宗教的なお祈りの時間とか何かなのか?
俺を無視して始められたブリーフィングの内容は、
・今からイケメンとアンナでリリマナの生死を確認しに行く。
・残りはこのまま、前線の維持と死守。
・2時間経ってもイケメンとアンナが戻らなかったら、セントラルに応援要請をする様に。
ってな感じ。
そして俺はお留守番。
前線の維持に協力してくれって事らしいけど、
「いやだ。 アンナと一緒に行く」
全力で断った。
「モミジ……」
「お前が此処の砦になるんだ! だから俺たちがリリマナの確認に行けるんだよ!」
「無理。 アンナと一緒に行く」
「オマっ──!?」
イケメンがなんと言おうと俺はアンナと一緒に行く。
だって……
「アンナと一緒に行きたい俺の気持ちも察してくれよ!!」
「モミジ……♪」
「お前、そこまでアンナの事を……」
「こんな世紀末な格好のヤツらと一緒に1人で居たくねぇんだよ!!」
「モミジ……?」
「え?」
「俺にもシャツの袖を切れってか!? 能天気に虚無をブッパしてヒャッハーしてろってか!?」
「モミ……」
「いや…… それは……」
「だったらオマエが此処に残れし!! お前の袖も胸元から切ってしまえし!!」
「「………………」」
俺の心からの叫びを聞いて、押し黙るイケメンとアンナ。
そして、ブチギレ寸前な世紀末達。
「モミジ。 ボクはちゃんと帰って来るから。 モミジが言う様に、見た目はちょっとアレだけど、此処の皆んなをボクの代わりに守ってよ」
「いやだ。 俺が護るのはアンナだけ。 アンナが居たらついでに助ける」
「モミジ……」
聞き分けが悪い俺に、とても困った顔をするアンナ。
「なんでそんな顔をするし? ぶっちゃけ、他人なんてどうでも良いだろ? 見知らぬ他人を助けて最愛の人を助けないとか、俺にはそんな聖人みたいな事はできません!」
俺の言葉を聞いて、酷く悲しい顔になったアンナ。
ソレに納得がいかなくて、モヤモヤイライラし始める俺。
あぁぁぁぁぁぁあああ!
もうっ!!
「わーかったよ! 分かりましたよ! この人達を守って、前線を維持させりゃぁ良いんだろ!」
「モミジ♪」
根負けした俺に、アンナの笑顔の花が咲く。
だけど、
「だったら俺のやりたい様にやるけどそれで良いよね? そんで、アンナとも一緒に行くから、10分くらい待ってて!」
「え?」
「お前、何を言って──?」
って事で、善は急げでテントを抜けて、早足で前線に向かう。
「ちょっ──!? モミジ!?」
そして、荒れ果てた地面に左手を着けて、
「先ずはいつものコレでっ!」
漆黒の魔力で地面を片っ端から覆っていく。
膨大に──
広大に──
莫大に──
大規模に──
広範囲に──
だけど、目立たない様にコッソリと。
極細且つランダムに。
見える範囲も、見えない範囲も、端から更に向こう側へと、地面に発現させた線状の漆黒を増加させていく。
そして、俺を発現の起点にして、
「ぬぅぉらぁぁぁぁああああ──!!」
発現させたメッシュドームを地形や建物に沿って増減させながら徐々に範囲を広げていく。
そして、徐々に膨れ上がっていくメッシュドームで、虚無を纏めて外へと押し出す。
コレで取り敢えずの安全は確保できた筈。
名付けて!
要らないものは端に寄せておけ作戦!
もしかしたら、ドームを壊されて中に入って来る可能性もあるから、そん時はまた何か考えよう。
うん。
そうしよう。
って事で、疲れたから少し休む為にテントに戻ろうとしたんだけど、
「ヒィィィっ!?」
沢山の人が、ピクリとも動かずに立ち尽くして、口を開けて遠くを見ていて、マジでびっくり。
どんなホラーなワンシーンだよ!?
しかも、その中に愛しのアンナまでいるとか……
コレは、アレか?
宗教的なお祈りの時間とか何かなのか?
って事で、俺もアンナの横に立って、皆んなと同じ様に口を開けて遠くを見る。
「………………」
いや~……
やってみて分かったけど……
コレは絵的にカナリキツいな……
いくらモブとは言え、この絵面は精神的にゴリゴリくるぞ……
俺は無宗教って事で、今後コレを一緒にやるのは辞めておこう……
「モミジ…… ナニ、してるの……?」
「いや…… 一回、皆んなを真似して同じ様にと……」
「なんで?」
「宗教的なお祈りの時間かなんかだろ、コレ?」
「は?」
「あ、でも、次から俺はパスで。 俺、無宗教だから」
「は?」
上手く断ったつもりだったけど、めっちゃ目が開きまくったアンナにガン見された。
「いや、ホントゴメン…… 俺、マジで無宗教だから……」
「こんな宗教ないから! 皆んな、モミジがやった事に驚いているんだよ!」
「え? ウソ? なんで?」
「ちょっと、コッチ来ようか!」
「え? なんで!?」
アンナにガッツリ腕を組まれ、出て来たばかりのテントに2人っきりで逆戻り。
そして、地図が広げられているテーブルの前に立たされ、
「モミジ。 あの外にあるアレの範囲はどれくらいなの?」
「………………」
アンナが地図を指差し、何故か手渡されたペン。
コレは、俺が発現させたドームの範囲を此処に書き込めってか?
って事で、俺たちが今居るテントマークを中心にして、
まぁ、目視できる範囲だから、大体こんなもんかな?
発現させたドームの範囲を適当に丸で囲む。
まぁ、適当に地面に貼った魔力は何処まで伸びて行ったか知らんけど。
瞬間、
「ふぁあ!?」
アンナから漏れた、可愛らしいマヌケなお声。
オイオイ。
なんてお声出しちゃってんの?
そんなおマヌケな声まで可愛いじゃぁ、ないか!
今日は俺の知らないアンナが沢山見れて、実に有意義。
まだまだ、俺が知らないアンナが沢山ありそうだ。
こりゃ、夜が楽しみだ!
って考えてたら、地図を持って走り去るアンナ。
「え?」
そして、バタバタと、ジダなるイケメンと一緒に戻って来て、
「お前!? コレ、本当なのか!?」
いきなりジダに両肩を掴まれてユッサユッサさせられて、俺の頭がガックンガックン。
「本当だから、ガクガクするのはやめてほしいんですけど」
「ホントに本当なの!?」
続けてアンナにもガクガクさせられた。
「本当だから、ガクガクやめて」
俺がやった事が本当かどうかを確かめる為に、
「直ぐに飛行できるヤツに確認させる! 少し待ってくれ!」
って事で、ジダが出て行ってやっと休憩。
「モミジ、コレ」
そんで、アンナから貰ったコーヒーチックな何かを貰って飲んでいると、
「モミジって、ホントにすごいね……」
アンナが横に座って、俺の左手の線をサワサワしてなぞる。
「なんの理の神格かも全く分からないし、アレだけの虚無を一気に押し除けるなんて……」
「そう言われても……」
ぶっちゃけ、俺も俺の漆黒なアレが一体なんなのか全く知らんのですよ。
ダークマター?
バグった魔力?
そう考えてたら、利用者に優しくない魔法の使い方を書いたウP主に段々とハラが立ってきた。
って事で、一回、この事は考えるのをやめよう。
「取り敢えず、実物を見て貰えば、アンナなら何か分かるかも知れないんじゃない?」
「そうかな?」
って事で左の掌を上に向けて広げる。
広げた俺の手をジっと見つめるアンナ。
そして、いつも通りに、小さな四角錐を発現させる。
左手の線がぐわぱぁって割れて口が開いて、
「………………」
開いた口の意味よ、と言わんばかりに、四角錐が普通に発現されて、
「………………」
普通に掌の上に現れた。
「………………」
ってか、俺の左手をじぃ〜って見続けているアンナがピクリとも動かない。
見られ続けている左手を退かしても動かない。
なんで?
って、思って下からアンナの顔を覗き込んでみると、
「え?」
なんと、
「………………」
アンナが白目を剥いてそのまま気絶していた。
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