僕は魔法使いになったんだ!
ナニコレ?
一体なんなんでございますかでござるですかでコレはしかし?
ちょっとプチ怒り気味になった紅葉氏に言われるまま、スマホにダウンロードされたファイルを開いたのでござるが……
「なんて書いてあるんだ?」
いや、なんて書いてあるんだって言われても……
逆にナニコレでござるよ……
──1ページめ──
『知識とは?』
解答欄【 】
──2ページめ──
『責任とは?』
解答欄【 】
──3ページめ──
『魔法とは?』
解答欄【 】
──4ページめ──
『魔法使いとは?』
解答欄【 】
──5ページめ──
『【変身! マジカル 魔法少女!】を選んだ理由は?』
解答欄【 】
──6ページめ──
【決定】
「オイ、どうした? やっぱり魔法の使い方が書いてあるのか?」
「……いやそれがでござるな」
「もしかして、書いてある言語が日本語になってないのか?」
「バリバリの日本語でござる、よ……」
「それだったら、やっぱり魔法の使い方は難しそうな感じなのか? ってか読めるんだったらなんて書いてあるか早く言えって」
読める読めない以前に、魔法の使い方がどうこう以前に、意味が分からない質問しか書いてないでござるよ……
どう見てもただのアンケート用紙でござるよコレ……
「なんて言うかその…… 変な意味が分からない質問が書いてあるだけでござる……」
「はァあ?」
紅葉氏があからさまにナニソレみたいな顔になってるでござるが、コッチこそナニソレでござるよ……
「1ページ1ページに、デカデカと変なアンケートじみた一問一答的なのが5ページ程書かれているでござる……」
「なんだよソレ?」
「それはコッチの台詞でござるよ。 しかも変な質問が書いてある下に解答欄ってのがあるでござる」
「解答欄って何だよ? 俺の場合はそんなの全く無かったぞ? 絵本みたいな手引き書みたいな感じで、一方的に魔力の使い方が淡々と書かれてたぞ」
「いや、そう言われてもでござるな…… 実際に僕のはこうして質問と解答欄だけなのでござるが…… 懸賞ハガキの裏側の質問みたいな簡素な感じなのでござるが……」
って言うか此処の解答欄に答えを書けば良いのでござるか??
PDFファイルにどうやって書けば良いのでござるか?
上書きでも良いのでござるか?
それとも印刷して用紙に書けば良いのでござるか?
と言うか、回答したところで、何処の誰が、いつ、どうやって回収するのでござるかコレ……
回答する意味が全く分からないでござるよ……
と思いながら解答欄の箇所に触れたら、画面にキーボードが現れたでござる……
「あ〜〜…… PDF形式のファイルの筈なのに解答欄に書き込めるっポイでござる」
「何それ? 上書きか何かか?」
「上書きとは違う、でござるな…… ちゃんと書き込める様な設計?になっているでござる」
「なんだか知らんけど取り敢えず回答していってみろよ? 何かが起こるかもしれんぞ?」
「わかった、でござる……」
何かってなんでござるか……
一体ナニが起こるでござるか……
自分で紅葉氏に嘆願しておいてなんでござるが、何故か恐怖しか感じないでござるよコレ……
と、取り敢えず、一つずつ回答していくでござる……
──1ページめ──
『知識とは?』
哲学的な質問でござるな……
1つ目の質問から何か考えさせられるでござるよ。
解答欄【日々の研鑽、周囲のちょっとした変化への気付きと経験や見聞の蓄積によって溜まった自分の情報】
──2ページめ──
『責任とは?』
なんか、就活の時に面接で言われそうな質問でござるな……
解答欄【覚悟とそれに伴った諦めない行動】
──3ページめ──
『魔法とは?』
急に厨二全開な質問でござるな……
それならば僕も全力で答えてやるでござるよ!
解答欄【全能かつ異常な力によってもたらされる超現象】
──4ページめ──
『魔法使いとは?』
そんなの決まっているでござる!
即答でござるよ!
解答欄【魔法少女を輝かせる職業】
──5ページめ──
『【変身! マジカル 魔法少女!】を選んだ理由は?』
………………
どうするでござるか……
こんなの決まりきっているでござるが……
って言うか紅葉氏が僕をガン見しているでござるよ……
此処は無難に……
いや!
知らんでござる!
コレは僕にしか見えないらしいから好きな事、思った事を素直に書くでござる!
解答欄【魔法少女になりたいから】
最後の質問をタイプして次のページへと画面をスライドさせる。
そして勢いよく【決定】をタップ。
瞬間、
「え?」
画面に用紙の様な本のページの様な5つの長方形の何かが画面の中心に現れたでござる!?
「な、なんでござるか、コレ!?」
「オイ! 何か起きたのか!?」
5つの長方形がグルグル周りながら徐々に中心から遠ざかっていって、終いにはスマホの画面から飛び出して規則的な配置のまま僕の周りに広がっていくでござるっ!?
「一体、何が起きているでござるかコレはっ!?」
「オイ! いきなり周りを見だしてどうしたんだ!? お前の周りに何かあるのか!」
「あ、あるも何も、スマホの画面から本のページが飛び出してきて僕の前に浮いているでござるよ!?」
「なんだそりゃ!?」
「うヒェェェえええ!? か、囲まれたでござるよっ!!」
僕の前で広がって浮いていた5つのページみたいな何かが動き、僕を中心に取り囲みながら周り始めたでござる!?
テーブルの対面に座っている紅葉氏迄は届いていないけど、この周りで浮いているナニかには嫌な予感しかしないでござるよコレ!?
瞬間、僕の周りに展開しているページの一つが燃えた。
「うひゃぁぁぁああああ!」
「どうした!」
「ページの一つが燃えたでござるぅぅぅううう!!」
「は?」
続いて他の一つが凍りついた。
「ひぇぇぇえええ!?」
他の一つがバッサバッサと激しく旗めき、
他の一つがバッキバキに石化する。
そして、最後の一つからバヂヂヂと稲妻が迸り、
「ギャァァァァァァァアアアア!!」
稲妻が迸ったと同時に次々と他のページから蒼い一条の光が放たれて、僕を中心に蒼い五母星を描いた。
「ナニコレぇぇぇえええ! ナニコレぇぇぇええええええええええ!! 僕の嗅覚がヤバいって言ってるんですけ──」
「オイ! 何が起こってるんだ!?」
そして5つのページが僕に向かっていきなり飛んできて、
「──どぉぉぉおおおおお!! アババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババババ──」
僕の中に入ってきて、何故か思いっきり感電した。
身体中に静電気をバチバチされている感じって表現では多分生温い。
皮膚から肉へ、
肉から骨へ、
骨から神経へ、
神経からDNAへ、
DNAから魂へ、
得体の知れない何かが、僕の身体中の表やら裏やら中やらを蹂躙しながら駆け巡る。
そして、僕の存在がモザイクみたいにグチャグチャになっていく様な感覚と、身体中を襲う表現しようのない、訳の分からない感じた事のない痛みと一緒に頭の中に何かが蠢きながら入ってきて、無理矢理、身体の全てを模様替えされている様な気持ち悪すぎる感覚に襲われた。
けど、意識は無駄にハッキリしていて、目の前でオロオロしている紅葉氏が見える。
瞬間、頭の中に男性の低い声と女性の高い声が混ざった様な、阿修羅で男爵的な奇妙な声が聞こえてきたでござる。
『魂ノ再起動ハ成サレタ』
『己ノ知識ノママニ起動ノ言葉ヲ告ゲヨ』
声が聞こえた瞬間、無理矢理模様替えされた頭の中から一つの回答が浮かび上がる。
そして──
僕は──
まるで──
前から知っていたかの様にその言葉を口にした──
輝け月──!
煌めけ星──!
照らすは太陽──!
望むはマジカル──!
顕現せよっ──!!
──マッダ☆レぇぇぇナァァァぁぁぁああああああ!!
瞬間、僕の中で何かが確信に変わった。
全能感が全身を駆け巡り、チカラが止め処なく溢れてくる。
そう──
──僕は魔法使いになったんだ!
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