お口の中がビッシャビシャやん!?
無事に取られた物を全て回収できたから、俺のケバ立っていた心が爽やかリフレッシュ。
スマホの画面に少しヒビが入ってしまったけど、回収できただけでも嬉しさで胸が張り裂けそうだ。
あぁ……
良かった良かった……
愛しのスマホを奪われた仕返しに、
「や、やめ!? なにをする!?」
「心の拠り所を奪われた者の気持ちを思い知るがよい」
オッサンのポケットを漁る。
そんで、出てきた、チャリンチャリン鳴る小さな革袋。
多分、財布の類。
「そ、それだけは!!」
目に見えて狼狽えるオッサン。
って事で、
「はい、コレ没収ぅ〜」
「やめてくれぇぇぇえええ!!」
オッサンのポケットから速やかに俺のポケットへとお引っ越しさせる。
大声をあげて五月蝿いから、オッサンもドームで隔離。
これで静かになったから、気になってたPDFの続きをササっと確認してみたんだけど、
「………………」
先に進める気配が皆無。
地上に戻ったら、マジでウP主にクレーム入れてやると心に決めた。
所持品も回収できて、オッサンから取るもんも取ったし、さっさと詰所からオサラバして、浮遊都市をお散歩する。
すっかり日も暮れたせいで、喧騒も大分落ち着いちゃっているけど、
ぐぅ〜。
「………………」
俺の腹はさっきから爆音を奏でている。
今思い返せば、不老不死、ピコ太郎、投獄からの今と来て、凄まじく濃い一日だ。
不老不死なんだから、多分、食事を抜いても死なないとは思うけど、
「腹ヘッタナ……」
動くためのカロリー摂取は必要だ。
って事で、スマホとかを取り返した時にヒゲのオッサンから仕返しに奪った、サイフらしき革袋を開けて中身を確かめる。
中には金貨?っぽいコインが5枚と、2cmくらいの赤いビー玉?宝石?みたいなのが5個。
コレがどれくらいの価値があるのか知らないけど、目の前にある、飲み屋だか飯屋だかよくわからない所に入ってみるとしよう。
看板にはジョッキの絵が描いてあって、石造りっぽい頑丈そうな建物で、西部劇とかで出てくる、観音開きの木製の扉を開いて入店。
「………………」
入った店が当たりだったのか、丁度食事時なのか知らんけど、結構な人で賑わっている。
ご飯を食べたり、ジョッキみたいなのでアルコール臭がするヤツを飲んでたりで、なんか、地上の居酒屋で見るのと同じ雰囲気。
店内をざっと見回して空いている席を探すも、沢山あるテーブル席はパンパンなご様子。
って事で、仕方なく空いていたカウンター席に腰を下ろし、ホールスタッフみたいな女性に声をかける。
「あのー。 注文いいですか?」
「ハイ! どうぞ!」
「これで、どれくらい食べられますか?」
そして、コインな金貨?を1枚取り出して、恐る恐る店員に聞いてみる。
「え!? 金貨ですか!? コレだと、50人分くらいは余裕で食べられますよ?」
「………………」
マジか……!?
財布っぽいのに、コインがたった5枚とビー玉しか入ってなくてシケてんなぁって思っていたけど、実はあのオッサン、結構金持ちだったっぽい。
オッサン!
バカにしてごめんなさいですますバルス!
今夜は思いっきり豪遊させて頂きます!
「そ、それじゃ、5品くらいお任せで?」
「分かりましたぁ! お飲み物はどうしますか?」
「あー、なんか、おすすめってあります?」
「そうですねぇー。 ウチはエールがメインですけど、ミードも飲みやすいのでオススメですよ!」
「あー、じゃぁ……」
まぁ、そう言う場所っぽいって事は雰囲気で分かってたから、やっぱ、おすすめもそうなるわな……
「エールとミードを1つずつで。 後、お水も」
「畏まりました! ミードはどの様に致しますか?」
どの様にってナニ?
ってか、飲み方とかあんの?
「お、おすすめは何が良いですか?」
「そうですねぇ。 ソーダで割ってレモンを入れるのが飲みやすいですね」
「じゃぁ、ソレでお願いします」
「畏まりましたぁ! ではお任せ料理が5品と、エールとミードレモンソーダ、お水を1つずつで!」
「っス」
全く何も知らないけど、なんとか注文できた。
ってか、何故か言葉が通じているのはマジで助かってるけど、如何せん、何もかもが全く分からん……
ガチで違う国じゃん此処……
辺りを見回し、店の内装とかお客さん達の服装とかを観察していると、
「お待たせしましたー! ごゆっくりどうぞー!」
カウンターの向こう側から、注文したのが一気にやってきた。
「………………」
なんなのか知らない肉のステーキ。
なんなのか知らない葉っぱのサラダ。
なんなのか知らないシチューっぽいスープ。
なんなのか知らないチーズっぽい塊と固そうなパン。
「多いな……」
1人では食べ切れる量じゃなくね、コレ?
そんで、シュワシュワっている、木製のジョッキに入っているエールとミード。
水差しに入っている水。
って事で先ずは、普段は全くと言って良いくらいお酒は飲まないけど、飲めなくはないからエールを一口。
「うん。 なんか、フルーティーでクラフトビールみたいだな」
適度に冷えていて、適度な炭酸具合。
味は分かったからおかわりはいいやコレ。
ってか、2度と飲まん。
次にミード。
「これは、美味い……」
炭酸入りのハチミツレモンな味を想像してたけど、エナジードリンクみたいで、俺が好きな味。
コレもアルコール飲料なんだろうけど、アルコール感をあまり感じない。
調子に乗って飲みまくったら、危ない感じに酔っ払う、結構危なそうなヤツ。
だが!
コレはおかわり決定だ!
今日はとことん呑んでやろうじゃぁ、ないか!
金ならある!
喉を潤した次は、食べきれそうもない量の料理に手を付ける。
なんの肉か知らないステーキは、
「お口の中がビッシャビシャやん!?」
豚と牛の中間くらいの感じで、ステーキのくせにハンバーグレベルの柔らかさで噛みちぎれ、肉汁がお口の中で大洪水。
サラダもどこぞの焼肉屋さんのサラダみたいな、塩、胡椒、胡麻オイルみたいなシンプルな味で好きな味。
シチューっぽいのも、見ためはチョコレート色でドロっとコッテリしてそうなくせに、スプーンで掬い上げるとまさかのサラッサラ。
なんか、中華スープみたいな感じ。
チーズもモチモチトロットロでクセになりそうな味で、ステーキとサラダと一緒に食べるとマッチしまくりで味変しまくり。
こりゃぁ美味ぇ!!
合間にスープを飲む事で何かがリセットされ、永遠に肉とサラダを食べ続けられそうなサイクルが発生した。
パンは、
「歯が折れそう……」
フランスパンを使ったラスク以上にカッチカチで、これ単体では食べられそうにないんだけど、砕いてサラダとスープに入れてみると、クルトン的なアクセントになって、食感に幅を追加してくれた。
いやぁ、何ていうか、美味い!
主食が米よりパン派の俺は、このおまかせのチョイスに大満足。
美味いなコンチクショー!!
最初は食べきれないと思っていた量も、いつの間にか完食していた。
マジで美食ミステリー。
食べ終わって満足し、ミードを呑みながら店の雰囲気を楽しんでいたら、横で飲んでいた同じくらいの歳の人と意気投合し、調子に乗ってミードをおかわりしまくった結果、
「ミードレモンおかわりっ!」
「俺も同じヤツを!!」
久しぶりのお酒に俺のテンションは爆上がり。
飲み食い含めて金貨1枚を使い切るつもりで横の人にもミードを奢り、2人でしこたま飲みまくった。
別名、酔っぱらいとも言ったり言わなかったり。
それでもお釣りが銀貨7枚帰って来て、金貨の偉大さに更にテンションが上がりまくる。
髭のオッサン、今夜は有り難く豪遊させてもらうぜ!!
そんなハイテンションな達は、
「ソレじゃ次行くぞ!! ついて来い!!」
「バッチ来いやぁ!! かかって来いやぁ!!」
おかしなテンションマックスで、次なる店を求め、夜の歓楽街へと旅立った。
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