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クッソ、重てぇ、なっ!

赤装束が剣を取った。


右半身が焼け爛れてボロボロになっているとは言え、どうやったかは知らんけど、桜田の腕を簡単に折った力はまだ残っているかもしれない。


それを考えると俺を殴った時はかなり手を抜いていたであろうと言う事が分かった。


俺は、桜田に助けられなかったら、あのままアイツに遊ばれ、舐められながら死んでいたのだろうか。


それが分かった瞬間、俺の中に怒りが湧いてきた。



「クソが……」



俺を舐めた事を後悔させてやる。


そして、桜田と一緒に、この巫山戯た現状から絶対に生きて抜け出してやる。



視線の先でチラつく自分の左手から、剣を握っている赤装束の左手へと視線を向ける。



俺だってやってやる──!!


このまま理不尽に──



「──死んでたまるかっ!」



視線の先に映る、赤装束が手にしている焼け焦げた西洋剣を凝視。



柄──


鍔──


刀身──


刃──



この目に映ったソレの全てを、


網膜に──


記憶に──


意識に──


焼き付ける。



主要な箇所に点を配置し──


点と点を繋げて線を造り──


線と線を繋げて面を造り──


面と面を繋ぎ合わせて出来た造形物へと、


パンパンのギッチギチになるまで魔力を注ぎ込む。




注ぎ込む魔力は、


膨大に──


隙間無く──


密に──


圧縮し──


結合させ、



固く!



硬く!!



堅く!!!



出来上がったイメージを維持しながら、左手へと意識を集中させる。


熱を感じる程に左手へと魔力が集中できてるのを感じ、左手の平へと何かを握って掴み取るかの様に右手の拳をピタリと着ける。


同時に右手の中へと硬い感触を感じ、ソレをギュウっと握りしめながら左手の中からナニカを抜き取る様にして右手を横へと動かして左手から離す。


俺が動かす右手に合わせ、


ソレは形を成し──


──次第に姿を現していく。


そして、姿を現したソレを両手で握り締め、赤装束へと向かって眼前で構える。



「俺達はこの理不尽から逃げる!  何がなんでもこの場は押し通る!!」



「──なっ!?」



俺が発現させた、自身が手にしている剣と同じ形をした漆黒の魔力の塊を見た赤装束は、驚愕を顔へと貼り付けながら俺の手にあるモノから視線が外せなくなったのか、



「貴様!  なんなんだソレは!  一体何処から、どうやって取り出した!」



自身の驚きをかき消す様に大声を上げる。



「お前に教える理由や義理なんて何ひとつねぇ。  俺はコイツを連れて今すぐ此処から逃げる。  お前がこれ以上向かって来るってんなら、お前を殺す覚悟もできた。  人を殺そうとするヤツが、自分は殺されないなんて巫山戯た事は思っていない、よな?」


「貴様っ──!!」



今まで家畜程度にしか思っていなかった俺の言葉に激情したのか、赤装束は魔力の塊から俺の顔へと視線を向け、剣を握る左手を前にして腰を落として構えを取った。



「──この、  ノービス風情がぁぁぁああああ!!」



そして、腰を落として脚へと力を込めた瞬間、その場から姿をかき消し、腕を振り上げながら俺の目の前へと現れた。



「──ぬグゥ!」



咄嗟に漆黒の剣の刃を立てて水平に頭上へと構え、赤装束の振り下ろしを反射的に防ぐ。



ガギィィィィィィン!



甲高い金属同士が打つかる煩い音が鳴り響き、眼前を赤装束の腕が通り過ぎた。



「!?」


「なっ──!?」



赤装束が振り下ろした剣は俺の漆黒の剣と打ち合ったと同時に刀身が折れ、いや、漆黒の剣の刃に当たった事で刀身が斬られた。


自身の剣が断ち切られた赤装束は、驚愕の表情で動きを止め、



「フっ──!!」



チャンスとばかりに振り下ろされて真っ直ぐに伸びている赤装束の左腕へと向けて、掲げていた剣をそのまま上から振り下ろす。




斬!!!




まるで何も斬っていない様な感触。


自分が振り下ろした剣が当たったのかどうかも分からない程に全く手応えを感じなかった。


ソレは赤装束も同じなのか、キョトンとした顔で俺を見て、魔力の塊を見て、そして斬られたと思った自身の左腕へと視線を動かした瞬間、




ボサリ──




赤装束の腕が芝生へと落ち、



「!?」



遅れて鮮血が飛び散った。



「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ──!!」




俺は咄嗟に横に飛び退いて、赤装束の腕から飛び散る鮮血の雨から逃げる。



「ハァハァハァハァハァハァハァハァ──」



緊張の中で余程集中していた為か、まるで止まっていた呼吸を思い出したかの様に肺へと大量の空気が入れ替わる。


過呼吸気味に呼吸をする俺の目の前では、肘から先が無くなった腕を押さえながら地面でのたうち回る赤装束の姿が。


頭が真っ白になり、漆黒の剣を握りしめたまま唯々ボーっと立ち尽くすが、腕つながりで桜田の事を思い出し、倒れている桜田へと駆け寄って肩へと担ぎ上げる。



「クッソ、重てぇ、なっ!!  オイぃっ!!」



一度肩で担ぎ上げたけど、めちゃくちゃ重かったから、一旦背中に背負っているバックパックとその辺に落ちていた桜田のバックパックを前へと担ぎ直し、桜田の両腕を肩へとかけて背中で担ぐ。



「フングググググググ──!  重たすぎ!  なん、だよ!  この、豚ぁぁぁあ!!」



根性を入れてなんとか背中に桜田を乗せるも、完全には担ぎきれていない桜田の足を地面に引き摺りながら、腕を斬られて悶え苦しんでいる赤装束を尻目にこの場から走り去る。



因みに赤装束の腕を斬った剣は桜田を担ぐのに邪魔だったから左手に食わせ、落ちていた桜田のステッキは前に担いでいるバックパックに適当に無造作に突っ込んだ。



お読みいただきありがとうございます。


モチベになるので、☆とか、ブクマとかお願いします。

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