ニュータイプってマジでスゲーって思ったわ
アンナが退院してから1週間が経った。
その間、アンナのリハビリのお手伝いをしつつ、イチャイチャしつつ、の毎日。
そんで、この前みたいなアンナが大怪我するのは嫌だから、コレを機に色々と俺の能力の使い方について模索中。
アンナはまだ本調子じゃないから現場復帰はできてないけど、
「オマエ…… 人間、辞めたのか……?」
「辞めてねぇぇぇしぃっ!? ちゃんとヒト科のヒト種だしぃっ!?」
俺は甲斐性を見せる為にお仕事中。
って言っても、空中都市にはサブカルが無さすぎて、暇すぎて、楽しめる事が無さすぎるから、部屋でゴロゴロしてたんだけど、
『ねぇ、モミジ? 暇なら能力の使い方の練習すれば? そしてもっと強くなって、ボクを守ってよ?』
って、ほっぺにチューされながらアンナに言われた日にゃぁ、
『分かった。 遂に、俺の秘めたるチカラが解放される日がやって来た様だな……』
って事で、甲斐性云々は言ってみたかっただけの、戦う訓練を兼ねた虚無退治。
って事でまぁ、虚無は丁度、俺の能力の使い方を模索する為の実験台となってもらっているだけなのだが、
「いや、ないわー。 オマエ、空飛ぶわ、ありえないイカれた動きするわ、虚無に殴られても傷一つ付かないわ、一撃で虚無を倒すわで、俺にはお前がヒト科のヒト種にはどうやっても全く見えないんだが?」
「オマエ! 目ぇ腐ってるのか!? 俺が人間じゃなかったら、オマエも須く人間じゃないってのと同義ぞ!?」
線が増えて以来、ヌルゲー気味。
ってのも、
「いや、違うだろ? 根本的にオマエは違うだろ? 何処の人間が自分の念力で自分の身体を人形みたいに操るんだ? 自分の身体を外部から自分で操るとか、人間の動作として矛盾しまくった事しやがって、絶対おかしいだろソレ? 馬鹿か? 馬鹿なのか?」
「ウルセー!! 馬鹿じゃねぇしぃ! コッチの方が動く時は身体が楽なんだしぃ! スムーズなんだしぃ!! しかもパワーアップできてるしぃ! キビキビ動けてるしぃ!」
呆れた顔で俺を見るジダが言う様に、俺は新しい能力の念力を使って、身体の中に流れているダークマターを操って、自分の身体を格闘ゲームのキャラクターとかアバターみたいな感じで操っているのだよ!
コレだと、直感的に、俺のイメージ通りに身体を動かせて、めっちゃ動けてしまうのだよ!
しかも、身体に薄くダークマターを纏わせる事で、念力で身体を浮かせたり、空中を蹴ったりとか出来て、正にワイヤーアクション的な3次元的なゲームキャラ的な動き!
しかもしかも!
纏っているダークマターのおかげで、地面を激しくゴロゴロしても、身体が痛くないって言うオマケ付き!
例えるなら、長ズボンを履いてスライディングした時、膝とか脚が痛くないアレな感じの無敵版!
「オマエ、絶対イカれてるぞ? 側から見てたら、イカれた動きがどうのこうの言う前に、死ぬのが怖くないって言うか、恐怖心が無いって言うか、感情のネジが数本足りて無い様に見えるんだよ」
「………………」
いや、死ぬのは流石に怖いだろ?
ってか、ネジ云々は言い過ぎだろこの馬鹿?
ブっ殺すぞ?
でも、不老不死だからなんとかなるかな?って思っていたり、念力で自分の身体を操ると、自分の身体が自分のモノじゃ無い感じに思えるって言うか、まぁ……
はい……
格ゲーごっこですわ……
自分の身体を使った格ゲーですわ……
「貴様! 俺を誰だと思ってる!!」
「単なる馬──」
「──縛り入れて舐めプしても、こんなヌルゲーじゃ全く死ねんわ! 引き篭もりのゲーマーは伊達じゃない!」
ごっこに熱が入る俺を見て、ジダは額に手を当てながら空を眺めた。
「いや、伊達じゃない云々じゃないと思うぞ…… ってか、熱くなってるトコ悪いが…… オマエが何を言ってるのか、俺にはさっぱり理解できん…… オマエの世界の地上は、俺たちには理解できない言葉を使うんだな……」
「──っク! ここに来てカルチャーショックの弊害がっ!! サブカル万歳!!」
サブカル有り無しの世界間だと、こうも言いたい事やイメージの共有ができないものなのか!
無念!
俺は、心底、サブカルがない空中都市を怨みながら、
「──波○拳!!」
向かって来た虚無に、念力で勢いよく飛ばした波動のソレっポいダークマターをお見舞いしてピチュンさせてやった。
「……また、一撃かよ…… オマエの黒いソレ、ホントなんなんだ一体?」
知らん!
寧ろ俺の方こそオマエ以上に知りたいわ!
念力のおかげで、モノによっては有線じゃなくてもダークマターを放てる様になった俺。
ある程度、距離が近ければコレで虚無は簡単にピチュンできるけど、距離が遠い場合は銃の方が威力が高い。
しかも、
「オイ!? 後ろ──!!」
「ん?」
「──か、ら…………」
念力を使って纏っているダークマターを直感的に動かして相手の攻撃を弾いたり受け流したり、
「いや…… やっぱりオマエは人外だわ……」
「人外言うなし!」
今みたいに、周囲に漂わせているダークマターで感知して、俺に当たる前に防いだり止めたりもできる。
って事で俺は、ダークマターを有線と無線で使い分けられる様になった。
今後の課題は、物質として発現させたダークマターを常時滞空待機させておいて、ファンネルみたいな感じに半自動化させる事。
今はまだ、動いてない時にしかできないけど、動きながらコレをやると、右を見ながら同時に左を見る感じでクッソ難しいし、思考が分断されて通常の行動も鈍化して、脳みそが痛くなる。
やってみて分かったけど、ニュータイプってマジでスゲーって思ったわ。
コレばかりは地道に練習して慣れるしかないっぽい。
って事で最近は、常時、薄いダークマターを身体中に纏いながらも、同時に付近に散布して滞空させているのだよ。
無意識で危険を感知して自動防衛とか、ロマンだからね。
………………
…………
……
…
夕方になって、今日の虚無退治が終わった。
拠点の周りには小さいながらもメッシュドームを発現させているから、虚無に凸られる事は無いと思う。
今は、この前のメガラニカからシャンバラの地上に居て、って言うのも、シャンバラもメガラニカみたいにメッシュドームを出して、前線の維持をしてくれって要請があった。
なんか、良いように使われている感じがして嫌だったけど、特別手当が出る言われたから要請に応じた感じ。
「ソレじゃ、また明日な。 明日も仕事だからちゃんと早く寝ろよ? 遅刻するなよ?」
「オマエは俺の母ちゃんか!? ってか、新婚事情に介入してくんな!」
ターミナルにあるカウンターで今日の分のお金を受け取って、口やかましいジダと別れる。
こう言う死と隣り合わせで危険な仕事だからなのか、手当は日当で貰えるんだけど、貯めておいて一気に貰う事も出来るらしい。
俺は既に、2拠点に発現させたメッシュドームのお陰で数年分は働かなくても良いくらいのお金を稼いでしまっているけど、俺がお金を持っていたら豪遊してしまう恐れがある為、そのお金はアンナに預けている。
まぁ、俺が9本線ってだけで、日当もソレなりに豪遊出来る額を貰えているんだけど。
って事で、アンナに仕事帰りに買って来い言われた卵を買いに行く為に街に向かう。
メガラニカもそうだったけど、シャンバラも相変わらず、中世と近代が混ざった様な街なみで発展しまくっていて、ソレらに比べて、アンナと俺の部屋があるタカマガハラは、少し発展が遅れている感じ。
高層ビルみたいな高い建物を見上げながら、シャンバラからタカマガハラに帰る為の転移の建物に向かっていると、
「すみません! 少しお時間宜しいでしょうか!」
「ん?」
見知らぬ女性に呼び止められた。
俺に屈託のないキラキラした眼差しを向けている女性は、頭からヒジャブとかウィンプルみたいな布を被っていて、
「この世界の仕組みについて、是非とも貴方のご意見を聞かせて頂きたく!」
「………………」
言動からして、完全にアレなヤツって事がすぐに分かった。
ってか、俺が居た地上だけじゃなく、空中都市にもこう言うのがあるんだなぁと、なんか、少し気持ちが落ち込んだ。
「すんません。 俺、宗教とか神様とか、僧侶とかお坊さんとか、更に言うと、人間すら信じてないんで」
「え?」
「あ、壺もお札も、本も買わないですよ?」
「え?」
こう言うのは、俺がヤベーヤツ、若しくは、こんなヤツに話しかけなきゃ良かったって思わせるのに限る。
って事で、
「俺、今から卵を買いに行くんですけど、フと考えちゃったんですよ。 鶏と卵って、どっちが先なんだろうかと。 貴女はどっちが先だと思います?」
「ソレは…… その……」
「鶏がいないと卵が産まれない。 卵が無いと鶏が産まれない。 でも、卵から鶏は産まれるし、鶏は卵を産む。 一見、ループしている様に思えますけど、ぶっちゃけ、この段階で、もう答えは出てるんですよ? 答えは、何を持って鶏とし、何を持って鶏の卵とするかなんですよ。 はい。 もう分かりましたよね? では、鶏と卵、どっちが先ですか?」
「え、え〜っと…… それは…… 卵から……? いや、違う…… でも……」
俺の質問に対して、女性は思考の渦へと呑み込まれ、自問自答を繰り返し始めた。
って事で、愛しのアンナがお家で待ってるから、さっさと卵買ってかーえろっと。
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