正に圧巻の一言
アンナが入院して、魔法陣だらけの部屋に入って3日。
俺は部屋にも入れず、アンナにも触れずな為、朝と夜以外は適当に病院内をブラブラしてる。
ってか、夜はアンナの夫で付き添いって事で、アンナのいる部屋の前のベンチで寝泊まりできているけど、軽く病院に巣食うホームレス状態なう。
初日と2日目は行く宛も無いからこうしてずっと病院に居たけど、
『なぁ。 お前、少し息抜きして来いよ? 今日は俺が見ててやるから……』
ってジダに言われ、
「あー。 此処、ね……」
変なデカい建物の前なう。
完全に地上のコンクリートジャングル以上なアレ。
って言うか、ぶっちゃけ地上よりテクノロジーやら技術力やら何やらが栄えまくってる大都会。
こんなん見たら、滅んだ文明から色々と回収して流用してるだけはあるって流石に思ったわ。
そんで、ジダに教えられたビルの前で、都会に出てきたお上りさんの様にビルを見上げてビックリしまくってるって訳なのよ。
んで、ジダが言うには、
『お前、スクロール欲しいって言ってたよな? 丁度この都市には探索者が通う有名な商業施設があるから、そこに行けば良いのが見つかるかもな』
このビルに色々あるらしい。
しかし、俺には持ち合わせがない!
しかししかし、
『そう言えば、お前が倒した虚無の報酬を預かってきたぞ。 それと、地上の拠点にある、お前が作ったあの変なドームの特別手当分もあるらしいぞ?』
って事なのに、
『そう前置きしておいて──』
何故かガッチリハンドシェイク。
『──なんで握手してくるし…… 握手じゃなくて報酬寄越せし。 さっさと金寄越せし』
ってか同意なくいきなり勝手に握手すんなし。
『だから、今、こうして渡してるからちょっと待て!!』
『コレはアレか? お前の腕をブった切って闇医者に持ってって換金しろって事か?』
『何処からそんな物騒な発想が出て来るんだよ!? マジでアブねーヤツだなお前は!? こうしないと渡せないんだよ!!』
『お前…… 俺がお上りさんな地上人だと思ってバカにすんなよ? 俺がそう簡単に騙されると思うなよ?』
お上りさん(物理)な俺でも、そう簡単に騙されてやらないんだからね!
『してねぇよ! お前みたいな色々とヤベーヤツを騙すとか、唐突に何されるか分からん恐怖で夜も安心して寝てられねぇわ!!』
コレにはマジ心外。
モブで当たり障りのない俺に対して、一体どんなトラウマ持ってんだよ。
そんなこんなで数十秒ほど握手されてたんだけど、
『エグい金額だからって、調子乗ってハメ外して、歓楽街とかで豪遊すんなよ?』
『巫山戯んな! こちとら新婚ホヤホヤでホッカホカだっつうの!』
『ハイハイ。 お熱いこった。 終わったぞ。 確認してくれ』
って、唐突に手を離されて受け取りの確認しろ言われたけど、
『確認しろ言われてもどうやんだよ!! 金と一緒に優しさも寄越せ!!』
イマイチ仕組みが分からなさすぐる。
『ったく…… こうやって、お前も市民証に手を当ててみろ』
???
って事で、ジダがやっているのを見様見真似でやってみたら、
『ふぁっ!? 腕に数字!?』
俺の手首のところに、デジタルチックな金色の数字が出てきた。
400G?
『ナニこの数字? 俺の戦闘力って事かな?』
『バカかお前。 戦闘力を数値化できるって、どんなヤバい技術力だよ…… それは、金貨400枚って事だ…… 銀貨だとS、銅貨だとCってのが数字の後ろに付く。 階位4の虚無の退治で100。 拠点のアレで300だとよ…… ほんと、神格者ってのはどいつもコイツも簡単にエグい額を稼ぎやがる』
ま“!?
イヤイヤイヤイヤ──!?
金貨400枚!?だ、と!?
は!?
『オマっ!? 金貨1枚だけでも夜の歓楽街でかなり豪遊出来たんだぞ!? 400枚とかどんだけ!?』
『そんなん俺が知るか!! ってか、上に来たばかりのお前がなんで既に豪遊経験済みなんだよ!?』
『まぁ、それは、その…… たまたま知り合った人が、アレでアレなアレだったんだよ』
気前よく金貨をくれただけじゃなく、そのおかげでアンナと出会うこともできたし、いや、ホント、最高なオッサンだったぜ。
あ……!?
ドームの解除すんのすっかり忘れてたわ……
『それと、建御雷神にも報酬が100出ててるから、後でお前から渡しておけ!』
って、もう一回握手されて追加で金貨100枚渡された。
ってか、浮遊都市にはデジタル通貨もあったんかい!?
って事で、ジダが言う様にエグい額を得た俺は──
「そんじゃ、俺も魔法デビューといきますか!」
──ウキウキワクワクと心を躍らせながら、ビルの中にレッツゴー!
………………
…………
……
…
「ほぇ〜……」
ビルの中は、人もお店もいっぱいで、地上のショッピングモールみたいな雰囲気と大差なかった。
でも、
「武器屋…… 防具屋…… 鍛冶屋…… 魔道具屋…… スっゲーな……」
入っている店舗がいかんせんファンタジー。
ってか、地上人の俺にとっちゃ、物騒極まりない店ばかり。
武器屋とか防具屋とかにも色々とブランドとかメーカーがあって、所狭しと店舗がずらり。
正に圧巻の一言。
このビルは10階建てで、フロア毎にジャンルがカテゴライズされている。
今、俺がいる1階は魔道具のジャングルで、俺の目当てのスクロールが買える魔法屋があるのは5階。
って、受付のお姉さんから聞いた。
ぶっちゃけ、1階からこのビルの店舗を片っ端から全部入ってみたい。
モブで引き篭もり気味の俺をそう思わせるとか、なかなかどうして、興味を掻き立てられまくるじゃぁ、ない、かっ!!
でも先ずは、
「スッゲー!!」
お目当ての5階に直行。
コレぞファンタジー!!
看板の文字とか全く読めないけど、いかにも魔法な感じで異世界でマジカル!
なんか、何処となく怪しい感じも、雰囲気は文句なしの二重まるっ!
って事で、エスカレーターを上がって直ぐの所にあるお店に突撃!
「いらっしゃいませ〜!」
「………………」
なんか、もっと威厳とか厳格な感じを想像してたけど、店員は、量販店とかアパレルみたいなサービス業な感じのノリだった。
でも、店内はファンタジー。
透明なアクリル板?みたいなのに挟まれた、古びた紙?木板?石板?とかがフロアとか壁にディスプレイされていて、
「すげぇな……」
博物館の古文書コーナーとか、美術館の古文書展覧会みたいな、ソレっぽい感じ。
何が書いてあるか全く読めないし、意味とかさっぱり分からないけど、芸術的観点になって興味津々に見て回る。
厨二心を完全に鷲掴みされ、童心に帰ったかの様にディスプレイされているそれらに目が釘付け。
そんな中、
「本日は、どの様なモノをお探しでしょうか?」
背後から女性の声が。
「あ、え、その、えぇ〜っと……」
いきなり声をかけられて吃ってしまう、店員に対応され慣れていない、引きこもり病全開な俺。
「基本的な生活用ですか? それとも、戦闘向きな探索者用ですか?」
「あ…… えっと…… 何か面白いのがないかなぁと思っているんですけど、如何せん書いてある文字が読めなくて……」
「それでしたら、言語理解のスキルは如何ですか?」
「え? スキル?」
え?
スキルって、あのスキル?
ラノベやアニメで有名な、あのスキル?
「はい。 魔法とは違ってご自身で熟練度を上げていく必要がございますが、価格もお手頃ですよ」
「それって…… 俺でも使えますか?」
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