダークマターを手繰り寄せるようにして進んで行く。
でも、流石はダンジョンって呼ばれているだけあって、右へ左へと曲がりまくり、直線的に行けない。
「──クソ!!」
それがもどかしすぎて、焦り、イラついているのが自分でも分かる。
マジで壁が邪魔!
マジで虚無が邪魔!!
って事で、
「取りあえず、一旦、お前らは近づくな!!」
メッシュドームを広げて、落ち着ける空間を捻出。
からのー、
「ソイヤー!!」
右手の銃を俺の身長ほどのドリルみたいなのに変えて、ダークマターで感じる方向に向かって壁に突き刺す。
ダークマターの銃弾で壁とか柱が壊れるのは分かっているから、
「場所さえ分かれば、ショートカットっだ!!」
一直線に壁を掘削していく。
右手を前に突き出して、ドリルがクッソ回転する様にイメージ。
そして、勝手に壁が修復されるのを防ぐため、トンネルを掘るのと同じように、周囲をダークマターを筒状に発現させてコーティング。
アホみたいにマミーを俺にけしかけたお返しに、このダンジョンの迷路の機能をぶっ壊してやる。
自重はゼロ。
遠慮もゼロ。
配慮も常識も、全てを無視して、俺が出来るがままに、一直線に突き進む。
マジでザマー!
俺に配慮がないダンジョンなんて、俺も配慮してやらねー!!
………………
…………
……
…
そんなこんなで、30分も経たずにお目当ての場所の近くまで突き進む。
通過してきた俺の背後は、ダークマターのトンネルで迷路に嫌がらせ済み。
トンネルの入り口から入ってくるマミー共は、グルグル回ってトンネルの中に風を送り込む扇風機によって、須らく抹殺。
これで魔石の確保もできて正に一石二鳥。
アンナと合流次第、集めてマギアの餌にしてやるのだ。
「アンナ!」
『モミジ!?』
「もうすぐで到着するから! 少しの間、壁から離れて!」
『分かった!』
念話でアンナに伝えた後、
「ソーイ!!」
最後の壁をドリルでブチ抜いて、すかさずドリルを解除。
「アンナぁっ!!」
「モミジぃ!!」
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