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完全に俺が悪いみたいな空気なアレ

黒い魔力の翻弄が収まると、全身に黒い痣みたいな模様を浮かび上がらせ、長い耳の姿になった男。


見た目、結構なエルフ具合。


でも、空中都市に居るエルフの肌は白だけど、目の前に居る男の肌は、黒って言うか、褐色って言うか、



「ダークエルフで、ござるか……?」


「………………」



正に、桜田が言う様な見た目の男。



『キハっ──!  グキキキキキキキキキキ──!!』



ってか、何にツボっているのか知らんけど、異様に長い犬歯を剥き出しにして狂ったように笑う男。



「「「………………」」」



何かを口に入れたと同時に変貌した姿にもビックリだけど、



「紅葉氏の、あの、クッソ重いダークマターを弾いたでござる……」



初めて俺のダークマターが弾かれた。


正面からじゃなく、横から刃を殴りつけるように弾かれたけど、あの大きさの重さを考えると、横から殴っただけじゃどうこうできる重さじゃないはず。


それを、



「………………」



こいつはやりやがった。



『キヒぃ!  こいつはスゲェ!  チカラが湧いてきやがる!!』



見た目エルフな男は、両手を広げたり閉じたりしながら、悦に浸っているように破顔している。



「アイツ、ヤベーぞ……  完全にイってやがんぞ……」


「紅葉氏!?  アレは一体なんなんでござるか!?  虚無!?  エルフ!?  人間!?」


「俺が知るか!!」



いや、マジで知らんがな!?


逆に俺が聞きたいわ!!



「モヤシ。  アレは生け捕りだ。  色々と情報を吐いてもらう。  でないと、私のバカンスを初日から潰された代償に見合わねぇ」


「マジ?」


「マジだ」


「………………」



ってかコイツは、マジでバカンス気分で観光していたらしい。


もしかして、あんだけ日本で俺にグダグダ言っておきながら、エジプトに来たら来たで、アンナの件は完全に俺一人にさせるつもりだったのか……?



「クソ!」



クソ雫のバカンスとか、もうどうでもいいわ!


とにかく、先ずはアイツをなんとかする!


これ以上、アンナ探しの邪魔はさせない!



「取りあえず、寝てろ!!」



右手を前に突き出して、宙空からダークマターを集めて固め、男の右から破城槌みたいなもので、面で身体を狙う。



骨がボッキボキでも、生きてたら生け取りだよね!



しかし男は、



『ギヒっ──!!』


「──!?」



カエルみたいにダークマターとフロアの間の隙間に身を屈めて躱し、



『見える!!  見えるぞ!』



そのまま、



『先ずは!  モブでひ弱そうなオマエからだ!!』


「──!?」



前にいる俺に向かって飛び跳ねて距離を詰めてきた。


アホみたいに俺に向かって一直線に突っ込んで来る男。


そんな愚直な特攻は、空中都市での虚無との戦いで沢山経験してるから、



「馬鹿なの?」



俺の全方位に沢山の尖った円錐を浮かして設置して、



『ウグゥ──!?』



勝手に自爆して頂く所存でございます。



「「「………………」」」



虚無の時は何とも思わなかったけど、



「エグぅ……」


「グロっ……」


「最悪でござるよ……」



目の前で、浮いている沢山の円錐に突っ込んできて突き刺さっている人の姿とか、



「私は、オマエに、生け捕りにしろって、言ったよ、な……?」


「はい……」



マジでグロすぎて吐きそう。


桜田なんて、既に頬袋がパンパン。



「じゃぁ、なんなんだ、コイツは?」


「いや……  俺は何もしてないし……  こいつが勝手に突っ込んできたし……」



ホント、マジコレ。


あんな勢いで無防備に尖った円錐に突っ込んで来たら、そりゃぁ、自爆もするわいな……



ぶっちゃけ、初手のダークマターの刃とか破城槌を躱したから、こんなの牽制にしかならないと思っていた。


けど、



「コイツ、死んでんじゃん?  生け捕りできてないじゃん?」


「っスね……」



勝手に突っ込んで来て、勝手に自爆されて、完全に俺が悪いみたいな空気なアレ。



自爆した男が浮いている円錐に刺さっていて、宙空に貼り付け状態になっていて、



「オマエ、どうすんのコレ?」


「いえ……  どうするのって言われても……  取りあえず、此処から逃げようかなって……」



フッコフコの絨毯に、血貯まりができちゃっている始末。


誰かがコレを見たら、マジで猟奇的殺人現場で、俺はサイコパスな殺人鬼確定な雰囲気。



「まぁ、もう、コイツはいいや。  その辺に転がっているヤツに聞くわ」


「っスね……」



宙空に浮いている、斬新なアートみたいになっている黒いエルフを見て、雫が冷ややかな視線を俺に向けながら、呆れたみたいな溜め息を吐いた。



俺への態度おかしくね?


絶対違うだろ?


俺じゃねぇだろ?



雫の態度にマジで釈然としない中、円錐のダークマターを霧散させてその辺の空中に待機させ、



「おい。  コイツが食ったっポイの発見したぞ」


「………………」



雫が、気絶している奴らのポッケとか鞄をゴソゴソ漁っているのを無言で見つめる。


マジで節度がなさ過ぎてドン引き。


火事場泥棒も真っ青な、堂々としまくった死体漁り。



「………………」



ってか、絶対にホテルのスタッフに通報されているから、そろそろ逃げないとヤバいと思います。


って事で、地元警察に凸られた時の言い訳を考え始めておこう。


って思っていたら、



「なぁ。  ぜってぇヤべーモンだぞコレ……」


「おうふ……」



雫に見せられたガチそうなソレ。


真っ黒な錠剤の中央に、金字で『elf』ってロゴがある、マジでアレっポイナニカ。


それが、気絶している全員のポッケから見つかってしまっていて、



「コレは、没収だな」


「オマっ──!?」



馬鹿がポーチから取り出した果汁グミのパウチに無造作に全部入れやがった。


しかも、そのタイミングで、



『警察だ!!  動くな!!』


『床に腹ばいになって手を前に出せ!!』



エジプトのオマワリサン登場。


ってか、SWATチックなガチ装備の特殊部隊だった。


当たったら、痛いどころじゃ済まなそうなゴツイ銃を向けられまくっていて、



「面倒くさいの来やがったな」



そんな人たちに向かって、



「インターポールだ」



動くな言われているのにも関わらず、雫がポーチからササって何かを取り出して見せた。



「は?」



そして、俺の思考は完全停止。


雫が左手を上げながら右手に持っているカードを特殊部隊に向かって差し出す。


ソレを警戒しながら受け取る特殊部隊。


と、同時に、



『こ、これは!?』



なんか知らんけどクッソ驚いていて、横に居た偉そうな特殊部隊の人に見せた。



『──!?  も、申し訳ございません!!』



そんでもって、雫に向かってビシィって敬礼しまくる特殊部隊の人。



「オーケー?」


『Yes! sir!!』



クッソガッチガチでキレッキレな動きで、雫が渡したカードを仰々しく返す特殊部隊の人。



『コイツらはアレだ。  テロリスト的な奴らで、マギアを使って私たちを襲ってきた』


『さ、左様でございますか!?』


「………………」



話している内容に疑問しか湧かないけど、馬鹿のくせに流調に英語ペラッペラでドン引き。



「おい……  アイツ、馬鹿のクセに英語喋ってんぞ……  しかも、ペラッペラぞ……?」



って事で、横で置物と化している桜田に確認。



こんなんマジで事件だろ?


事件依然に、ゼンマイダケがヒトに進化してんぞ?



隠そうとも隠せなさすぎる驚きで、プルプル震える指で雫を指さす。



「英語なら、僕も、クリリンも、玉藻氏もウP主も話せるでござるよ?」


「は?」



なんで?



「ってか、インターポールってなに?  どう言うこと?」


「僕たちは、マギアの開発者であり、シーカーであり、犯罪を犯すシーカーを取り締まる、世界警察でござるよ」


「は?」



どうやら、マジで意味が分からなさ過ぎて、俺から語彙力が飛んでった。



「まぁ、インターポールの肩書は、常時じゃなくて、何かに巻き込まれた時用なんだけどな」


「ほんと、木梨氏のパパさんとお爺さんは、木梨氏の扱いが上手いでござるよ……」


「え?  もしかして、このバーサーカーが、何かの事件とか問題に巻き込まれた時の為にって事?」


「まぁ、端的に言えばそうでござるな」


「こんなん、マジでいらねぇし、面倒くせぇって言ってるのに、無理やり未だに所属させられてんだよ。  過保護すぎだろアイツら?」


「いやいや……  この肩書にはいつも助けられているでござるよ……」


「………………」



こんなん、俺には馬鹿なバーサーカーを縛るための見えない鎖にしか思えない。


ってか、犯罪者ギリギリの馬鹿に犯罪をさせないための、マジで効果的すぎるヤベー首輪。


倫理と言う名の封印術式。


そんな、そっち側にいちゃダメなヤベーヤツが、特殊部隊の人たちに何かを説明しに行った。


この光景を見て、俺の中で世界は終わったって感じてしまったのはなぜなんだろうな。



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