完全に集団ハラスメントである
トイレの個室に籠もる事十数分。
セキュリティーさんに、はっじまるよ~って言われて、
「モミジ様ー!! お急ぎください!! 皆様お待ちしております!!」
「………………」
ドアをメチャクチャドンドンされまくっているなう。
ってか、怪しすぎる俺専用の部屋に入りたくないからって、時間つぶしの為に適当に便座に座ってたら、
「お待ちしておりますをお待ち下さいませ…… ストップ言われても止まらんのですよ…… 俺にはコレを止められんのですよ……」
マジでウン気に襲われて、只今、絶賛、在庫捻出中。
ドアの向こうに誰かいるって分かっていても、音も臭いも一切気にしてられない程の、腸の逆襲による肛門への奇襲。
「──クっさ!? い、いえ、失礼!! た、大変申し訳ございませんが! 地上からの使者様も既に揃っておりますので!! 何卒お急ぎを!!」
セキュリティーさんの声が、なんか数秒前と違う。
絶対に鼻を摘んでいる事間違いなし。
「……ガラクシャ様も来てます?」
「が、ガラクシャ様は、少々遅れる、との事です!!」
「……そうです、か」
これ以上捻出する在庫もスッカリなくなったから、のんびりと魔導ウォシュレットでキレイキレイ。
ってか、おジジ、来てないか……
これは、いよいよ覚悟を決めるしかなさそうだね……
お腹はスッキリしたけど、心はスッキリしてない状態で個室から出る。
時間稼ぎも兼ねて手を入念に洗って、シャドー空手チョップを連発させて手を乾かす。
セキュリティーさんには完全にアホを見る目で見られまくっているけど、そんなの、俺から漏れ出た匂いを分かち合ったブラザーだから気にしないでおく。
って事で、
「はぁ~……」
いよいよ会場入り。
会場は、
「………………」
見た目豪華な円卓の会議室。
くっつければ円卓になる机が、半分こされて、中央に動線ができて、左右に対になる用に配置され、
「……………」
ドアから入って左に空中都市のメンバー6人、右に地上のメンバー6人ってな感じで陣取って席についている。
ってか、
「──!?」
地上側には、何処かで見たことがある様な人達がいて、
「「「──!?」」」
俺と同じ事を思ったのか、クッソ俺を見まくっている地上メンバー。
そんな地上メンバーは一旦無視。
中に入るとスタッフに小声で半円卓の端に座る様に言われ、
「………………」
あえて無言で席につく。
ってか、本来であればおジジが座っているべきである真ん中の席に、今まで見たことがない、初老に片足を突っ込んだ様な、前髪だけ白髪のオッサンが座っていた。
ってか、状況的に地上から来た俺を端に座らせるのって、アリなん?
言外に地上に対してアレって感じだよねコレ?
色々とツッコミたい事があるけど、中でも、
「………………」
空中都市側のメンバーは、俺以外が白い法衣みたいな格好で着揃えていて、地上側のメンバーもスーツ姿な正装で、その中で普段着な俺の存在が浮きまくり。
「………………」
完全に集団ハラスメントである。
正装って聞いてないし!?
もしかして、控室に用意してあった的なアレなの!?
この場の空気にいたたまれずに大人しく身を縮こめていたら、
「では、揃いましたので、早速、始めたいと思います」
俺の逆サイドの端っこに座っていた、これまた知らないオッサンが場を仕切り始めた。
え?
揃った?
おジジは?
こんな大事っぽい会合で、空中都市で一番偉いおジジ抜きで始まるっぽい。
流石にソレはないだろ?
ってか、お前ら──
って事で、
「はい。 ちょっとまってくださいませー」
──初めて見た顔だし。
司会役を制して手を上げながら待ったをかける。
空中都市側のメンバーにめちゃ見られた。
んでもって、地上側の人達にもめっちゃ見られた。
「空中都市で一番偉い筈の、ガラクシャ様がこの場に居ないのは何故ですかー? 一番偉い人は用事か何かですかー? それを先ずは相手側に伝えておくべきかとー」
俺のこの発言で、地上メンバーがザワつく。
対して、空中都市側は完全沈黙。
司会のおっさん、メチャクチャ目がウロウロしていて、誰がどう見ても横からの助けを待っているって直ぐ分かる。
「そもそも、俺はガラクシャ様の付き添いとして依頼を受けたんですけど、そのガラクシャ様が居ないんで、帰っても良いですか? これは、依頼に入ってなかったので」
依頼を受けたおジジが居ないから帰るって事を告げたら、
「貴様っ──!」
「なんだと──!?」
数名が怒りを顕にした。
はい。
あなた達、相当、沸点低いですよー。
地上側のメンバー、完全に不審がってますよー。
「と言う訳でして、依頼主である一番偉い人がこの場に居ないので、俺は帰らせて頂きますです。 もう一度言いますけど、俺に “依頼した”、 “一番偉い人” が “この場に居ない” んですよ。 何故なんでしょうねー?」
この状況を完全に不審に思い始めた地上メンバー。
誰もが眉間にシワを寄せて、物凄い顔で空中都市メンバーを見ている。
「って事で──」
俺は俺でそそくさと席を立つ。
こんな茶番、どうぞ俺抜きで勝手にやってくれさい。
マジで巻き込まれたくないわ。
けど──
「待て」
「………………」
──本来、おジジが座っている筈の場所に、何食わぬ顔で座っていたおっさんに声をかけられた。
「こうまで場を乱されて、大人しく帰す訳がなかろう」
「じゃぁ、どうすれば俺をお家に帰してくれるんですか?」
「この状況下で、チカラしか脳がない貴様にできる事は、一つしかなかろう?」
無表情なオッサンは、俺から視線を外して地上メンバーに向け、
「今日、この会合は、無かった。 我々は、地上からの使者等は、見ていないし、聞いてもいない。 良いな?」
顎をしゃくる。
俺に殺れってか?
オッサンの言葉に地上メンバーが怒り席を立つ。
「俺がそうするメリットは?」
「上の席では不満か?」
「………………」
オッサンは、相変わらずな無表情な能面顔で、しかも、ものスっごい上から目線。
ってか、上の席って何処ぞ?
ってか、席って何ぞ?
「ふ~ん……」
席が何で何処のどんな席を指しているのか分からなさすぎるから、
「そう言う事ね……」
腕を組んで右手を顎に当てながらソレっポく考える。
「そう言う事だ。 理解したのなら、貴様の責を果たせ」
「………………」
オッサンが右手を上げると、外から沢山の兵士が会議室に入ってきた。
「「「──!?」」」
それに対して地上メンバーが構えを取る。
そんな、見た目、完全にハメられた地上メンバーに向かって、
「あー。 悪ぃけど…… どうやら、そう言う事らしいぜ?」
右目を瞑って人生で一度もやったことないウィンクをし、
できてるかな?
俺、ウィンクちゃんとできてるかな!?
「って事で──」
左手を伸ばしてかざして、
「──頑張って死ぬ気で暴れてくれろ」
中指を立てる。
「──ブタ、アル中、シスコン」
「先ずはお前が死ね!! クソモヤシ!!」
「相変わらずの特級呪物具合でござるな!!」
「シスコンじゃないから!!」
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