訴えられてもおかしくないレベル
シーカーなる人達。
桜田にそう呼ばれた、ナニカと戦う為の様な格好をして、さも、それが当たり前かの様に、普通に道を歩いている人達。
ナニカと戦うって言っても、勿論、こ綺麗なスーツを身に纏う、企業戦士サラリーマンとかじゃなくて、ガチな身を守る装備な格好。
見た目コスプレチックだけど、実用性要素がマシマシで、遊びやなんちゃってな紙装甲とは見た目からして、質感とかが全く違う。
「紅葉氏が失踪している10年の間で、世界は様変わりしたでござるよ」
「様変わりって…… 世紀末、来ちゃってる感じ?」
「まぁ、似たようなものでござるな」
桜田は俺と話しながら、リモートキーをピピって鳴らして、近くに停めてあった車のドアを開けた。
「車? オマエの?」
「僕のではないでござるよ。 会社のでござる」
「会社?」
ってか、ゴツい軍用車って……
どんな会社ですかね……
傭兵集団?
ゴツい車に色々と想像を働かせていると、
「はよ乗れ、クソモヤシ」
「……………」
まるで、反社の輩に拉致られるが如く、雫に急かされた。
そんでもって、運転席に桜田が座り、助手席には雫。
「これから紅葉が何かをやるにしても、先ずは、紅葉には現在の地上の状況をわかってもらわないとだよ」
「地上の状況?」
クリリンと一緒に後部座席に座りながら、窓の外に見える景色を眺める。
確かに、色々と知らない事が多すぎる。
ってか、認識と知識に齟齬がある感じ。
何かが微妙に噛み合ってなくて、その微妙さが酷く気持ち悪い。
浦島太郎もこんな感じだったのかな?
たった10年でこれなんだから、知り合いが居なくなって、様変わりしまくった未来世界とか、マジで別世界とか異世界と同じ様に思えてしまうんだろうな……
桜田が運転する車の窓から流れて見える景色は、自分が知っている街や建物の面影がありつつも、何かが微妙に違っていて、まるで初めて見たように感じる。
「ねぇ、クリリン。 さっき桜田が言ってたんだけど、あの、外を歩いているコスプレみたいな格好をした人達、シーカーって言ったっけ?」
「うん」
「その、シーカーって人達って、一体なんなの?」
微妙に変わっている街並みもそうだけど、一番変わってるのはコレ。
10年前と比べて、外出中に常時装備を着用しないといけないくらい、そんなに治安が悪くなったのかしら?
「そうか。 紅葉はシーカーは知らないよね?」
「うん」
「シーカーって言うのは──」
クリリンが言うには──
シーカーとは、ダンジョンから素材や資源を取ってくる人達の事を言うらしい。
「ダンジョン…… マジ?」
「マジマジ。 紅葉がいなくなって丁度1年後くらいかな? 世界中にダンジョンが現れたんだよ」
「ダンジョンって…… よく、ゲームとかラノベに出てくるアレ?」
「そそ。 ほんと、まんまソレな感じ」
「って事は、リアルにモンスターとかいる感じ?」
「モンスターって言うか、ダンジョン内は、虚無の巣みたいな感じだね」
「虚無の巣……」
久しぶりの地上は、なんだか空中都市みたいな感じになっていた。
「その虚無の巣、僕たちはダンジョンって言っているだけど、ダンジョンからは魔力の結晶とか、魔力を含んだ鉱物とかが取れるんだよ」
「ナニソレ……?」
「魔力…… 紅葉がいた10年前で言うところの、理力だよ。 それが今では魔力って呼ばれていて、魔力の結晶は新たなエネルギーとして活用されていて、地上では、新たなゴールドラッシュと技術革命状態なのさ」
「マジ、か……」
俺が居ない間に現れたって言う、ダンジョンとか虚無の巣とかもそうだけど、魔力をエネルギー源としての活用を考え、それをリアルで実行している人間の逞しさにビックリ。
「ダンジョンにいる虚無を倒すと、魔力の結晶がドロップできるんだ」
虚無を倒すって……
普通の人だと簡単じゃないと思うんだけど……
そんなに地上の人達は強いのか……?
「魔力の結晶は、エネルギー源だけじゃなくて、マギアの触媒になるんだよ」
「マギア?」
またしても新たな聞いたことがない言葉が……
ホント、日本に居るのに、外国にいる気分だ。
「マギアって言うのは、虚無を倒せる武器とか、身を守る防具の事だよ」
「それって、シーカーが身につけているアレって事?」
「う~ん。 ちょっと違うかな?」
「え? 違うの?」
じゃぁ、あの人達が着ているのってなんだし!?
純粋なコスプレって事!?
「マギアって言うのは、人の意志と魔力に反応する、特殊装備だよ」
「………………」
特殊装備ってなんぞ……?
ますます意味が分からなくなってきたぞ……
「アハハハ── って言っても分からないよね?」
うん。
マジで分からん。
「紅葉氏にも分かりやすく言うとでござるな、特殊装備って言うのは、戦隊ヒーロが変身した時のアレな感じでござるよ」
俺とクリリンの会話に、運転している桜田が入ってきて説明するも、
「余計意味が分からんし……」
アニ豚のニチアサ脳はどうやら現役健在のご様子で、余計に理解できなくなった。
「うん。 葵ちゃんの説明のまんまだね」
「は?」
クリリンはウンウン頷いて納得しているけど、俺は微塵も理解できない。
ってか、クリリンの桜田呼びが、葵ちゃんになっていて、以前とは違って距離が近くなっていて、とても親しい感じを思わせる。
それ程、10年って時間は大きいんだなって感じた。
「現物見せれば、馬鹿でも理解できんだろうが。 ホレ──」
そう言いながら助手席に座る雫が、
「──っちょ!? オマ──!?」
後ろの俺に向かって、肩越しから何かを投げてきた。
そんで、あわててキャッチしたソレはと言うと、
「モン◯ターボール?」
ホントマジソレ。
見た目が酷似しまくっていて、訴えられてもおかしくないレベル。
「相変わらずのゲーム脳でござるな」
「1ヶ月、ゲームやってねーし! ゲームしたくてもなかったし!!」
マジで娯楽に飢えた1ヶ月だったわ……
アンナ探しも大事だけど、ゲームも大事。
ってか、流石に10年経ってたら、俺がやってたゲームもサ終してるんだろうな……
「コレに、紅葉の魔力…… 理力、を流し込めば、装備開放できるよ」
「マジ? ってか、呼び方は魔力で統一でいいよ」
ってか、魔力を流し込めって言われても、
「ってか、今の俺、魔力使えないんだわ」
右手に現れた新たな線のせいで、魔力が全く使えないなう。
「え!?」
「魔力が使えないのでござるか!?」
「オマエ、マジか!?」
「うん。 ”魔力は” 使えないし出せない」
横にいるクリリンが、後部座席に振り向いた雫が、オマエ、マジかよって驚いた顔で俺を見る。
「オマエ、そんなんじゃ、今のこの世の中で生きていけねぇぞ……」
「嘘だよね? ソレ?」
「残念だけど、木梨さんが言ってる事は嘘じゃないよ……」
「マジ……」
空中都市だけでなく、どうやら、地上世界も魔力必須な世界になったらしい。
俺に死ねってか!?
「いや、でも、紅葉氏……? 空中都市で、物凄い能力使っていたでござるよね?」
俺がエルフと戦うのを見ていた桜田が、不思議そうに、ブサイクマシマシな顔でバックミラー越しに俺をみる。
ってか、ミラーに写る桜田の目元を見て、久しぶりに気分が悪くなった。
普通の鏡を、顔の一部を写すだけで人の感情を逆撫でさせる呪いの鏡に変えてしまうとか、ブサイク桜田のヘイト具合は健在だった。
「アレこそ当に、魔力じゃなくて理力だよ。 俺も空中都市で聞きかじりした事なんだけど、分かりやすく言うと、魔力と理力は全くの別物で、理力で発現させた異能を模倣したものが、魔力を使う魔法ってヤツらしい。 って、偉大な魔法使いが言っていた」
って、おジジが言ってた。
「何でござるか、ソレ──!? 詳しく!!」
豚が鼻息荒くさせながら、俺の話にメッチャ食いついてきた。
「後でな。 ってか、話が逸れまくったけど、このモ◯スターボールの事を教えて?」
手にしているボールをクリリンに渡す。
「あ、そう言えばそうだったね…… コレにこうして魔力を込めると──」
手にしたボールに、クリリンがキラッキラの魔力を込めると、
「──こんな感じで」
ボールが同じくキラッキラのモヤモヤに変わって、
「武器とか装備になるんだよ」
「──!?」
クリリンの腕に、ガントレットみたいな装備が現れた。
「今は自分の意志で腕だけに留めたけど、こんな感じな事を、全身に発現させられるんだよ、コレ」
「マジ、か……」
コレを魔法と言って良いのか、なんて言って良いのか分からない。
奇妙で不思議な現象と技術。
ってか、ぶっちゃけると、神格者である俺とかアンナは、コレと同じ事を自分の理を使ってでできるけど、
「マジで、ニチアサの戦隊ヒーローじゃねぇか……」
ダンジョンが発生してから、たった10年でコレを作り上げた人類の技術に驚愕。
桜田の例えにも納得。
ってか、空中都市にも無かった技術。
「マギアは、魔力の結晶、所謂、魔石をマギアに追加投入することで、その性能をあげられるんだよ」
「レベルアップってヤツでござるな!」
「は?」
マジ?
「基本、人類は、多かれ少なかれ、魔力はみんな持っているでござるよ。 でも、僕達みたいに、異能とか魔法を使える人は極少数でござる。 ソレを、マギアを使えば、誰でも身体能力の向上ができる様になるでござるし、魔法じみた攻撃もできる様になるでござる」
「それに、マギアに魔石を追加で取り込ませれば、マギアの上限開放力も上がって、レベルアップできるのさ。 まぁ、あくまでもマギアあっての外付け的なチカラなんだけど、疑似的レベルアップに、擬似的異能の獲得ができて、元から異能や魔法を使える僕達にとっても、マギアを使う恩恵は大きいよ」
クリリンがそう言いながら腕に魔力を込めると、
「そんなモンができてるのか…… スゲーな……」
ガントレットがさっきと同じボールに戻った。
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