ってか、なんなんだよアレっ!?
チェーン店なバーガー屋さんの入り口から3人に向かって大声で叫ぶ。
「バっカ!! オマエら!! 此処からさっさと逃げんぞ!! 撤収だ! 撤っ収ぅぅぅううう!!」
大声と一緒に大きく右手を振って、桜田達を避難させている駅前を何度も指差す。
俺の大声に玉藻が動き、クリリンが続けて動き、
「んでだよっ!! こんなん、ぜってぇ面白くなるシチュエーションじゃねぇか!!」
「状況考えて喋れよバカ!? 街中から人が消えてる上に、空にあんなドデカくて得体の知れないものが光って浮かんでんだぞ!? どう考えてもヤベーヤツだろアレ!?」
「──っチ!」
バカが渋々足を動かしてみんなを追いかける。
バカが動いたのを確認して、俺も駅前に向かって走るけど、
「だから面白いんだろうが!! だからオマエはモヤシなモブなんだよ!!」
「ウッセーし!! こんなん、モヤシなモブじゃなくても逃げる一択だし!!」
バカと言い合いながら全力で走ったおかげで、すぐに駅前到着なう。
俺が作った檻の中にいる桜田とウP主も、赤い光を放つ魔法陣?がある空を見上げて驚愕している。
って事で、急いで元の姿に戻っている豚が入っている檻を左手に食わせて解除し、
「なんか、アレ、絶対ヤバいヤツだって!! とりあえず、あの赤い魔法陣みたいなヤツから逃げて遠ざかるって事で!!」
みんなにさっさと逃げる事を伝える。
ってか、さっきから俺の頸がチリチリして痒い。
こんなん、マジで嫌な予感しかしなさすぎる。
「でも、あそこまで大きいと、いくら遠くにあるとは言え、もし、アレが敵の攻撃だった場合、此処にも被害が及びそうでござるな?」
「よし!! そんじゃ、雫! オマエ車出せ!!」
「ハァあ!? んでだよ!? オマエ、ガチで逃げる気なんか!?」
余程逃げるのが嫌なのか、雫がめっちゃ俺を睨むけど、
「んじゃ聞くけど。 もし、アレが桜田が言う様に誰かの攻撃だったとしたらどうするし? ってか、あんなクソデカい攻撃とか、どうやって防ぐし? 俺は嫌だかんな! あんなん防ぐとか精神的に無理だかんな! ってか、防げる自信ゼロだかんな!!」
「………………」
「ってか、オマエの我儘で、愛しの葵ちゃんがどうなってもいいのか? 変身解けて豚に戻ってんだぞ? まともに動けない豚なんて、絶対、真っ先に死ぬぞ?」
「………………」
マジで此処から逃げたい俺は、雫を睨み返しながら、
「イダダダダだ──!?」
桜田の腹にある贅肉を摘んで見せてやる。
コレっ!!
ホレっ!
コーレっ!!
「コイツの腹なんてこんなんなんだぞ!? ガッツリ脂肪が掴めてしまうんだぞ!? 指なんて豚足と瓜二つぞ!? ってか、豚ぞ!?」
「──ぶ、豚じゃないでござる!! コレは仮の姿でござる!! 後数十分で元の姿に戻れるでござる!!」
「………………」
いや、オマエの元は元々豚だかんな?
腹の脂肪に仮の姿もクソもないからな?
ってか、もっとマシな仮の姿になって出直してこい!!
どんだけデバフがかかりまくってる仮の姿なんだよ!?
毎日を縛りでプレイする意味よ!?
人生舐めプか!?
俺に贅肉をガッツリ摘まれている桜田を見て、
「──っチ。 分ぁったよ」
嫌々ながらも了承した雫。
って事でダッシュで雫ん家に向かおうとしたんだけど、
「も、紅葉氏…… あ、アレ……」
贅肉を掴まれている桜田は、俺の背後を見て顔を真っ青にさせた。
贅肉をガッツリ鷲掴みにされている痛さも気にしてられない程なのか、そりゃぁ、もう、俺を無視して真顔で俺の背後を見まくっている。
「は? んだよ──?」
何にそんなに吃驚してやがんだこの豚?
って、真顔な豚に連られて振り向いてみたんだけど、
「──ファぁァあっ!?」
ビックリしすぎて思わずウンコ漏らすかと思ったくらい吃驚仰天。
「な、に……? アレ……?」
空に浮いてる巨大な魔法陣?の中心から、
「も、紅葉氏…… 本気で、さっさと逃げようでござる……」
ソレはまるで──
「アレが来たら、此処に居ても、本当に死ねるでござるよ……」
──ウンコみたいに、ゆっくりと、ヌルヌルと出てくる、
「モヤシ! ありゃぁダメだ!! さっさと逃げるぞ!!」
──超巨大な岩。
隕石!?
え?
ウソ!?
マジ!?
戦闘狂な雫でさえも、流石にアレは無理らしい。
瞬時に掌がクルってなってて草。
ってか、
あんなん草生やしてられんわあぁぁぁあああ!!
あんなんが空から降って来たら、少しばかり離れているだけのここら一帯なんて、一瞬で更地確定。
スペースノイド達によるコロニー落としと同等なアレ。
地球のリアルリセットボタン(物理)。
ってか、日本沈没で死亡確定待ったなし。
「狂人共め!!」
玉藻は怒ってギリギリと奥歯を噛み締め、
「皆さん。 今日まで色々と大変お世話になりました。 少しの間でしたけど、私はとても楽しかったです──」
ウP主は瞬時に人生を諦めてブツブツ言い始め、
「──ちょっ!? ウP主さん!? なんて事言ってんの? 諦めないで!?」
クリリンが目のハイライトが消えたウP主を必死に現実に戻している。
ってか、マジで降って来んのかよアレ!?
こんなん、マジで桜田の腹の贅肉を摘んでいるどころじゃなくなって、
「クリリン! 桜田とウP主は頼んだぞ! 後で車で迎えに来るから!!」
我先にと、少しでもこの場から離れる為にダッシュする俺。
もちろん、逃げるのに足手まといな桜田とウP主をクリリンに押し付けるのは忘れない。
「え!? ちょっ!? 紅葉ぃいいい!? ちょっと待ってぇぇぇええ!?」
案の定、みんなに信じられない者を見る目で見られたけど、
「待てるかっ!! 逆に俺に追いつけし!! ってか、後で車で迎えに来るって!!」
「嘘だっ!? 絶対迎えに来ないでしょ!?」
「来る来る!! イッパイ来るから!! 毎日お花持ってお祈りに来るから!!」
自分だけ生き残るのに必死すぎて、マジでソレどころじゃない!!
「ソレ、迎えに来てないから!! ってか事後だから!! 紅葉以外、死んでる前提だから!!」
行く宛もなく逃げる俺を追う様にして走り出すみんな。
ってか、追いかけて来んなし!!
俺に付いて来んなし!!
俺はっ!
絶対にっ!
何があってもっ!
この足だけは止めてやんないんだからっ!!
「葵ちゃん!! もっと速く走って!!」
「全力でがんばっているでござるよ!!」
「もっと早く走らないと、空の隕石に潰されてしま──っ!? お、オイぃぃぃいいい!? なんだありゃぁぁぁあああ!?」
桜田を気遣う雫が走りながらナニかに驚いている様だけど、
「え!? ちょ──!? マジっ!?」
「ブヒぃぃぃイイイ──!?」
「ふぁぁぁあああああ──!?
俺にはそんなコテコテな手は効かんぜよ!
そんなテンプレ常套手段では、俺の足は止まらんぜよ!!
我!
逃げる!!
一択ナリ!!!
「だ、旦那様っ!! あ、アレを!」
雫に続いて、玉藻までもが俺の行く手を阻もうとしているけど、
「アレってナニ!? アレじゃ分からないから!! 俺はそんなにチョロくないから!!」
そんな、素人のアレアレ詐欺でまんまと騙される様な、チョロい俺じゃぁあ、ないっ!!
今の俺に何かを伝えたいのであれば──!
──具体的且つ!
──明確に!!
ってか、夜空に輝く赤い光がだんだんと暗くなってきて、
「クソっ──!?」
お空の赤い光で伸びていた影が、徐々に夜の闇へと戻っていく。
これには流石に俺も、
「──いよいよかっ!?」
超巨大岩の現在の降下具合が気になって、様子見でチラッて背後に顔を向けたんだけど、
「ぬ”──!?」
背後を見た瞬間──
「──お”お”お”お”お”っ!?」
──思わず、声にならない声が出た。
ア◯シズもかくな超巨大隕石かと思ってたアレは──
実は──
「は?」
──超巨大な岩を土台とした、
「え? は? え? ナニアレ?」
──超巨大な建造物だった。
中心のトコに、何処ぞのテーマパークにありそうな西洋の城っぽいのがニョキって飛び出てて、周りを高い外壁で囲まれた、これまた西洋な感じのアレ。
それに、俺はアレから遠く離れているはずなのにデカい。
ってか距離感がバグるデカさ。
ってか、何が起こってるし!?
赤い魔法陣からウ◯コみたいにヌルヌルとゆっくり出てくるソレ。
程なくして全貌が露わになり、
城?の先っちょ?が現れたのを最後に、赤い魔法陣が中心から外側に向かって霧散して消え失せた。
「なんじゃ、ありゃぁ……」
「お城……? 城下町……?」
「要塞、でござるか……?」
「一体、何が起こって……」
魔法陣から出てきた後も、空にピタって浮かび続けて、一向に落ちてくる様子が見られない、超巨大建造物。
アレが落ちて来なかったのはマジで良かったんだけど、浮いている原理も、構造も、意図も用途も何もかもが、全く分からなさ過ぎる。
ってか、東京上空が一気にファンタジー全開。
「なんでイキナリこんなん出てきたし…… 出てきた意味よ…… マジで分からん……」
気付いたら、赤い魔法陣から逃げていた足が止まっていて、首が痙りそうなくらい上を見上げまくって呆然としていた。
「バ◯ス…… って言ったら、消えてくれないかな……?」
思わず、誰もが心の中で思っているだろうワードと考えが口から飛び出てきたけど、
「いや、オマ…… 流石に不味いだろソレ……」
「紅葉…… アレは、海の上だったから大丈夫だった訳で…… 流石にあの大きさを地上の上空で崩壊させるのはどうかと……」
「こんなのが此処で崩壊したら、質量爆撃で、都市壊滅確定でござるよ……」
即座にみんなに全否定されて草。
ってか、なんなんだよアレっ!?
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