俺、完全に信用されてなくて草
おジジとセントラルで話してからあっと言う間に2日が経った。
この2日間は、いつも通りに虚無の駆逐と言う、世界の清掃活動。
ホント、サブカルなさすぎでやる事なさすぎ……
ってなわけで、俺はおジジの要請通り、朝早くからタカマガハラのターミナルに居るなう。
「モミジ…… 一人で大丈夫?」
「う、うん……」
朝早いと言うのに、ターミナルまで一緒に来てくれたアンナが、心配そうに俺の手を優しく握る。
なんて良い嫁やぁ……
寝起きから既に、胃痛、胸焼け、目眩、頭痛、吐き気が起こっている状態で、これから地上の代表と顔合わせをしなければならない。
この件を引き受けたは良いものの、モブで引きこもりな俺にとっては、砂漠で1ヶ月過ごすのと同等レベルに過酷すぎでハードル高すぎ。
上手くやれるどころか、寝起きからやられた胃のせいで、ケツのアナ筋が緩んでしまう未来が視えまくっている。
「お腹が……」
ってかもう既に、寝起きからトイレで3回戦程戦ってしまっていて、俺のアナ筋の忍耐は燃え尽きる寸前。
俺のアナキンよ!
快楽に打ち勝つのだ!!
公衆の面前でダークサイドに落ちるのだけはマジで勘弁だぞ!
フォースと共にあらんことを!
そんな焦燥しまくっている俺だけど、嫁の柔肌によるボディータッチで、ホンノリと身と心が癒やされる。
まるで、弱った胃に染み渡る、お粥みたいな優しさ。
よし!
元気出た!!
アナキンももう少し頑張れそう!
と、心と身体が葛藤と戦っている中、
「おぉ…… 珍しく早起きだな……」
少しヤツレたジダ登場。
「ウルセ。 ストレスがハンパなさすぎて寝られんかったわ……」
「そうか…… 実を言うと、俺もオマエがどれだけの粗相はたらくかが気になってしまって、今後の身の振り方を考えてたら全く眠れなかった」
俺の眼前にいるイケメンは、会合で俺が粗相する事は確定で考えていて、粗相の具合と自分への影響が気になりすぎて眠れなかったようだ。
「アンナ? コイツ、マジでブっ殺していいかな?」
「モミジ、落ち着いて。 チカラ入れちゃうと出ちゃうよ」
「おぉっとー。 アブねぇアブねぇ」
俺とした事が、取り乱しちまった!
危うく、アナキンが快楽に落ちるところだったわ!
「それじゃ、会場に向かうぞ」
「ってか、またしてもお前が俺の案内役なんだな?」
「オマエを起こして連れて来いってのが、俺への上からの依頼なんでな」
「………………」
俺、完全に信用されてなくて草。
って事で、
「アンナ…… 行ってくるよ……」
爆弾を抱えた俺が会場に向かう決心をする。
「うん…… お腹がユルくなったら、ボクの事を思い出して…… ボクはモミジが粗相しても愛し続けるから、目撃者を消すのだけはやめてね……」
「うん?」
なんか、まるで、俺がシリアルキラーなサイコパスみたいな事を言われたけど、
「はぁ~…… 朝からお熱いこって……」
お出かけのキッスで有耶無耶にされた。
アンナの唇は、朝からお豆腐みたいな味でプルンプルンだぜ!
「はいはい。 さっさと行くぞ。 朝から糖分過多で吐きそうだわ」
「「………………」」
そして俺は、ジダによってオジジの元へとドナドナされた。
………………
…………
……
…
はい。
会場に到着しましたよっと。
どうやら俺とジダが一番乗り?
って言っても、会場の入口前には、もの凄い厳戒態勢。
正装したセキュリティーの方々とか、受付の方々。
そんで、
「モミジ来ましたです」
そこら辺にいる人に名前を伝えると、
「……こちらへどうぞ」
クッソ不審者を視る目でセキュリティーの人に見られまくって、
「ここでお止まりください」
カーペットに描かれた、人が一人程しか入れない円の真ん中に立たされた。
その円の左右には、昔むかしの偉い人が持っていそうな、透明な笏みたいなのが浮いていて、
「おぉう──!?」
セキュリティーの人の合図と共に笏が俺の周りを回り始めた。
そんで、ソレが止まるまでが一連のセキュリティーチェックらしく、
「どうぞ…… お進みください……」
メッサ納得していない顔で会場に通された。
「おい。 俺はここまでだから、問題だけは起こすなよ?」
そんでもって、セキュリティーシステムの手前で手を振るジダ。
「オマエは俺の母ちゃんか? 俺は問題起こす前提なのか? ってか、俺にナニカ問題起こせってフリなのか?」
「お客様……?」
「あ、いや、問題は起こさないですよ? これは、売り言葉に買い言葉ってやつで……」
「プっ──!? ククククククククク──」
「………………」
出だしからセキュリティーの人に囲まれた俺を見て笑いを堪えまくっているジダ。
これ以上あいつと話していると、俺がテロリスト認定されかねないから、
「オマエ、帰ったら覚えてろし!」
捨て台詞を吐きながら、俺を案内するスタッフの女性の後に続いて、
「待合室を用意しておりますので、先ずはこちらへどうぞ……」
待合室へと向かう。
踏み心地フッコフコな絨毯が敷き詰められた廊下を歩いていて、我、フと思うなり。
此処……
何処ぞ……?
タカマガハラのゲートから転移してきたは良いものの、ゲートの先が分からない。
って事で、俺が今居るところも分からない。
当にシークレット。
ってか、自分が居る場所が分からなさすぎて恐ろしすぎる。
俺より先に歩いているスタッフさんが、
「こちらへどうぞ」
綺麗な所作でドアを開けて、手で中をさして入るように促してきたけど、
「っㇲ……」
なんだかこの部屋に入るのが怖くなってきた……
入っても封印されないよね?
俺、特級呪物扱いとかされてないよね?
ここに来て、俺の持病の、知らない人怖い怖い病が発生。
ってか、ドアの横に、
『モミジ専用』
って、空中都市語で書かれていて、ソレが余計に不信感を煽りまくる。
「俺、専用…… なんです、か……?」
「はい。 モミジ様専用でございます」
「他の人は何処ですか?」
「他の方々はコレより参られます」
「いや、そうじゃなくて…… 他の人達も、専用の部屋があるのでございますですか?」
「えぇ、勿論でございます。 各自ができる限り落ち着いてお寛ぎ頂けるようにと、セントラルからのご配慮でございます」
「セントラルからの、配慮ねぇ……」
「はい」
「おジジ…… じゃなくて、ガラクシャ様の采配ですかコレ?」
「いえ、セントラルからとお伺いしております」
ぶっちゃけ、俺には、おジジと魔法省の人たち以外、セントラルの奴らには良い印象がない。
「ほ~ん……」
俺の知るセントラルの奴らは、人のふんどしで相撲をとって、甘い汁だけをチュウチュウ吸って、自分の思い通りにならなければ、見境なく癇癪を起こす様な奴らだ。
ぶっちゃけ、3歳児以下の行動と一緒。
それが、あの部屋は、今回の主催のおジジからじゃなくて、セントラルからってこのスタッフさんは言っている。
「ちょっと、トイレ行きたいです。 部屋に入る前にトイレ行きたいです」
「お部屋内にもございますが?」
「トイレは人でワイワイしていないと落ち着かない性分でして…… 特に大の時は……」
「そ、そうでございますか……」
スタッフさんは、笑顔だけど目が笑ってない。
「では、こちらへどうぞ……」
完全に痛いヤツを視る目で、俺をワイワイしているトイレへと案内する。
さてと、始まるまで、トイレでどれくらい時間を潰せる事やら……
ってか、なんか色々と臭ってきたぞ……
っつても、俺のケツじゃないところからなんだけどね。
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