探索者
さっき居た所と全く見分けがつかない、メガラニカなるさっきとは別の場所。
そんで、中枢の端にある、地上行きのグルグル。
色々なグルグルの前にそれなりに行列が出来ていたけど、
「………………」
なんか、此処だけ毛色が違う。
なんて言えばいいか、
「戦闘服……?」
なんで?
なんかの戦闘服的な衣装や鎧な装備に身を包んだ集団。
プラス、武器や盾を持ってる集団の列。
あからさまに物騒且つ異様な雰囲気を醸し出している人々。
そんな中、
「………………」
至って普通な格好の俺とアンナ。
戦場に行く人達の列に並ぶ、コンビニに行く人とほぼ同じ格好の俺とアンナ。
絶対にドレスコードで引っかかる事間違いなし。
場違いすぎて草も生えん。
そんな、俺の前に並んでいるのは、傷だらけのプロテクターを装備して、アホみたいな大きさのハンマーの柄に身体を預けてもたれ掛かっている、スキンヘッドな厳つい筋肉ダルマ。
イヤイヤイヤイヤ!?
こんなの地上に出しちゃダメでしょ!?
素肌の上にノースリーブのプロテクターとか、プロテクトしたいのかしたくないのか分からなさすぎて草しか生えん。
ファッションか!?
コレが流行の最先端なのか!?
悲報:筋肉ダルマの格好があまりにも世紀末すぎる件。
ってか、列に並んでいる全員が厳つい武器を持ってたり、ガチの本気な装備すぎて、地上でこんなんが歩いてたら、職質される事、間違いなし。
ってか、速攻で逮捕されるの確定。
いくら生き死にが懸かっているジュークボックス中だからって言っても、流石にコレはやヴァすぎる!!
殺す気マンマンすぎる!!
厳ちぃ筋肉ダルマをチラ見しながら、コイツら色々とヤバいでしょ?って事をアンナに言うかどうか迷っていると、
「あん? ナニ人の顔チラチラ見てんだ小僧?」
「はぅあ!?」
筋肉ダルマに指摘された。
筋肉ダルマの声の太さよ!?
ってか、こんなん見るし!
こんなアホな格好してたら、嫌でも視界に入るし!!
「い、いえ…… 見て、ません…… よ?」
「いや、見てんだろ? 今、めちゃくちゃ俺とオマエの目が合ってんだろ?」
「い、いえ…… 人と話をする時は、ちゃんと相手の目を見て話せと、我が家の家族会議で決まってまして……」
「ぁあん? 鼻息で吹き飛びそうなヒョロガリのくせに、俺と同じ目線で話ができるとでも思ってんのかオメェ?」
「………………」
絵に描いた様な ”The 世紀末"。
テンプレすぎて、思わず吹き出しそうになったから、真顔で我慢して急いで顔を横に逸らす。
バカなのこの人!?
流石に鼻息で人間は吹き飛ばないだろwww
「速攻で目を背けやがって。 家族会議は何処行った? ブレブレか? ぁあん?」
イヤイヤイヤイヤwww
このままだと、笑ってしまうとか笑わってしまわないとかな理由があってのアレなのでwww
筋肉ダルマの野太い声に、
「オイ、どうしたどうした?」
「こんなトコで暴れんじゃねぇよ」
一緒に並んでいた仲間らしき人達もやって来た。
そんで、囲まれてしまった哀れな俺ちゃん。
「いやな、この小僧が人の事チラチラチラチラ見てやがって」
「………………」
ってかもう、最悪!
なんでこうなる訳!?
か弱そうなアンナと一緒に居るって言うのに、完全にやってしまった感丸出し。
あぁもうっ!
婚約したてのモブがイキってしまった結果がこれですよ!
幸せに完全に調子に乗ってましたですよ!
でもアンナだけは絶対に護りたいから、拳でのお話し合いになってしまった場合の覚悟を決めておく。
そして案の定と言うかなんと言うか、
「オイオイ。 ヒョロガキのクセに女連れとか、俺にも幸せを分けてくれよ」
コレまたテンプレな展開な訳で、テンプレ的に口笛を吹き始めた訳で、テンプレ通りに俺と手を繋いでいるアンナに興味が移ってしまう訳で。
「………………」
でも、アンナに矛先が向いたら、俺も一切の容赦をしない訳で。
いつでも動ける様に、左手にイメージを伝えておく。
「………………」
って……
アレ?
なんでアンナを見て顔を真っ青にしてるの、この筋肉ダルマさん?
「?」
「………………」
「お、オイ、オマ…… ソイツが手を繋いでるのって……」
「ウソだろ……」
ってか、お仲間さんもなんでそんなにアンナを見てドン引きしてるん?
「す、すまねぇ小僧…… 待たされてムシャクシャしてた俺が悪かった……」
「え?」
そして、何故かいきなり謝り出した筋肉ダルマさん。
そんな筋肉ダルマを睨みつけながら、無言でソソクサと列に戻るお仲間さん。
「………………」
何が起こったし……?
筋肉ダルマさん達が見ていたアンナを見るけど、何故か口に人差し指を当てられた。
はい。
取り敢えず、しぃ〜って事ですね?
なんでしぃ〜?
何がしぃ〜?
そんなこんなで列が進み、俺達の番になったからグルグルに入る。
これで漸く俺のスマホも復活するぞ!
アンナと写真撮りまくるぞ!
と、少し浮かれていましたんですけど、
「何処? 此処……?」
目の前に現れたのは、何処ぞの遺跡?石造りの神殿?みたいな中?
これは、地上の何処かにワープしたって事?
地上にこんなトコあったっけ?
「地上だよ……」
先を歩くアンナに手を引かれながら、上下左右を石で囲われている造りの通路を歩く。
そんな通路を通り抜けて外に出ると、
「は……?」
辺り一面瓦礫の山。
って言うか、崩壊した建物の数々。
「いや、マジ、ナニコレ……?」
オマケに、何処ぞの戦場の作戦本部みたいなテントの数々。
なんて言うか、
「地上…… 崩壊しちゃったの?」
って瞬時に思ってしまった、酷い光景。
「うん。 崩壊してるね」
「え? ウソ、だろ……?」
アンナの返答に思考が追いつかない。
ムカつくけど、心の片隅で心配してたのか、豚と馬鹿達の顔がチラつく。
「なんで…… 一体、何が……?」
訳が分からなさすぎて、思考がグチャグチャになって、軽く放心状態。
「酷い光景だよね…… コレが虚無に奪われた世界の末路だよ」
「は?」
虚無?
奪われた?
末路?
え?
「此処は、地球だよ、な?」
あって欲しくない答えを求めてアンナに質問。
「うん。 地球だよ」
「………………」
あって欲しくない答えが即答で返って来た。
って事は……
あって欲しくない、桜田達の姿が脳内再生される。
「でも、此処は──」
俺の手を痛いほど強く握り、
「──モミジの世界とは別の世界。 パラレルワールドの地球の一つ」
俺の横で遠くを見ながらそう答えるアンナ。
「別の、地球……」
なんか、ずっと前にウP主からそんな話を聞いた事があった様な事を思い出す。
「私達、探索者は、崩壊した世界で、その世界の文明の欠片を探し、未だある世界へと未来を繋げるの」
アンナに握られている手が痛くなってきた。
「奪われた文明、破壊された技術、食い荒らされた自然、そして、取り残された人々。 それらを探し、虚無を駆逐する。 それが──」
「!?」
いきなりアンナからカシャカシャ音が鳴って、薄くて小さな板っぽい何かがアンナを覆い始め、
「──探索者。 世界を取り戻す者達」
白金に輝く装備に覆われた。
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