俺史上、画期的なアイディア
自然災害が可愛く見えるくらい、アンナの厳つい雷に蹂躙されたフィールド。
滅びた文明の欠片を集め、ソレを未来に残すって言っていた筈の探索者。
でも、俺の眼の前には、何も残す気ゼロな風景。
「コレ…… 逆に全部ぶっ壊してんじゃん…… 宝探し無理じゃん……」
思考が回復して、真っ先に思った印象がコレ。
「大丈夫だよ♪ 此処は、虚無と戦う前線で、ちゃんとした探索は他でやってるから♪」
「虚無と戦う前線……」
ってオイ……
俺、虚無と戦うの?
マジで?
宝探しは?
え?
完全に宝探しとかするものだと思っていた俺は、アンナの言葉を聞いて、キ◯タマがヒュンってなった。
ってか、最前線とか、一番危ないトコですよね?
俺が来ちゃダメなトコですよね?
どうやら俺は、3K肉体労働の最前線に来てしまったらしい。
そんな事を考えていると、
「オイ! 武御雷! 来てたんだったら先に教えろ!!」
なんか、エラいイケメンが怒鳴りながら現れた。
クッソイケメンすぎて、クリリンがショボく見えるレベル。
「たった今到着したばかり。 今から到着報告しに行くトコ」
そんなイケメンに、クッソ冷徹且つ端的に返答するアンナ。
「オマエなぁ!? 到着報告前に極大を放つとか、俺達を殺す気か!?」
「死んでないから問題ない」
「そう言う問題じゃない!!」
「ボクが居ない間に押されてたから、押し返して元に戻しただけ。 ってか、なんで押されてたの? 巫山戯てるの?」
「そ、それは……」
俺に接する時との態度も言葉遣いも温度差も激しすぎて、
「………………」
なんか、別人?みたい?
「ふぅ~…… 取り敢えず、なんで押し返されたのか詳細報告して」
そして、ため息を吐きながら、射殺す様な視線でイケメンを睨むアンナ。
「昨日、第4階位の虚無が現れた」
アンナに睨まれたイケメンは、顔を歪ませながら端的に答え、
「──!?」
アンナの顔が険しくなって、真剣な顔になった。
「多分、この一帯を滅ぼした元凶のヤツだ……」
「そう…… 被害はどれくらい?」
「結構な人数と、1本線の神格者が1人……」
「神格者が!?」
「前線を維持させる為に第4階位を引き離して孤立させているが、現在も連絡不能で、生死の確認はできてない……」
悲痛に歪むイケメンの顔。
怒りに歪むアンナの顔。
聞いている状況だと、結構ヤバヤバな感じっぽい。
ってか、なんでそんなヤバくなってるトコに俺来ちゃってんの!?
絶対、危ないヤツじゃん!?
お家帰りたいんですけど!!
「それで、その、連絡が取れない神格者って誰?」
「それは……」
何故か言い淀むイケメン。
「アアルの…… リリマナ、だ……」
「なんでっ──!?」
イケメンから出た名前を聞いて、酷く動揺し始めたアンナ。
「彼女は、昨日は探索側の護衛だったのだが、到着と同時に第4階位が現れ、そのまま、さっき報告した状況に……」
「なんで!! なんでセントラルはボクに連絡しなかったのさ!!」
「俺も、直ぐにセントラルへと報告したさ。 しかし、セントラルからの指示と増援は、リリマナへの援護と救援ではなく、崩れた前線の維持と立て直し…… お前に連絡が行ってないって事は、今日、お前が此処に来るのを見越しての事だろう……」
「巫山戯っ──!!」
「………………」
会って数日だけど、スーパー激おこプンプン丸なアンナ。
それ程、話に出てきたリリマナって人の事が心配らしい。
「そんなの、リリマナを見殺しにして、一時しのぎの捨て駒に使ったって事じゃないか!!」
「しかし、今は何処の世界も手が一杯で、此処に戦力を集中させると言う訳には──」
「──ボクが言いたいのはそう言う事じゃない!! なんでセントラルはボクに連絡して来なかったって事だよ!」
「それは……」
セントラル?の行動が、アンナの逆鱗に触れまくっているのか、
「ちょっ──!? アンナさんや!?」
アンナの身体がバチバチして、周りの空気が帯電し始める始末。
「落ち着け!! ってか、お前の都市も大変だったんだろ!? それでセントラルは有事の際を考えて、お前をタカマガハラから離せなかったんだよ!!」
「──!? なにソレ!?」
「タカマガハラに外壁を超えて地上からの侵入者があったらしく、しかも、侵入者の足取りが全く追えないらしく、その件で今のセントラルは手が離せないらしい」
「──!?」
イケメンの話を聞いて、音速かと思う速さで俺に顔を向けるアンナ。
「………………」
イケメンの話に心当たりがあり過ぎて、アンナに顔を向けられたと同時に、思わず両手で顔を隠してしまった俺は何も悪くない筈。
「そんな……」
目に見えて落胆するアンナ。
両手の指の隙間から、
「………………」
無言でそんなアンナを見る俺。
アンナの内心の感情は複雑に絡まってしまっているのか、生気が抜けた感じになって立ち尽くす。
あ、バチバチが消えた……
ってか、そんなアンナを見ても、微塵もこの状況を改善できる案も言葉も出てこない、アイディア便秘な俺。
いでよ!
アイディア!!
みんなに喜びを与え給へ!!
心の中で何をしたらアンナの笑顔が戻るのかを考え中。
そして、
「じゃ、じゃぁ。 一回、その、リリマナ?って人の様子を見に行ってみようぜ?」
俺史上、画期的なアイディアが降臨したからそのまま伝えてみたところ、
「「………………」」
モノ凄い馬鹿を見るような目で2人に見られた。
「……なんでそんな目で俺を見るし」
お読みいただきありがとうございます。
モチベになりますので、☆やブクマを頂けましたら幸いです。




