俺を普通にさせてくれさい……
バニーさんが持ってきた、
【魔法使いになろう! コレで今日から君も魔法使いの仲間入り!】
メッチャ見たことがありまくりな、物凄く身に覚えがありまくる、なんか、厨二臭を漂わせてる、ソッチ方面に痛い感じのタイトルなソレ。
とんでもない大昔からの物らしいけど、何故か俺には、ソレが割と最近なモノに思えて、親近感を感じまくる。
ウP主と同じ、大昔のハコの使いが残したものなのか、はたまた、何かがあって、偶々残ってしまったモノなのか分からないけど、多分、ハコ関連な方のヤツで合っているっポいソレ。
そんで、ソレを俺に使え言っているヨボヨボおジジ。
ってか、この人達は、ハコの使い達の事を知らんのか?
そもそも、ハコの使いは天空都市は管轄外なのか?
パッと見で、こんな紙切れ1枚に書いてある、厨二臭い文字だけで、自然と色々と考えさせられてしまうんだけど、この古びた紙には、マジで嫌な予感しかしない。
しかし、
「………………」
会場中の人達が、良くも悪くも色んな期待を込めて俺を見まくっている。
こんなんが出てくるとかマジで勘弁してほしいんだけど、状況的にやるしかない訳で……
ってか、クッソ見られまくっている訳で……
こんな状況で、下手に拒否とか遠慮なんかしようものなら、タダでさえもレアな存在らしい俺は、空中都市の皆々様に、何をされるか分かったもんじゃぁない。
捕まって実験台にされるか、捕まって虚無狩りの為に飼い慣らされるのは確実だろう。
だったら、安易に俺に手が出せないくらいに俺自身がブっ壊れ性能になってやるか、俺を捕まえて何かしようと言う事を思えないくらい、徹底的にチカラの差を見せつけてやるしかない。
って事で、
「……それじゃぁ」
心も決まったから、カートの上にあるソレに触れてみる。
おジジが言うには、コレは今まで誰も何も出来なかったらしいけど、もし、俺が使えても、頼むからマジで擦り寄ってくんなよ?
目立つ事や面倒事はマジで嫌だ。
ぶっちゃけ、玉藻の異能ダブルのケースもあるから、もし、本当にコレが、ハコのアレだったとしても、高い確率で、俺にまた何かが起こるんだろうなぁ……
って思ったり思わなかったり。
そんで、触れてみて分かったのは、コレは、なんかの皮とかじゃなくて、なんて言うか、粗悪な厚めのリサイクル用紙っポい触り心地。
ってか、触れただけではなんの変化も発動も無い。
ハズレか?
ただ単に触れただけでは、俺のスマホん中にある、あの巫山戯たPDFとは何処か違う。
アレは、触れた瞬間から挙動がおかしかったからな……
まぁ、ソレならソレで、適当にやってみるか?
って事で、同じくカートの上に用意してあった、新しい針を取るために、一旦、両手で持っていたソレをカートに置こうとした瞬間、
「え?」
俺の左手の線がぐぁぱぁ〜って開いて、
──!?
ソレをムシャムシャ食べ始めやがった。
「………マジ?」
なんか、やってしまった感が否め無い。
と、同時に、何故か一気に申し訳ない感が溢れてきた。
ってか、なんで勝手に食ったし!?
そんなばっちいモン、すぐさまぺってして!!
お願いだからぺってして!!
コレ、絶対に何か起こるヤツじゃんんんん!!?
コレから俺の身に、何かが起きるであろうと言う事を考え恐怖しながら、恐る恐る、デュクシーさんに視線を向けると、
「………………」
モノすっごい顔で俺を見てた。
ってか、俺の左手が用紙を食った様子が、頭上のディスプレイにバッチリと映し出されていた様で、
『『『………………』』』
おジジどころか、会場中の人達が、モノすっごい顔をしながらフリーズしていた。
そんな居た堪れない空気が流れる会場とは裏腹に、
「うぇえっ──!? ナニコレしっ──!? キモっ!? だからぺってしろしっ!!」
俺の左手の線が何故かモゴモゴしている。
見た目、完全に入れ歯をモゴモゴさせているみたいな高齢者のモゴモゴ具合。
線で描いたコミカルなドクロな口がモゴモゴしていて、軽く開いたり閉じたりを繰り返していて、マジで人間の口みたいな動き。
しかも、モゴモゴ具合が段々と激しくなっている始末。
激しくグネグネ、モゴモゴさせまくって、線がムカデみたいに波打ってウゾウゾ動きまくって、
「いっ──!?」
しかも、動きが更に速くなりまくって、線の残像しか見えなくなって、オマケに、俺の左手までもが激しく震えまくって、
「ちょぉっ──!?」
リアル、“今日は左手が無性に疼くぜ” な状態になってんなぁって思った瞬間──
『〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』
──いきなり大口を開けて、なんオクターブかも数えきれない程のクッソ甲高い奇声をあげまくった俺の左手。
「ふぁぁぁああああ──!?」
そんな不意打ちなホラーな左手にビックリしまくった俺も、思わず奇声。
会場中が耳を押さえまくって、
──!!
不快な音に辛そうに表情を歪めてる。
当の俺はと言うと、
「ウッセー!?」
何故か大音量な事以外は問題ない。
ひとしきり奇声をあげまくった左手は、まるで、何もなかったかの様にいつも通りな感じで黒い線に戻った。
のだけど──
「アレ……? 線、増えてね?」
──線が1本増えていた……
縦に長いのが1本、そして横の線が3本から4本になって、合計5本。
「ってか、線って増えないんじゃ……」
またしても、俺の中で何かがバグった感じがする。
そんな俺を見て、
「フフ── フハハハハハハハ──!!」
おジジが嬉しそうに笑い声をあげた。
「──神格者の身で魔力を扱えるだけでなく、線が増えよったわい!」
ソレはもう、枯れた見た目と違って、少年の様に目をギラギラさせながら、ショーケースにあるトランペットを見つめる様な視線を俺に向けていた。
「いや〜。 長く生きていて良かったわい。 実に、素晴らしい出来事に立ち会えた!」
モノすっごく嬉しそうなおジジのテンションは爆上がりで、
「……っスね……」
俺のテンションはダダ下がり。
俺を普通にさせてくれさい……
………………
………
……
…
そんなこんなで、テンション上がりまくったおジジを筆頭に、
「なんでこうなったし……」
実験的に、マジでお高そうな魔法のスクロールを次々と惜しげも無く覚えさせられていった俺。
まぁ、線が発狂したり、1本増えたって事については、何故かあった、ハコのアレを使ってしまったから仕方がないとして、片付けられるけど。
魔法習得の公開実験が終わる頃には、
「マジで巫山戯んなし……」
それ以上の悲劇に襲われた俺。
俺に死ねってか!?
俺は普通にしちゃダメってか!?
なんと、右手にも変な線が現れたのだった。
しかも4本。
左手と合わせたら合計9本。
側から見れば、完全に人外の領域にいるバケモノ。
右手の線は、湾曲して端で交際している、アーモンド型の2本線、そんで、その中に丸があって、更にその中に丸がある。
ってか、こんなん、
「もう、目じゃんよコレェェェええええ!?」
どこからどう見ても目にしか見えない。
そんな、あからさまな目みたいな線が現れてからは、何故か、全く魔法の取得ができなくなって、
「目ぇ動いてるしぃぃぃいいいい!!」
右手で魔力を発現させると、右手の目がギョロギョロ動きまくっている始末。
ついでに言うと、しこたま覚えた筈の魔法の知識が、何故か全部、無理矢理、纏められた感じの一塊りになって、キラキラ魔力が左手と同じダークマターになった。
正にカオス。
英語発音でケイオス。
ってか、こんなん、身も心も混沌だわ!!
俺の劇的ビフォーアフターな状態に、
「今日は、なんと素晴らしい日なんだ!」
「私達は、奇跡を目の当たりににしましたな!」
「長年、魔法の研鑽を続けておったが、今日、進化の先が見えた気がするわい!」
会場中は爆盛り上がり。
左手に口、右手に目ができた俺は、
「冗談じゃねぇっ!! こんなんなるんなら、やるんじゃなかったわっ!!」
クッソ後悔しまくって頭を抱えた。
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