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エピローグ

「夏沢さん!!久しぶり!!卒業、おめでとう」

「ひさしぶり、卒業おめでとう」

 私が卒業式に出なかったので、二人であいさつ代わりに卒業を祝う。

 暫く世間話にはなを咲かせて、そのうちどちらともなく無言になった。

 カフェで向かい合い、見つめあう。

「ーーーー峯岸君、この間、助けてくれて本当にありがとう」

「うん、助けられて良かった。…………それで、あの、夏沢さん、その……」

「峯岸君、ごめんなさい、今は付き合うことができません」

 頭を下げた私を彼は静かに見つめてきた。

「……理由を聞いてもいい?」

「うん。今回の事、いろいろな原因があったけど、その中の一つはお母さんが自立できなかったからだと思うんだ。……私はさ、まだまだ世間知らずなところとか、お母さんにすごく似てるとおもう」

「そっか」

「うん、だから、卑怯だと思うんだけどある程度自立できるまでは誰とも付き合えないって思ったの。 ……怖いんだ。お母さんみたいになるのが」

「……分かった。ひとつだけ、聞かせて。付き合えないのは分かったけど、夏沢さん……綾香、俺の事好き?」

 いきなりの名前呼びはずるいと自分のことは棚上げして思う。

「ーー好きだよ」

「……そっか、それがわかれば十分、で、これから綾香はどうするつもりなの?」

 しれっと名前で呼ばれている、とは思ったが、今回迷惑をかけすぎた私は彼を強く問い詰められない。

「こないだ、教えてもらった寮付きの職場に実は採用されたか、そこで働くつもり!!」

 ありがたいことに、彼が伝手で寮付きの仕事を紹介してくれたのだ。いつまでも楓子の家にお世話になるわけにもいかないしほんと良かった。

 そう報告する私を見て、彼はニヤリと笑った。

 ーー嫌な予感。

「それは良かった!! ……実はそこ、俺の職場。これから同僚だな。よろしく」

 確信犯な彼に怒るが、どこ吹く風でニヤニヤしている。

 してやられたとは思ったが、採用の条件がいいので今更変えるとかは考えられなかった。


 その日の帰り道、まだニヤニヤしている峯岸君の肩を叩く。

「っと、ごめんごめんて。でも、また一緒でうれしいよ。またよろしくな」

 そういう彼をじっと見て近づく。

 きょとんとする彼のシャツの合わせをグイッっと引いて、口づけた。

 ちゅ。

 呆然とこちらを見ている彼にしてやったりと笑う。

「またね、四月からよろしくね!!」

  まだ立ちすくんでいる彼を置いて私は楓子の家へ向かう


「幸大、半年以内に自立して、今度は私から伝えるから、待ってて……」

 私はそう呟いて今は真っ赤な空を見上げたのだった。


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