んな訳ゃない!
桜田とこれまでの経緯を話しながら、マーケットをブラブラ散歩する。
雰囲気は正にアラビアンナイト。
見たことがない沢山の食べ物とか工芸品で溢れかえっている。
途中で見つけたつくねみたいな串焼きがクッソ美味すぎて、
「これは白米が欲しいでござるな!!」
「もう1本買っとくか?」
気づけば4本も追加購入して食べていた。
そんなこんなで日も沈み、日中と違って涼しくなってきたからなのか、マーケットが更に多くの人たちの活気で溢れ出す。
オリエンタルでエキゾチックな古い造りの建物が立ち並ぶ通りが、沢山の明かりに照らされて不思議な陰影を作る。
そんな中、
「モヤシ! 葵ちゃん!」
「お? 木梨氏!」
完全に観光客面の馬鹿と合流。
いつの間にか服がアラビアンな感じになっていて、両手には沢山のお土産らしき何かを持ち、満面の笑みで近寄ってきて、
『尾行されてる』
「「──!?」」
会って早々、クッソ満面の笑顔で、いきなりな事を小声で言うヤベーヤツ。
何がどうなってそうなったしぃぃぃいいい!?
コイツは俺以上に特級呪物すぎて、今すぐこの場で封印したすぎる。
なんなら自害してタヒってくれたら嬉しい。
そんな馬鹿の背後に視線を向けようとしたところ、
「よし!! 飲みに行くぞ!!」
「オマ──!?」
「木梨氏ぃ──!?」
馬鹿が俺と桜田の間に割って入って、無理矢理肩を組んで首を動かせない様にして、
『私の背後に視線を向けるな。 それと、楽しそうに笑え』
「「──!?」」
底冷えする様な声で釘を刺され、
こんなんで笑えるかぁぁぁああああ!!
そのままマーケットをブラリする。
そんで、
「ホテルかい……」
飲みに行く言われても、宗教上なのかあまり飲めそうなとこがなかったから、結局ホテルに戻ってきたなう。
シーシャを吸いながらビールを飲んでいる馬鹿曰く、
「途中で尾行が消えた。 でも、近くにいるのは間違いない」
って事らしいけど、ホテルのバーでライトアップされたピラミッドを見ながら、晩ご飯とお酒タイム。
「オマエ…… なんで尾行なんかされてたんだよ?」
「何かあったでござるか……?」
「知るか! こっちが聞きたいわ! せっかく楽しんでいた買い物と観光に水を差しやがって!」
やっぱり観光してたんかい!?
バーから見える色とりどりにライトアップされたピラミッドは、幻想的って言うよりも、なんて言うか、パーティーピーポーな感じで少し萎えた。
って言うか、今日は色々な事で萎えまくってしまった。
尾行してたヤツを警戒するために、取りあえずって事で、極小のダークマターを空気中にまき散らし、地面にも細い線を這わせておく。
ついでに、地面に這わせた線をピラミッドダンジョンまで伸ばして、アンナを先行して探す。
ここまで近づけば、日本に居た時よりはダークマターで何かを察知できるかも。
そんな、寛ぎたいけど寛げてない俺たちの隣のボックス席に、
『こんばんは』
ヨーロッパ系の若いグループが座った。
数は6人。
男3人、女3人の、30歳未満に見える男女のグループ。
「「「………………」」」
英語で喋りかけてきたけど、俺には日本語として理解できた。
ホールスタッフにあれこれ注文して、サーブされたお酒を飲んで何か楽しそうに話している。
その光景が気に食わないのか、
「クソ。 私も純粋に観光したいっつうの」
雫が愚痴る。
ってか、本音ダダ漏れ……
そんなアホな馬鹿に、
「ってか、観光で来てねぇからな。 アンナ探しに来てるんだからな」
釘を刺して、来た目的を反芻させてリマインドしておく。
「んで、そう言うオマエはどうなんだ? 何か分かったんか?」
「協会にダンジョン内部の特徴を聞いてみたところ、ピラミッドダンジョンっぽい」
遠くで七色に輝くピラミッドに一瞬視線を向けた後、
「ほいコレ」
協会で買った本の、折り目を付けたページをテーブルの上に広げる。
「ピラミッドダンジョン。 シーカーの推奨マギアレベルが100で、パーティーレベルが90ってか」
「なかなかレベルが高いでござるな」
雫と桜田から見ても、このダンジョンはレベルが高いらしい。
「って事で、マギアレベルゼロの俺は門前払いされた」
「まぁ、魔力の存在が浸透して、ダンジョンが現れて、そう言う風に、世界共通の法律ができてしまっているでござるからなぁ」
「養分ゼロなモヤシじゃ無理だわな」
「ウルセー! 魔力なんかなくても、俺は問題ねぇっつうの! 俺は出来る子なの!」
どいつもこいつも人の事を無能扱いしやがって!
「魔力が無い他の人達に謝れお前ら!」
「いや、無理。 例外なく魔力は誰にでもあるぞ」
「で、ござる」
「嘘だ!」
俺、ねぇじゃん!?
じゃぁ、俺に謝れ!
「元々は紅葉氏も魔力があったでござろう? 普通であれば例外なく、大小はあるでござるけど、誰にでも魔力はあるでござるよ。 紅葉氏は無くなったっぽいでござるが」
「この豚ぁ──!?」
俺が普通じゃないってか!?
そんな俺自身が一番普通を望んでいるんですよっ!!
モブをモブなままでいさせてくださいませよ!!
「ゼロモヤシ単体じゃダンジョンに入るのは無理だから、パーティーで行くしかねぇな」
「ゼロぜロ言うなし!! ってか、そう言うお前のレベルはいくつなんだよ!!」
ゼロゼロ言われ続けたら、流石の俺も怒よ!オ!コ!
「あぁ? 知らんけど、300くらいぃ~?」
「はぁ?」
「あ、因みに僕は281でござるよ」
「え?」
なんでこんなにレベル高ぇんだコイツら!?
「はいー! 嘘ですねぇー!! そんなにレベルが高かったら、協会のおっさんが日本に居るって言ってた、バーサーカーとか、魔女とか、勇者ってのと同じじゃねぇか! ってか、お前らのレベルがそんなに高かったら、絶対公になってんだろうが! はい、ウソ看破ー!!」
「「………………」」
「それともアレかぁ? お前らはパパさんがいる何たらな組織と繋がっているから、非公式だからレベルは公表できませんってかぁ?」
そんなアホみたいなレベルとかあり得るか!
そんなん、俺が居なくなって10年の間に、レベルが年間30も増えてるってことじゃねぇか!
いや、実質、マギアできてからの計算になるから、上り幅はもっとエグいぞ?
んな訳ゃない!
そんなにレベル上げが簡単なわけがない!
「まぁ、落ちつけモヤシ」
「落ち着けるか! 俺は法を無視して今すぐにでもダンジョンに行きたいんだよ! それを、お前らは──」
「──私がバーサーカーで、葵ちゃんが──」
「──魔女でござるよ」
「ふぁぁっ──!?」
「因みに、クリリンが勇者な」
「──!?」
「玉藻氏は九尾って2つ名でござる」
「………………」
協会のおっさんが言ったまんまの奴らが俺の前にいて草!!
ってか、どんだけレベル上げまくってんだよコイツら!?
病気かっ!?
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