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真っ白じゃねぇか!

おかわりを買って嬉しそうに足早に戻ってきた豚。


俺のはさっきと同じ抹茶ラテ。


豚はと言うと、フラッペな感じのカフェオレ。


しかしサイズが特大。


そして席に着くや否や、ズゴゴゴゴゴと凄い音を立てて半分くらいまで一気にバキューム。



「………………」



もう俺には、コイツが飲み物を飲んでいると言うよりも、足りなくなった何かを追加摂取している様にしか見えない。


こう言うのもアレなんだが。


こんなお洒落で心安まる様な場所では、もう少し優雅にゆとりを持って、ゆっくりと味わってほしいものだ。


誰もお前のものは取ったりしないから。


安心して良いんだから。



そして案の定と言うかなんと言うか、



「ぬをぉぉぉぉおおおおお!!  頭がぁぁぁああああ!」


「………………」



冷たいモノを一気に過剰接種した為か頭がキンキンしたらしく、こめかみを抑えて悶絶している。


胃袋でしかモノを考えられないヤツここに極まる。



「オイ。  それで、ダウンロードできたのか?」


「んあ?」



桜田の顔を見るに、目先の食い物に全思考を持っていかれてたのか、数分前の事をスッカリ忘れていた様子。



「お、そうでござった。  え〜っと……」



スリープしていたスマホを手に取って顔を向け、ロックを解除する桜田。


桜田の顔を人として認証できる昨今のテクノロジーの進歩に脱帽ものだ。



「あ、ダウンロードできてるでござるよ。  ほら」



そう言って俺にスマホの画面を見せてきたのだが、



「………………」



見せられたダウンロードフォルダには何も無い。



「何も無いぞ……」


「何言っているでござるか。  此処にちゃんとPDFファイルがあるでござるよ」



桜田がPDFが有るであろう箇所を指さすが、そこにはマジで何も無い。


俺の目に映るは、真っ白なスマホ画面と、それを挟む豚足の蹄のみ。



「いや、何も無いって」


「あるでござる」


「ない」


「あ〜り〜ま〜すぅ〜!」


「ない」


「こ〜こ!!  ホラ!  こ〜こ!!」


「なんもねーし。  本当はダウンロードしてねぇんだろ?」


「したでござるよ!!  タップした瞬間に勝手にダウンロードされたでござるよ!!」



桜田がスマホの画面をブっとい指で何度も指すけど、無いモノは無い!



「んじゃ、サイト開いて見せてみろし。  俺の場合、ダウンロードしたらアイコンがグレーアウトしてたぞ」


「ああぁぁぁぁぁあああ!!  紅葉氏はホント疑り深いでござるなぁあ!  見せてやるでござるよ!」



桜田が俺に見える様に画面を操作して、ダウンロードフォルダからサイトを映すブラウザアプリへと画面を変える。



「ふぁあっ!?  グレーアウトしてるでござる!?  って言うか他のアイコンもグレーアウトしてるでござる!?  って言うか、何故かどこもタップできないでござる!!」


「……アレ?  俺がダウンロードした時と同じ症状だ……」



何かが気になり鞄からタブレットを取り出し、



「なあ。  俺のはこう言う感じのアイコンのヤツのPDFファイルがダウンロードされたんだけど──」



ダウンロードフォルダを開いてダウンロードされたPDFファイルのアイコンを桜田に見せる。



「……何も無いでござるが」


「いや、此処にあんだろ。  厨二的な如何にも魔導書っポイ、アホみたいなアイコンがあんだろ此処に」


「無いでござるよ……  紅葉氏、まさか僕にだけ変なモノをダウンロードさせて、騙して揶揄っているのではないでござるよな……」



桜田が懐疑的で胡乱な視線を向け、なんだか場の空気が少し重くなった。



「僕を騙して飲み物を奢らせ、終いには僕の秘密を握って、一生パシリにするつもりだった、とか……?」


「アホか!  人をなんだと思ってんだ!?  ってかお前の秘密とかマジで知りたくないし!!  マジで1ミリも興味無いし!  寧ろお前の痛々しい魔法少女願望を知ってしまって、コレからどうやってお前と距離を置こうか真剣に考えてるくらいだわ!」


「僕は馬鹿にされてもいいけど魔法少女を馬鹿にするなぁぁぁあああ!」


「ソコ!  正にソコっ!  お前マジでおかしいから!」


「この嘘吐きぃぃぃいいい!  魔法が使えるって信じてたのにぃぃぃいいい!!」


「嘘吐いてないしっ!!  ちゃんと使えてしまってるしっ!  コレ読んで使えたしっ!  ここに使い方書いてあるしっ!」



PDFアイコンをタップして、あの巫山戯た魔導書を画面に展開して桜田に見せる。


相変わらず馬鹿げているミミズみたいにクネった文字らしきモノと日本語の訳文が書かれている表紙。



「俺がダウンロードしたのはコレ!  コレ見て信じろ!」



そしてドヤ顔の俺。


しかし、俺が翳したタブレットを見て桜田の表情が凍りつく。



「………………」


「どよ!  今すぐ俺に謝れ!」


「……紅葉氏──」



しかし、段々と桜田の表情が怒りのものへと変わっていく。



「──真っ白な画面を見せて何をドヤ顔しているでござるかぁぁぁあああ!  淡い幻想を期待させたうえにブチ壊した紅葉氏が僕に謝るでござるよ!」



は?



俺がドヤ顔で翳したタブレットに桜田がガチオコプンプン丸。


桜田に翳したタブレットを急いで自分で見るが、タブレットの画面にはちゃんと魔導書の表紙がある。



「いや……  ここにちゃんと……」


「何も無いでござるよ!  綺麗に真っ白でござるよ!  時計とバッテリー残量とアンテナのアイコンしか無いでござるよ」


「は?」



一体どう言う事だ……



「マジでコレが見えないのか?」


「見えないも何も、真っ白けっけでござるよ!  馬鹿にするなでござる!」


「いや、馬鹿にしては……  なんで、だ……?」



これまでの不可解なやり取りが俺の頭の中でグルグルと渦巻く。



「………………」



そして一つの仮定が浮かんできた。



もしかして……



「オイ。  お前がダウンロードしたヤツを開いてみろよ」


「話を逸らすなでござる!」


「良いから今すぐ開けって!!」


「はひぃい!?」



思わず声に力が入り、怒鳴る様に声を上げてしまった。


俺の大声に吃驚した桜田は、ワチャワチャと慌てながらスマホを弄る。


そしてPDFを開いたのか、スマホの画面を俺に向ける。



「ひ、開いたでござる!」


「真っ白、じゃねぇか……」



しかしそこには唯々真っ白に塗り尽くされた画面があった。



「真っ白じゃないでござるよ!  画面いっぱいにデカデカと変な読めない文字っぽいのと一緒に【変身! マジカル 魔法少女!】って日本語で書いているでござるよ!」


「………………」



そうか……



「そう言う事か……」



謎は全て解けた!



「なに一人で納得しているでござるか!?  説明を求むでござる!」



桜田は全く納得がいっていないらしく、不細工な顔を顰めながら説明を求めてきた。



「俺の推測が正しければ、コレはダウンロードした本人にしか見えないっぽい」


「はぁア?」


「画面を横にスライドさせて読み進めて見ろ。  そこに何が書いてある?」


「ちょっ、ちょっと待つでござる」


「俺のコレには魔力の使い方が書いてあった。  多分だけど、表題から察するに、お前のモノには魔法の使い方が書いてある筈だ」


「………………」



画面をスライドさせて内容を読み進めているのか、スマホの画面を見つめる桜田の視線が左右上下に行ったり来たりと動いたり、指を動かしてページを捲ったりしている。


明らかにナニかを読み進めている挙動だ。


真っ白な画面を見てここまでリアルに読むフリが出来る程、桜田と言う男は器用じゃない。



「なんて書いてあるんだ?」




………………




僅かな沈黙の後、桜田の顔が引き攣る。



「オイ。  どうした?  魔法の使い方が書いてあるのか?」



実際に魔導書を読んで魔力操作ができた俺は、桜田がダウンロードした別の魔導書に期待半分、羨ましさ半分で興味アリアリに尋ねる。



「……いや、それがでござるな──」


「流石に魔法の使い方は難しそうな感じなのか?  なんて書いてあるか早く言えって」



他人がダウンロードした魔導書が読めないと言うもどかしさからか、少し感情が昂ってしまう。



「──なんて言うか……  変な意味が分からない質問が書いてあるでござる……」


「はぁア?」



お読みいただきありがとうございます。


モチベになるので、☆とか、ブクマとかお願いします。

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