ホント、ヒデー結果だよ……
コレからどうしようかなと考えながら、泊まる予定のホテルに行く。
ホテルに到着し、協会で買った本を読みながら、ピラミッドが見えるカフェで一休み。
ってか、このホテル、スゲーな……
どう見ても、星が4か5はありそうなラグジュアリー感が漂いまくっている。
庶民の俺が、一生の内にまさかこんなスンゲーところに泊まるとはマジで思ってなかった。
ってか、このホテルの予約取ったのって、雫、だよな……?
ガチでエジプトを満喫するき満々じゃねぇか……?
物理的なチカラだけでなく、金のチカラまでをも手に入れた馬鹿に驚愕。
って言っても、アイツがこのホテル代を払ってくれたって事は一切無い。
俺が無理矢理売らされた財布と、換金した金貨の代金で自分の分の旅費とか払わされた。
因みに、桜田はタダ。
会社の経費なんだとか。
馬鹿のジャイアニズムは、どうやら会社にまで影響を及ぼしているっぽい。
よく潰れずにやっていけてるな……
アイツ以外がクッソ苦労しまくっている絵面しか浮かんでこねぇわ……
俺の手元の本にあるピラミッドと、遠くに見える巨大なピラミッド。
この本によると、どうやら、俺が探している遺跡のダンジョンってのは、あのピラミッドの中にあるらしい。
しかも、推奨レベルが高いせいか、シーカーがあまり入っていないとか。
初期のエジプトでは、あのピラミッドダンジョンのせいで多くの死者が出たって本に書いてある。
って言うのも、中には鉱石じゃなくて財宝があるとか……
今でも、一攫千金を目指すシーカーが後を絶たなくて、セキュリティーレベルがガッチガチだそうだ。
しかも、入ったが最後。
入った瞬間に入り口が消えて、数時間毎にランダムな場所に入り口が変わるらしい。
今まで出て来れたのは、たまたま入り口を見つける事ができた、幸運を持ったシーカーのみ。
シーカーにとって美味しい宝があるらしいんだけど、危険度が凄く高いし、入り口ランダム問題もあって、ホイホイ行って帰って来れる様な場所じゃ無いらしい。
そりゃ、協会のおっさんも手慣れてる訳だ。
財宝の噂を聞きつけた、推奨レベル以下な無謀なシーカー達がわんさかやって来るんだろうな……
クソエルフめ……
なんて面倒くさい所にアンナを放置しやがったし……
俺がこうなるって事を知ってたんか?
キンキンに冷えたジンジャーエールを飲みながら、遠くで存在感を放ちまくっているピラミッドを睨みつける。
「もう、強行突破でいいか……?」
どうせ、モブで庶民な俺には、一緒に行ってくれる様な高レベルシーカーとかとのコネは無いし、雫達に交渉させに行かせても、時間がかかるのは間違いない。
マジで面倒くせー……
マジでどうしようか考えていると、
「ん?」
サイドテーブルの上に置いていたスマホが振動。
桜田から電話がかかってきた。
因みに、俺のスマホは10年前に俺が使っていたブランドの最新版。
桜田に勧められて、両親が居るタイで購入した。
なんでも、空中に漂っている魔素を利用して、自動で勝手に充電できるのだとか。
電波は未だにどうこうするのは無理っぽいけど。
これならば、周りに魔素がある限り、空中都市でもバッテリー切れの心配はない。
でも、圏外で通話とかゲームは無理っぽそう。
でもでも、ダウンロードタイプのゲームをインストールしておけば、取り敢えずゲームは出来る。
「ニチアサ終わったのか?」
ってか、夏時間とは言え、日本との時差が6時間って事もあって、遠くに見えるピラミッドに、太陽が隠れようとしている時間帯。
『終わったでござる! 海外でもリアルタイムで日本のTV番組が観えるとか、TVアプリは偉大でござるな!』
「………………」
日本の文化って言うか、ニチアサにズブズブな豚。
海外に来てまでも、良い歳した大人がリアルタイムで鼻息荒くしながら真剣にニチアサを観ているとか、マジでドン引き。
「良かったな……」
まぁ、趣味嗜好は個人の自由だから、キモイとか言わずに心の内に留めておく。
多分……
『それで、暇になったのでござるが、紅葉氏は今、何処にいるでござるか?』
「ホテルにある、ピラミッドが見えるカフェにいるけど?」
『用事は済んだのでござるか?』
「取りあえずは、って感じかな……」
まぁ、実際はこれからどうするかが問題なんだけどね……
『それじゃ、一緒に散歩しに行くでござるか?』
「いいけど。 何処行くの?」
『ハン・ハリーリマーケットでござる』
「マーケット?」
『木梨氏もそこに居るでござるよ』
「………………」
あの、馬鹿!?
マジで旅行してんじゃんよ!?
『木梨氏とマーケットで合流して、夕飯を食べるでござる』
「まぁ、そう言う事なら……」
って事で、桜田がカフェに来て、そのまま一緒にマーケットに。
………………
…………
……
…
「紅葉氏、凄いでござるな!?」
道中、マーケットまでの行き方をその辺の人に質問してたら、
「いつ、アラビア語なんて覚えたでござるか!?」
桜田に驚かれた。
「空中都市で覚えた言語理解の魔法」
「そんな魔法があるんでござるか!?」
「空中都市では、魔力さえあれば、スクロール?ってヤツを使って、簡単に魔法を覚えられるんだよ」
「興味深々でござるよ!」
豚で見た目がキモイおっさんが、年端もいかない少年の様に目を輝かせながら俺を見る。
ウハっ──!?
無意識に殺意が湧くくらいたまんねぇぜ!!
「アレ? でも、紅葉氏は魔力が無いって言っていなかったでござるか?」
うん。
やっぱりにそこに行きつくよね。
「お前、覚えてる?」
「ん? 何をでござるか?」
「俺がキラキラの魔力を使えていた事?」
「覚えているでござるよ。 紅葉氏は、キラキラなヤツと謎仕様のダークマターなヤツの2つの魔力を使えていたでござるな」
「そそ。 空中都市に居た始めの頃は2つ使えてたんだけど、魔力の実験中にキラキラのヤツが使えなくなった」
「どんな実験でござるか!? なんか、怖いイメージしか湧いてこないでござるよソレ!?」
まぁ、実験で魔力が無くなったって聞いたら、イメージ的に恐怖しかねぇわな。
俺も、キラキラがなくなった始めの頃は毎日泣きそうだったし。
「空中都市に行って初めて分かった事なんだけど、俺って、魔力と理力の2つが使える特殊体だったらしい」
「ふぁっ──!? ナニソレ!?」
ほんとソレ。
マジでナニソレだわ。
「そんで、普通、理力を使える人は魔力が使えない、イコール、魔法を使えないって事で、両方使える俺は、どれくらい魔法の習得ができるのか、魔法を簡単に習得できるスクロール?を使って、大掛かりな検証と言う名の実験をさせられる事になったわけ」
「改造人間でござるな……」
とことんニチアサ脳だな……
「まぁ、そう言われればそうなんだけど、先ずは軽いやつからって事で、言語理解魔法、て訳なんよ」
「ほーん。 それで、こんな便利な魔法が使える様になったと? でも、魔力が使えないって事は、習得した魔法も使えないはずなのでは?」
流石はキモ豚ニチアサメガネおっさん。
自称研究者って言うだけあって、着眼点が違う。
「魔法のスクロール?を使ってどんどん魔法を覚えている中、空中都市の偉いおジジが俺ならコレ使えんじゃね?的なノリで、1枚のクッソ古いスクロールを出してきた」
「なんか、きな臭い感じでござるな」
「そのスクロール、なんと、何処ぞのハコのヤツが作ったっぽい、眷属を作る為のヤツだった」
「ふぁぁ──!」
俺の話を聞いて、驚きの声を上げる豚。
そんな豚に、周りからの視線とヘイトが一瞬で集まった。
視線は分かるけど、ヘイトもセットだった事に草。
「そんで、ソレを使ったら──」
ヘイトを集める豚に向かって、
「──手がこうなった」
様変わりした両手の平を見せる。
「ブヒィ──!? 落書きが増えているでござる!?」
案の定、恐れ慄く豚。
「コレが現れたせいで、キラッキラの魔力が一切使えなくなった」
「絶対に、呪いでござるよソレ!? 早急に封印するべきでござるよ!!」
「俺を特級呪物扱いすんな豚。 だったらお前を呪詛塗れにして道連れにすんぞ豚」
「紅葉氏の語尾が豚になっているでござるよ!? と言うか、呪詛塗れは本気で嫌でござるよ!!」
俺だって呪詛塗れとか死んでも嫌だわ!!
「この右手の線のせいで、クッソ沢山覚えた強力そうな攻撃魔法も全部消えて、何故か、初期魔法の言語理解だけが残った」
いや、ほんと。
マジで不思議すぎるわ。
なんでだろー?
「なかなかに壮絶な実験結果でござるな……」
「まぁね……」
ホント、ヒデー結果だよ……
「それで、俺が使えるのは理力だけになって、理力だけしか使えない人たちと同じく、俺も魔力が一切使えなくなった」
「右手のソレ、どう見ても、 ”目” でござるな……」
「うん。 どう見ても、”目” なんだよなぁー……」
「じゃぁ、マギアは一生、使えないでござるな……」
「うん…… そんな感じ……」
そうなんですよ……
マギアが使えないと、俺って、一生レベルゼロなんですよ……
コンチクショー!!
上も下も、魔力メインの世界になりやがって!
ウP主からダウンロードした ”魔力マスター” がバグってたせいで、全然マスターじゃなさすぎて、マジで怒りしか湧いてこねぇわ!!
魔力選んだ俺だけ魔力から取り残されてんじゃんよ!!
お読みいただきありがとうございます。
モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。




