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未だに死ぬ要素はゼロっぽい

どうやら、目の前に居る戦闘狂は、ダンジョンが出来てからイキイキしていた様で、世界中に知れ渡る程のアホみたいなレベルだった。



「お前ら……  絶対おかしいだろ……?  なんなん、その、アホみたいなレベル……?」


「仕方ないでござるよ……   ダンジョンが出来てから、木梨氏に毎日付き合わされたら、結果、こうなってしまったでござるよ……」


「いや……  お前が言いたい事、思っている事はなんとなく分かるけどさ……」


「ホント、あの頃は、毎日が最後の晩餐だったでござるよ……」


「お前、よく生きてたな……」



可哀想すぎる桜田。



多分、クリリンも同じ感じなんだろうな……



当の雫は、桜田の横で自分には関係ないとばかりにシーシャ片手に酒を煽っている。



何処ぞの傭兵かよ……



桜田達の壮絶な過去を聴きつつも、コレで俺も問題なくピラミッド ダンジョンに行ける目処がついた。


ついたんだけど、



「──!?」



俺の対面にいる桜田の背後で、



『キヒっィ──♪』



今にも満タンの酒瓶を振り降ろそうとしている金髪の男。


そして、桜田の後頭部に瓶が当たろうとした瞬間、



『アがっ──!?』



桜田の頭頂部スレスレを雫が上げた脚が通り過ぎ、



「ヒィィィ──!?」



雫に思いっきり鼻っ面を蹴られて、そのままの勢いでボックス席からフロアに吹っ飛んだ。



「コッソリやるなら、殺気くらい隠せよボケ」


「ななな──!?  なんでござるか!?」



それを見て慌て驚く桜田。



「お前からは、私を尾行していたヤツと同じ、クッソキモい、ネバついた殺気がダダ漏れなんだよ!」


『クソ!!』



一触即発。


俺達の隣に座っていたヤツらが一斉に立ち上がる。


そして、



「ハっ!!  殺るき満々じゃねぇか!!」



それぞれが手にルービックキューブくらいの大きさの何かを手にしていて、



『バーサーカーめっ!』



一斉に魔力を込めた。


瞬間──



「葵ちゃん!  下がってて!」


「了でござっ!!」



──それぞれの手に武器が現れた。



形は違うけど、どうやら手にしていたのはマギアだったっぽい。


そんで、



「モヤシ!  手ェ出すんじゃねぇぞ!」



ソファーとテーブルに足を乗せて立ち上がっている雫が、左腕を突き出す様な形で、指を伸ばして掌を上に向けて、なんかよく知らん、如何にもソレっぽい構えを取った。



『死ねやぁぁぁあああ!!』



同時に、逆手にシミターみたいなナイフを持った男が雫の首目掛けて腕を伸ばす。



「フっ──!」



その伸ばされた腕に向かって、左右から平手を当て、



『──!?』



流れる様な動きで肘と手首の関節をキメて男の体勢を崩し、



『はガァ──』



踏み潰す様に顔に蹴りを入れながら、躊躇なく腕を折った。



それを合図に、武器を持ったヤツらが雫に向かって一斉に殺到。


それを無手のまま、中国拳法みたいな、合気道みたいな、古武術みたいな動きで捌いたり、往なしたり、投げたりしている雫。



洗練された流れる様な動きに思わず見入ってしまい、



「カッケー……」



めっちゃ厨二心がくすぐられた。



「木梨氏、実家の道場の師範になったでござるよ」


「マジ?」


「お爺さんの意識が戻った後、色々と教えてもらっていたでござる」


「ジジイ、目ぇ覚ましたんだな……」



俺が空中都市に行く前は、意識不明で面会謝絶だったクソジジイ。


どうやら、無事に目を覚ましたらしい。


ってか、10年も経ってたら、流石にジジイも……



「って事は、ジジイは……」


「お爺さんも未だに元気すぎて、偶にダンジョンに潜っているでござるよ」



未だに死ぬ要素はゼロっぽい。



「元気すぎだろ、ジジイ……」



ってか、あっという間に獲物持ちの6人全員を素手でフルボッコにした雫。



「クソ雑魚が!  私の楽しい旅行の邪魔をするな!」


「「………………」」



そんで、フロアで呻き声を上げながら倒れている奴らに向かって愚痴ってる馬鹿。


ってか、アイツはガチで旅行に来ていた。


なんで雫が尾行され、俺たちが狙われたのか知らないけど、コレで一応、問題解決だろう。



「「「──!?」」」



って、思っていたんだけど、



『カハ──  カハハハハハハハハ──!!』



顔面を血だらけにした男が、フラフラとよろめきながら立ち上がった。



「ほう。  意識が飛ぶまでボコって欲しいってか?」



『キャハハハハハハハ──』



しかし、立ち上がった男は、目のハイライトが消えて、壊れた様に笑い続けている。



「クッソウゼーな、マジで」



男のウザイ笑い声に、見るからに怒な雫。


そんな雫は、近くに落ちていた酒瓶を拾って瓶口を手に持った。


どうやら男を瓶で殴る気らしい。



「鬼かアイツは……」



容赦ない雫にドン引きしていたら、



『──エルフと共に世界を!!』


「──!?」



男が不穏な言葉を口にして、



「──雫!  アイツを早く仕留めろ!」


「ウッセー!  お前に言われなくてもやるわ!」



手にしていた何かを口に入れて噛み砕いた。





カリっ──





嫌に鮮明に聞こえた、何かが噛み砕かれた音。



と、同時に──



『ガァァァァァァァぁぁぁぁあああああああああ──!!!!』


「「「──!?」」」



男が狂った様に咆哮し、



「おいおい、マジかよ……」


「なんだよ、ソレ……」


「嫌な予感しか、しないでござる……」



身体中の穴という穴から、



『──ァァァァァァ!!』



漆黒の魔力を噴き出した。



『──ァァァァァァアアアアア!!』



噴き出した魔力が歪な棘の様に纏まり、身体にグネグネうねうねと纏わりつき、



『──ァアアアアアあああ嗚呼!!』



次々と男の身体にズブズブと突き刺さっていく。



「「「………………」」」



そんな突然の光景に思わず思考が停止して、完全に追撃する事を忘れてしまって、男が変貌していく様を唯々見る。



「虚無……」



雫の呟きに思考が戻り、



「クソ!!」



急いで空気中に漂わせていたダークマターを集めて、纏めて、整形して、



「させるか!!」



右手の目で操って、男の頭上からダークマターの刃を振り下ろす。



「「「──!?」」」



が、



「なっ──!?」


「止めれたでござる──!?」


「マジかよ──!?」



男が上げた腕によって、ダークマターの刃が横から弾かれた。



『フっ、フっ、フっ、フっ──』



頭を下げ、苦しげに、短く浅い呼吸を繰り返している男。


その男の全身は、炎の様な黒い模様で覆われていて、



「エルフ、なの、か……?」



エルフみたいに耳が長くなっていた。



お読みいただきありがとうございます。


モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。

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