アンナを探しに行って来ます
アンナに電話?をかけ、
「…………………」
聞き慣れない呼び出し音が、耳の奥で鳴り続ける。
手やモノとかを耳に当てていないのに耳の奥から音が聞こえると言う、不思議現象にアワアワしていたんだけど、
「繋がらない……」
全く、これっぽっちも通話が繋がらない。
どうなってんのコレ?
ジダの野郎、魔素さえあれば、どこでも繋がるって言ってたじゃねぇか!!
繋がってねぇし!!
眼の前の受付嬢と会話しているであろう、俺に適当な事を吹き込んだジダにブチ切れ寸前。
「すんません。 ジダに、後、3分で此処に来ないと、リリマナにエグい下着をプレゼントするって伝えてください」
「はい。 分かり── え?」
俺のジダへの伝言に、受付嬢さんがゲス野郎を視る目で俺を見た。
「コレは、お互い、緊急事態ですよ?」
「緊急…… 事態……」
そんで、よっぽど周りに聞かれたくないのか、口元に手を当てて小声でボソボソとなにか言っている。
あの、シスコンの事だから、こう伝えておけば速攻で来るだろ。
来なかったら、マジでエグい下着をリリマナにプレゼントしてやる。
ってか金の無駄だから、裁縫用の糸を下着って言って渡してやる。
………………
…………
……
…
時間が惜しいけど、ジダを待つこと数分。
余程急いで来たのか、
「ハァハァハァハァ──!!」
ジダが息を荒らして到着するなり、
「──オマエっ!! ブっ殺スぞ!!」
「………………」
ターミナル中に響き渡るくらいの大声でもって、俺への公開殺人予告。
コレには俺だけじゃなくて、桜田達もドン引き。
「俺の顔を見るなり殺人予告とか、オマエ、ヤベーな……」
「フゥフゥフゥフゥ──!! ヤベーのはオマエの思考回路だろうが!! リリマナに、俺の妹に変な事したら、オマエを10回殺してやる!!」
「………………」
シスコン、此処に極まり。
「紅葉……」
そして、ジダにナニかしらのシンパシーを感じ取ったクリリンが、
「知り合いの妹に手を出すのはダメでしょ?」
真剣な顔で力強く首を横に振る。
ホント、シスコンって、妹を使った冗談がマジで通じない生き物なのな……
鬼気迫る、ガチなダブルシスコンに恐怖していると、
「モミジさん! 急ぎって何かあったんですか!?」
リリマナも少し遅れて到着。
「──!!」
そんなリリマナと俺の間に身体を滑り込ませ、
「コイツと極力言葉を交わすな!! 良からぬモノが伝染る!!」
「伝染るって……」
躊躇なく腰の剣に右手を当てているジダ。
伝染る伝染らないとかの前に、俺を殺す気マンマンで草。
「えー、取り敢えず急ぎだから、掻い摘んで話すから。 アンナが地上に落とされた。 って事で、俺はこれから地上に向かう。 って事で、留守番ヨロ」
「はぁ!?」
「アンナさんが地上に!?」
驚く兄妹にウンウン頷く。
俺も驚いたんだから、オマエらも、俺と同じくらい驚いとけ。
「そして、これはどうでも良い、オマケ的な事なんだけど、おジジも一緒に落とされた」
「オマ──!? どうでも良くないだろソレ!? 武御雷より重大な事じゃないか!!」
「え? おジジって誰ですか? 誰かのおじーちゃん?」
「………………」
この兄妹の温度差に草。
誰かのおじーちゃんってwww
まぁ、間違ってはないけどさぁwww
まぁ、普通に暮らしてたら、おジジは誰彼もが簡単に会話する事ができない様な地位にいる存在だからね。
「なんで、そんな事に!? オマエ、一緒に居たんじゃなかったのか!?」
「いや、おジジとは一緒に居なかった。 ってか、おジジ来なかったし、会談はエルフにジャックされた。 ってかエルフのヤツら、地上からの使者を俺を使って殺そうとしてた。 しかも、俺も殺されるリストに入っていて、邪魔な俺にザマァするために、アンナを地上に落としやがった。 おジジも俺と同じく、エルフが支配する空中都市には邪魔だって事で、アンナと一緒に地上に落とされた。 おしまい。 まる」
俺の、適切かつサルでも分かる説明に、
「………………」
物凄い顔でめっちゃ俺を睨みながらフリーズしたジダ。
桜田たちとか、リリマナ、受付嬢さんも物凄い顔でフリーズした。
マジで瞬間冷凍。
「って事で、地上に行ってきます」
「ちょ──!? まてまてまてまて! 情報量が多すぎて、イマイチ頭に入ってこない!」
「どんだけ小さい脳みそしてるし? まんま受け取って把握しろし」
「俺の脳みその大きさ依然に、話の内容が濃すぎるんだよ!! どれ一つとっても、重大事項じゃないか!!」
一応、把握はしてるっぽい。
まぁ、確かに内容が濃すぎる。
ぶっちゃけ、アンナが関わってなかったら、こんなん、俺は絶対に関わりたくない。
って事で、アンナ以外の事案は、ジダに丸投げするのである。
「俺はアンナを助けに行く。 ついでにおジジも。 って事だから、オマエはエルフ問題をなんとかしろでやがります」
「なんとかしろって! どうすりゃ良いんだよ!!」
「エルフのヤツら、虚無を身体に取り入れていて、虚無っぽくなるから気をつけて」
「はぁ!? オマエの話し、聞けば聞くほど濃さが増してるぞ!? 虚無を身体に取り入れてるってなんなんだよ!?」
ソレはマジでこっちが聞きたい。
何をどう考えれば、誰がそんな巫山戯た事をやろうって思ったのかしらね?
「なんか、人体改造?されて、人間に虚無を取り込ませた結果がエルフとか言ってた」
「え“──!?」
「モヤシ!? オマ──!? マジかソレ!?」
「マジマジ。 な? 桜田?」
一緒にその場にいた桜田に同意を求める。
ってか、ぶっちゃけ俺もよく分からない。
「本当でござるよ…… 紅葉氏がバラバラにピチュンさせたエルフがそう言っていたでござるよ」
コレで俺が聞いた事は全部共有し終えた。
丸投げとも言う。
「って事で、ジダ。 後は頼んだ」
「オマエは、なんてモノを俺に丸投げしてるんだよ!? 俺なんて、単なる、イチ、現場の指揮官でしかないんだぞ!? こんなの、完全に空中都市全部を巻き込むヤツじゃないか!」
そして、オマエは今、巻き込まれたのだ。
しかも、最前線のど真ん中に。
「早くなんとかしないと、地上との外交問題も追加されるぞ? 頑張れよ」
「なんでそこまで他人事でいられるんだよオマエ!?」
ジダが頭痛を訴える様にして、カウンターに突っ伏した。
「取り敢えず、地上の使者達は俺の知り合いだから、エルフ問題さえなんとかすれば、なんとかなると思う。 な? 雫?」
「なんとかなる訳ねぇだろボケ! こちとら、手首潰されてんだよ! 絶対に落とし前つけさせてやるからな!」
「………………」
地上からの使者さんは、実は反社の輩だった件。
「って事でリリマナさんや。 コイツの怪我を早急に治してくださいませ。 このままでは、空中都市の未来が危ない」
「え? は、はい!」
いやマジホントコレ。
被害を受けたバーサーカー雫さんは、絶対に、エルフ達の阿鼻叫喚を所望してくる事間違いない。
しかも、”血には血を“ を実演してみせるだろう。
って事で、俺は地上と空中都市の問題から逃げる為に、アンナを探しに行って来ます。
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