京都のお茶漬け出された時のアレな感じ?
「それって…… 俺でも使えますか?」
最近、地上から来たお上りさんで、魔法初心者な俺。
しかも、魔法とは違うスキルって言われて、コレには俺も興味津々。
「えぇ。 基本、どなたでも使えるはずですよ」
「マジか……」
店員さんが言う、『誰でも使える』って言葉に、俺の気持ちは爆上がり。
「如何致しましょうか?」
「それじゃ、その言語理解のスキルをお願いします」
「畏まりました。 因みにですが、スキルのご利用は初めてで?」
「っス……」
「それでは、お客さまのスキル適性をお調べ致しますので、こちらへどうぞ」
「?」
スキル適正?
ナニソレ……?
店員に言われた初めてのワードに、少し萎縮。
そして、店の奥のカウンター横のブースに連れて行かれた。
「………………」
そこは、なんて言うか、よく眼鏡屋さんにある様な、視力検査する時みたいなアレな場所。
視力を測るっぽい機械?みたいなものの横に、1つの水晶玉みたいなものと、ディスプレイみたいな透明の板?が置いてあって、
「では、こちらへと手を置いていただき、こちらへ顎を乗せてください」
「はい……?」
店員に言われるまま、右手をソフトボールほどの大きさがある水晶玉っぽいのに乗せて、視力を測る機械みたいなものに顎を乗せる。
「では、ディスプレイに移るマークを目で追いながら、右手へと魔力を込めてください」
「はい……?」
って事で、出鱈目に動き回る、デフォルメされたアヒルっぽいキャラクターを目で追いながら、
「っしょっと……」
何も考えずに右手に魔力を発現させる。
と、同時に光輝く水晶玉。
そんでもって、沈黙が始まり、ドキドキワクワクしながら結果を待つ。
「………………」
ってか、長くね?
コレって、こんな長いものなの?
言われるままに魔力を発現させ続けているため、消失感がハンパない。
ゴッソリと魔力を持っていかれる感が気持ち悪いから、
シュコォォォ──
シュコォォォ──
左手で魔素呼吸。
「あの〜。 コレって、まだまだ時間かかりますか?」
動くアヒルを視線だけで追い回しすぎて、何気に目が疲れてきた。
ってか、
「あ…… も、申し訳ございませんでした!!」
俺の言葉に、まるで寝起きみたいな反応をする店員。
ウソ……
もしかして、寝てたのこの人!?
「ま、魔力の放出を止めて、お顔を離して頂いて大丈夫です!!」
「………………」
って事で、言われるままに手と顔を離して、アヒルを追い回しまくって軽く疲れた目を指でモミモミ。
目をモミモミし終わって店員さんに視線を向けると、
って言うか、店員さん……
なんでそんな顔してるし……?
ウンコを我慢しているみたいな、険しい表情をしている店員さん。
「あ、あの〜…… お客様は、もしかして、神格者様で、しょうか……?」
そんでもって、気まずそうに確認された。
「あ〜〜〜── 神格者ですね……」
って事で左手を見せたら、
「ふぁぁぁ──!? 4本線んんんん!!」
「………………」
メチャクソ驚かれた。
やっぱアレか?
アンナとジダが言っていた、神格者は ”理” ってヤツ以外使えない的なアレなのか?
「え〜っと…… やっぱり、神格者だと色々と無理的なアレですか?」
「た、端的に言えばそう、なのですが……」
ん?
なのですが?
「こうして、魔力の計測が可能と言うのも事実でして……」
「んん? すんません。 それってどう言う事ですか?」
店員さんは、ディスプレを穴が開きそうな勢いで睨みつけていて、
「確かに、こうして魔力を計測できているのですが、魔力の量と波形が通常とはとても異なっており、神格者様で魔力をお持ちの方は、データベース上でも前例がない状態でして……」
「マジか……」
店員が俺を見る目は、完全に人外を見るソレで、何故かものすっごく怯えまくっている。
「ってか、俺ってスキルとか魔法って使えるんですか?」
「……スキルに関しましては、通常の神格者様同様、適性がゼロでして…… 魔法に関しましては、こうして魔力が計測できてはいるものの、一概にはお返事できかねます……」
くっそ〜。
スキルは無理だったかぁ〜。
「そんじゃ、もし、俺が魔法のスクロールを使った場合、どうなるんですかね?」
「………………」
俺の質問に無言になって、めっちゃ考えまくる店員。
「やっぱ…… ダメ、っスか?」
「………………」
あのですねぇ。
その無言がクッソ怖いんですけど?
その無言は、無理だから、もう帰ってくれって事?
京都のお茶漬け出された時のアレな感じ?
「いえ…… 大変興味深いですね……」
「え?」
腕を組みながら口に右手を当てて、どこか感慨深い表情をし始めた店員。
「今まで、魔力を保有していない神格者様しかお目にかかった事がなく、魔力を保有している神格者様が魔法を利用できるのかどうか、是非、確認してみたいです!!」
「え?」
なにこの嫌な予感。
「お客様っ!!」
「はぃぃぃ!?」
近っ!?
「ちょっ!? 顔近いからっ!!」
機材の向こうから身を乗り出してきた店員さん。
ってか、顔が近すぎな上に、なんか、雰囲気が突然な異常事態。
「本日、コレよりお時間を頂いても宜しいでしょうか!」
「へ?」
「是非とも、奇跡の瞬間を拝見したく!!」
「え?」
「ご利用頂くスクロールは全て無償でご提供致しますので!!」
「は? え?」
え?
どう言う事?
「スクロール、タダって事?」
「です!!」
「じゃ、じゃぁ、ソレで良いです、よ?」
どうせ夜まで暇だし?
「ソレでは、少々、こちらでお待ちください!!」
「は、はぁ?」
「申し遅れました! 私っ、当、魔法書株式会社 グリモアの代表をさせて頂いております、デュクシーと申します! 以後、お見知り置きを!!」
「どうも…… 紅葉と言います……」
「では、モミジ様!! 直ぐにご準備を致しますので、少々お待ちくださいませ!!」
「………………」
と言うや否や、デュクシーなる店員はダッシュで店から出ていった。
って言うか、店員じゃなくて店長?だった。
お読みいただきありがとうございます。
モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。




