やっちまった……
「んんん~……」
長椅子で寝かせていたアンナが気絶から復活した。
「アンナ。 大丈夫?」
「?」
声をかけたけど、
「アレ? モミジ? どうしたのボク?」
気づいたら長椅子で寝ていたって事と、その横で俺が心配そうに座っていた事に、不思議そうに辺りをキョロキョロと見回している。
軽く記憶が混濁しているっぽい。
って事で、
「俺の異能を見せてたら、急にアンナが気絶してて、それで、今復活したんだけど……」
経緯と状況をかいつまんで教えたら、
「………………」
寝起きでポワポワでフニャフニャだった顔が、
「──……」
瞬時に物凄い無表情になった。
しかも、無言。
「はぅあ!?」
なんて言うか、表情が抜け落ちた?なくなった?みたいな感じ。
色んな意味でサイレント(物理)。
ってか、表情の変化が劇的且つ瞬間的すぎて、マジで恐怖。
そして、遠くを、俺の背後を見ている様な焦点が合っていない、完全にイっちゃっているヤヴァい顔を俺に向け、
「そうだった…… モミジの手に変な口が……」
「え……?」
何かを思い出したのか、
「──!?」
もの凄い勢いと速さで俺の左手を取って、
「アレ!? 口は!?」
サワサワグシグシ、カキカキツンツンしながら、
「ちょっと、アンナさん……?」
「あの禍々しい口は何処!?」
もの凄い剣幕で狼狽え始めた。
そんな、もの凄く狼狽えまくるアンナを見て、
俺はたったの数日間で、色々なアンナを見れた気がするよ。
人って、こんなにも色々と感情表現にバリエーションがあるんだな……
俺は何故か、人と言う種について達観し、俯瞰し、諦観し、未だ見ぬ人の真理を、新たに一つ紐解けた気がした。
って事で、
『コン ニチ ワ♪』
左手の魔素呼吸に合わせて、腹話術で可愛くご挨拶。
「ヒィィィぃぃぃぃイイイ──!?」
からの~、
『ブぱぁぁぁ~──』
「ギャァァァァァァぁぁぁぁ嗚呼嗚呼あ──!!」
漆黒のモヤモヤ魔力、大放出。
「ふがぁっ!? ふぐぅあっ!? はぅあっ!?」
吹き出された漆黒の魔力によって、長椅子に座っているアンナの声は聞こえるけど、上半身の姿が全く見えない。
ってか、
パタン──
黒いモヤモヤの下から急に姿が現れたとおもったら、
「………………」
アンナ、本日2度目の気絶。
やっちまった……
………………
…………
……
…
アンナの復活を待つ事数分。
イケメンなクセに、ドタドタと慌ただしい様子で、小者臭を漂わせながらジダがテントに入ってきた。
「オイ…… 何があった……?」
「まぁ、色々、と?」
「……新婚だからって、程々にしろよ」
「お前は人の事なんだと思ってんだ!? そんなん、こんなトコでおっ始める訳がない!」
取り敢えず、アンナのコレについては適当に濁しておく。
そんでもって、俺とジダの話し声に反応して復活したアンナ。
「んんん~……」
そんなアンナの顔は何処かお疲れなご様子。
そして、起きたアンナに外の報告をするジダ。
「偵察に行かせた者によると、虚無のヤツら、コイツが発現させたあの黒いのに入って来れてないらしいぞ! しかも、虚無の攻撃にビクともしてないとか!」
「………………」
ジダの報告を聞いて、驚きの表情で俺を見るアンナ。
やっておいてアレだけど、俺もソレにはマジビックリ。
「って事は……」
「あぁ!! 前線基地の維持どころか、此処ら一帯が安全地帯状態だ!」
「嘘、でしょ……!?」
「俺も何が何だか信じられないが、本当だ!!」
「「………………」」
んで、何故か、二人にめっちゃ見られた。
見られてる俺が1番ビックリしているけど、取り敢えず、上手くいった事に胸を撫で下ろす。
これでアンナと一緒に居られるね!
………………
…………
……
…
って事で、リリマナを助けに行く準備なう。
完全武装のアンナとジダ。
そして、
「………………」
何故か何も変わらない服装の俺。
「オイ、そこのイケメン」
「ぁあ?」
「俺の装備は? なんで俺だけ手ぶらなん?」
「馬鹿かお前? お前が一番生き残る可能性があるのに、なんでそんなお前に装備を回さなきゃいかん。 と言うか、お前にはその格好でも十分すぎて、寧ろ、オーバースペックすぎる」
「……は?」
「贅沢言うな、馬鹿」
ムッカ~!!
マジでコイツムカつくぞ!!
「オイ、そこの非リア充イケメンよ。 この、薄くてペラッペラな布の服でも、俺にとってはオーバースペックってか? じゃぁ、なにか? 俺のデフォはパン一か全裸って事になるじゃねぇか?」
「ぁあ、そうだな。 と言うか、全裸だと、逆にお前はパワーアップするんだろ?」
「オマっ!? 巫山戯んなし!! お前が全裸になってパワーアップしろし!! ってか、何でも良いから防具よこせし!! 寧ろ、お前が着てる防具よこせし!!」
「馬鹿! ヤメロ!! 俺に触るな!!」
ってな感じで、出発前に一悶着あった。
そして、装備についてゴネにゴネた結果、俺が得た唯一の装備は、
「………………」
たすき掛けした、
「水筒じゃねぇか……」
大きめの水筒が一つ。
遠足にでも行くんか俺?
この件が終わったら、俺はこのクソイケメンを、漆黒のドームに10年程閉じ込める事を心に決めた。
そしてどうやら、俺達が今から向かうリリマナとの通信がロストした場所は、俺が発現させたメッシュドームより外側らしい。
ドームの端っこに到着したら、一部を解除して外に出る感じ。
って事で、見知らぬ世界でリリマナ探しの始まりはじまり。
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