強行突破で行けなくもないけど
マジで何しに来たのか分からない馬鹿達と別れて、
「此処か……」
エジプトのシーカー協会なう。
着替えとかは桜田に預けたから、ほぼ手ぶら。
一応、マップアプリとか翻訳アプリを準備してたけど、
「言語理解魔法…… スゲー……」
空中都市で実験的に手に入れた言語理解が有能すぎる。
オートで違う国の人の言葉が理解出来て、俺が喋る日本語も、コレまたオートで現地の言葉になっているって言う、マジで謎仕様な優れもの。
電車とかタクシーで、何事もなくシーカー協会に到着。
支払いも、シーカーカードで両替の必要無しときた。
ってか、今の世の中、世界中で現金で払う機会が殆どない。
パスポートもそうだけど、シーカーカード、マジで有能。
そんなカードは、カードの表面にある四角い枠に、本人が指を当ててないと機能しないって言うセキュリティ付き。
10年前から来た俺には謎技術すぎて、コレはこう言う便利なモノとして、深く考えるのを放棄。
入ったシーカー協会の内部は日本と同じ感じ。
ダンジョンが現れてから、シーカーは世界共通の仕事になって、シーカー協会はダンジョンがある世界中にあって、シーカーであれば、何処の国の協会ででも、同じ様にサポートを受けられる。
って事で、
「すみませーん。 遺跡のダンジョンの場所を教えてください」
カウンターで情報収集。
「いらっしゃい。 あんちゃん、見かけない顔だな? チャイニーズか?」
「日本人ですねぇ。 今日、この国に来たばかりです」
「日本人? その割にはアラビア語がペラッペラだな!? ハーフか?」
「純粋な日本人ですよ」
「マジか……」
俺の見た目とペラッペラなアラビア語に驚く、カウンターのおっさん。
しかもこのおっさん、白いガラベーヤを着て、赤と白のチェックのターバンまでしている。
なんて言うか、アラビアンナイトなアレ。
「えぇっと…… 遺跡の ダンジョンだっけ?」
「ですです。 なんか、壁に目とかの彫刻が彫ってあって、石壁?砂壁?で神殿っぽい ダンジョンを探してます」
「神殿っぽくて、壁に彫刻が彫ってある ダンジョンねぇ……」
おっさんはカタカタとキーボードに情報を打ち込んで、俺のお目当ての ダンジョンを探してくれているらしい。
「あるにはあるが…… あんちゃん、マギアレベルは幾つだ?」
「マギアレベル?」
なんじゃそりゃ?
マギアは雫達が作っている、あの不思議装備ってのは分かるけど……
レベル?
「ナンスカソレ?」
「あんちゃん、マギアレベルを知らないのか?」
「はい……」
初耳すぎる単語が分からなすぎて、取り敢えずイエスマンやっておく。
「マギアは分かるよな?」
「一応?」
「かぁ〜! そのだなぁ。 今のシーカーってのは、マギアを使わないと、 ダンジョンにいる虚無と戦えねぇ。 コレは分かるよな?」
「はい……」
なんか、シーカーのライセンス取った時にそんな事言われたっけ?
「因みに、マギア、持ってるよな?」
「あります」
シーカーライセンスを取った時に一緒に渡された、俺のマギア。
コレとライセンスはセットで、この2つが無いと ダンジョンに入れないって言われたから、一応持ってる。
「ちょっと借りるぞ?」
「え? どうぞ?」
俺がおっさんにマギアを手渡すと、おっさんは、俺のマギアを変な窪みがある板っぽい機械の上に置いた。
そして、
「あんちゃん…… シーカーになったばかりじゃねぇか……」
「え? なんで知ってるの?」
「知ってるも何も、マギアのレベルがゼロだからだよ」
「ゼロ……」
あ……
そう言う事ね……
「あんちゃんが探している神殿タイプの ダンジョンな。 あそこは、マギアレベル100以上推奨なんだわ」
「マジ?」
「マジも大マジ。 そんな所に、シーカーになりたてのあんちゃんを行かせるってのは、協会的にアウトなんだわ」
「マジ、か……」
じゃぁ、どうすんだよ俺?
夜にコッソリ忍び込む系?
「因みに、 そんな高レベルなダンジョン前には、かなり厳重なゲートがあるからな。 コッソリ忍び込むとか、セキュリティ的に無理だかんな?」
「ふぁっ!?」
え!?
俺の心を読まれた!?
ナニコノおっさん!?
心を読めるスキルか魔法を持ってんのか!?
「あんちゃんみたいなルーキーが考える事なんて、どうせそんな感じだろ? あんちゃんみたいな身の程を知らないルーキーなんて、俺は今まで沢山見て来たからな」
呆れ顔のおっさんは、ヤレヤレだぜ的に両手を広げて首を横に振る。
「まぁ、地道にマギアレベルを上げるこった。 レベルゼロからでも入れるダンジョンを紹介してやる」
「いや、それはちょっと……」
いやマジ、どうしよ……?
物理的に強行突破しちゃう?
「なんか方法とかって無いですか? 俺がその ダンジョンに入れる方法?」
「無い訳でもないけど、マギアレベルゼロが危険って事には変わりないぞ?」
「大丈夫です! 自己責任します!」
「はぁ〜。 まぁ、どうせレベルゼロのルーキーにはどっちみち無理な方法なんだけどな」
「無理くないです! 多分!」
「 ダンジョンに入る為には、その ダンジョンの危険度によって、個々人のマギアレベルで制限をかけている。 でもな、基本、 危険な虚無が居るダンジョンなんて誰もソロでは入らねぇ。 って事で複数人で徒党を組んで探索する、パーティーレベルってのがある」
「はぁ?」
マジでゲームとかラノベの世界じゃねぇか……
「お前さんが行きたい ダンジョンは、パーティーレベルで90。 パーティーレベルってのは、メンバー全員のレベル割る、メンバーの人数で決まる」
え?
って事は……
「レベルゼロのあんちゃんをパーティーに入れた場合、複数人の150超えの高レベルのシーカーと一緒じゃないと、あんちゃんは入れねぇ。 と言うか、個人でレベル150越えのシーカーなんて、この国に居ない」
はい。
詰んだ……
出だしから詰みましたよー……
「まぁ、あんちゃんの国に居る、バーサーカーとか魔女、勇者辺りならレベルゼロなあんちゃんと組んでも余裕だろうけどな」
「え?」
「まぁ、そんな有名な奴らと接点が有ればの話しだけどな。 駆け出しのルーキーでは無理だろうなぁ」
「………………」
強行突破で行けなくもないけど、
「因みに、強行突破したら、懲役10年とシーカーライセンス剥奪で、一生 ダンジョンには入れねぇから、早まるんじゃねぇぞ?」
ペナルティーは嫌すぎる……
空中都市とは違って、地上での血生臭い職業ってのは、徹底管理されていた。
まぁ、そんくらいしないと、コンプラだとか、人権だとかで炎上するんだろうな。
「まぁ、記念にコレでも買ってけ」
「………………」
おっさんがカウンターに出したのは、
『 ダンジョンの歩き方 (エジプト編)』
何処ぞで見たことがある様な名前の本。
「コレにエジプトダンジョンの推奨レベルとか詳細とか場所とかが書いてあるから、励みにでもして地道に頑張るんだな」
「………………」
マギアレベルゼロな俺は、ただ、本を購入しただけで、何も出来ずに協会を後にした。
ってか、この本、ボッタクリすぎ!!
こんなんで5万は高すぎやろ!?
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